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EP:30 偽りの恋愛事情
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「ボクー違うお湯に入って来るよー? アズミは、まだここにいるー?」
「うん。もう少しここにいるよ」
「分かったー」
そう二人は二手に分かれた。
ここは外の露天風呂で、大きな岩越しに。
三つに仕切られている。
じゃぶ。
じゃぶぶ。
「本当にーこんな気持ちいいの初めてだよー」
そう嬉しそうに出ていく、ゲイリーを見送りながら安住は、目の前の光景に見惚けていた。
「うん。本当にいい湯だ」
誰に、言うでもなく。
ぽつりと安住が漏らした言葉に。
「僕も。この銭湯は気にいっているよ。アズミ」
ようやく離れた好機を、あの三人見過ごす訳もなくフロイが、安住に声をかけた。
かけられた安住はというと。
「!? っつ‼」
身体を硬直させ、顔を真っ青にさせてしまっていた。
「ぁ、ぅうう??」
息を詰まらせ、中々と言葉を出すことも出来ずにいる。
ここで。
フロイにも異変が起きた。
(あれ? 可笑しいな?)
ふと、自身の股間に巻いたタオルを見た。
素顔で会えば、もっとたぎると思っていたにも関わらずに。
股間が。
目の前の安住に反応しない。
あとはと言えば。
目の前の安住に、違和感があった。
何かとは分からないものの。
(なんでだ? 彼は僕の恋人なのに、あの熱が全くだ)
ちゃぷん。
「警戒しなくてもいいよ。僕も囚人なんだから」
なんとか、平静さを押し隠しながら。
安住へと向かう。
「! そうだね」
ぎこちない笑顔を向ける安住にロイは。
「君は」
躊躇しながら、訊ねた。
「ピザ屋で働いたことはあるかい?」
お湯の熱も手伝ってか胸が高鳴った。
「ピザ屋? いや、おーー」
ばっしゃーーッ!
勢いよく安住が立ち上がった。
「お前、和泉に会ったことあるのか!?」
突然の行為に、思わずフロイも、
「いきなりなんだ。いいから座れ」
指で指示した。
「あ。悪ィ…で、俺と同じ顔を見たのか?」
「同じ、顔? どういう、意味だ?」
「和泉は…俺の一卵性双生児の、弟なんだよ」
ひく。
その言葉に。
フロイの口元が震えた。
ようやく、合点がいった。
何故、自身が反応しないのか。
違和感が拭えないのか、と。
(全くの、別人!)
「で。あのさ、その…和泉の奴と仲、よかったのか?」
「ああ」
「その顔だと。あいつ、安住って名乗っていたみたいだね」
「ああ」
フロイは両手でお湯をすくうと、顔にかけた。
目を瞑ると。
瞼の裏にーー彼が笑う。
(嘘だったのか。何もかも、が)
ギリ!
フロイは歯を噛み締めた。
その様子に安住は気づかないまま。
「そっか」
ふわりと、微笑んだ。
そんな安住の。
彼の笑顔が目に映った瞬間。
ぶわ。
「!?」
ぶわ、ぶわわ!
「‼」
股間の、茎が勃った。
(失恋をしたというのに! 節操がない!)
その反応に、フロイが舌打ちをした。
(私が好きなのはアズーーイズミなのに! なのに…ッ!)
「? どうかしたのか? なぁ、あの、その…」
口をへの字にさせながら。
上目遣いにフロイを伺い視る安住。
「和泉の話し聞かせてくれないか?」
「! ああ」
一つ返事で頷くと、
「ありがとう!」
満面の笑顔をフロイに向けた。
バク。
バクバクバク――……。
(本当に。全く、イズミに似ていない…のに、どうして??)
「うん。もう少しここにいるよ」
「分かったー」
そう二人は二手に分かれた。
ここは外の露天風呂で、大きな岩越しに。
三つに仕切られている。
じゃぶ。
じゃぶぶ。
「本当にーこんな気持ちいいの初めてだよー」
そう嬉しそうに出ていく、ゲイリーを見送りながら安住は、目の前の光景に見惚けていた。
「うん。本当にいい湯だ」
誰に、言うでもなく。
ぽつりと安住が漏らした言葉に。
「僕も。この銭湯は気にいっているよ。アズミ」
ようやく離れた好機を、あの三人見過ごす訳もなくフロイが、安住に声をかけた。
かけられた安住はというと。
「!? っつ‼」
身体を硬直させ、顔を真っ青にさせてしまっていた。
「ぁ、ぅうう??」
息を詰まらせ、中々と言葉を出すことも出来ずにいる。
ここで。
フロイにも異変が起きた。
(あれ? 可笑しいな?)
ふと、自身の股間に巻いたタオルを見た。
素顔で会えば、もっとたぎると思っていたにも関わらずに。
股間が。
目の前の安住に反応しない。
あとはと言えば。
目の前の安住に、違和感があった。
何かとは分からないものの。
(なんでだ? 彼は僕の恋人なのに、あの熱が全くだ)
ちゃぷん。
「警戒しなくてもいいよ。僕も囚人なんだから」
なんとか、平静さを押し隠しながら。
安住へと向かう。
「! そうだね」
ぎこちない笑顔を向ける安住にロイは。
「君は」
躊躇しながら、訊ねた。
「ピザ屋で働いたことはあるかい?」
お湯の熱も手伝ってか胸が高鳴った。
「ピザ屋? いや、おーー」
ばっしゃーーッ!
勢いよく安住が立ち上がった。
「お前、和泉に会ったことあるのか!?」
突然の行為に、思わずフロイも、
「いきなりなんだ。いいから座れ」
指で指示した。
「あ。悪ィ…で、俺と同じ顔を見たのか?」
「同じ、顔? どういう、意味だ?」
「和泉は…俺の一卵性双生児の、弟なんだよ」
ひく。
その言葉に。
フロイの口元が震えた。
ようやく、合点がいった。
何故、自身が反応しないのか。
違和感が拭えないのか、と。
(全くの、別人!)
「で。あのさ、その…和泉の奴と仲、よかったのか?」
「ああ」
「その顔だと。あいつ、安住って名乗っていたみたいだね」
「ああ」
フロイは両手でお湯をすくうと、顔にかけた。
目を瞑ると。
瞼の裏にーー彼が笑う。
(嘘だったのか。何もかも、が)
ギリ!
フロイは歯を噛み締めた。
その様子に安住は気づかないまま。
「そっか」
ふわりと、微笑んだ。
そんな安住の。
彼の笑顔が目に映った瞬間。
ぶわ。
「!?」
ぶわ、ぶわわ!
「‼」
股間の、茎が勃った。
(失恋をしたというのに! 節操がない!)
その反応に、フロイが舌打ちをした。
(私が好きなのはアズーーイズミなのに! なのに…ッ!)
「? どうかしたのか? なぁ、あの、その…」
口をへの字にさせながら。
上目遣いにフロイを伺い視る安住。
「和泉の話し聞かせてくれないか?」
「! ああ」
一つ返事で頷くと、
「ありがとう!」
満面の笑顔をフロイに向けた。
バク。
バクバクバク――……。
(本当に。全く、イズミに似ていない…のに、どうして??)
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