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第96話 買収
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「最後の情報は……30年前のコーガス侯爵家没落についてだ」
「侯爵家の没落について……」
30年前、コーガス侯爵家は罠に嵌められ没落している。
その件には高位貴族達が関わっていた様だが、まさかテライル・ジャッカーからその話が出るとは夢にも思わなかった。
今でこそうちの従家として貴族扱いではあるが、それ以前は只の商人だったからな。
まさかテライルがその情報を握っているとはな……
コイツも関わっていた?
いや、流石にそれはないか。
もしそうなら、情報として提供する様な真似はしないだろう。
罪状が重くなるのは目に見えているからな。
「その様子だと、侯爵家の没落が仕掛けられたものだと言う事は知っている様だな」
「ええ、まあ最近得た情報ですが……」
「コーダン伯爵から……と考えるのは穿った見方かな?」
少し前のコーダン伯爵の急死。
前侯爵夫妻の件で俺がテライルに辿り着いた事から、それを推測したのだろう。
鋭い男である。
「まあ否定はしませんよ」
俺が始末したのはトップシークレットだ。
が、これから死に行く人間にまで隠す必要はない。
「で、貴方が知っている没落に関する情報とは何です」
「30年前のコーガス侯爵家の没落。あれにはアブリス侯爵家が関わっている」
「アブリス侯爵家が……」
この国には侯爵家が4つあり、アブリス侯爵家はその一つだ。
侯爵家を罠に嵌めるのなら同じ侯爵家クラスとは考えていたので、当然三つとも疑っていた訳だが、その根拠となる物はまだ見つかっていない。
古く、しかも高位の貴族が関わっている事であるため、調査が困難な物となっていたためだ。
なのでその情報が、それも信頼度の高い情報が入るというのなら、こちらとしては大歓迎ではある。
「その情報は確かなのですか?」
「無論だ。一族の運命が関わっているのだ。嘘は吐かんよ」
『事実だ』
エーツーに視線をやると、嘘は吐いていないと答えてくれる。
少なくとも、テライルに嘘の意識はないと言う事だな。
但し、彼が掴んでいる情報がガセでないという保証はないが。
そこまで疑うのも、彼が所詮商人だからである。
大貴族の秘密を、商人如きがそう簡単につかめるとは思えないからな。
「30年前……私はアブリス侯爵家に取り入ろうとしていた」
「徐爵を受ける為ですか?」
「ああ、そうだ。当時、あの侯爵家には徐爵権の余りがあったのでな。それを得る為、私はあそこには多くの貢物を送っていた。ま、中々上手くいかなかったがね」
当然だ。
相手は最高位の侯爵家である。
早々簡単に行く訳もない。
「それでも何とかしようと、まずは足元――執事や家令達にも色々とばら撒いたのだ」
「買収ですか?しかも侯爵家の人間の」
「まさか。そんな大げさな物ではない。少しでも情報を得られれば儲け物と思ってやった事にすぎんよ」
まあ侯爵家の人間がそう簡単に靡く訳もないからな。
駄目元でやっていた訳だ。
だが――
「情報があると言う事は……その成果があったと言う訳ですね」
「まあそう言う事になる」
あっさり買収されてしまう様な者を雇っているとはな。
侯爵家の名が泣くという物。
まあ当時のコーガス侯爵家も当主がぼんくらだった事を考えると、あまり人の事は言えないのかもしれないが……
「侯爵家の没落について……」
30年前、コーガス侯爵家は罠に嵌められ没落している。
その件には高位貴族達が関わっていた様だが、まさかテライル・ジャッカーからその話が出るとは夢にも思わなかった。
今でこそうちの従家として貴族扱いではあるが、それ以前は只の商人だったからな。
まさかテライルがその情報を握っているとはな……
コイツも関わっていた?
いや、流石にそれはないか。
もしそうなら、情報として提供する様な真似はしないだろう。
罪状が重くなるのは目に見えているからな。
「その様子だと、侯爵家の没落が仕掛けられたものだと言う事は知っている様だな」
「ええ、まあ最近得た情報ですが……」
「コーダン伯爵から……と考えるのは穿った見方かな?」
少し前のコーダン伯爵の急死。
前侯爵夫妻の件で俺がテライルに辿り着いた事から、それを推測したのだろう。
鋭い男である。
「まあ否定はしませんよ」
俺が始末したのはトップシークレットだ。
が、これから死に行く人間にまで隠す必要はない。
「で、貴方が知っている没落に関する情報とは何です」
「30年前のコーガス侯爵家の没落。あれにはアブリス侯爵家が関わっている」
「アブリス侯爵家が……」
この国には侯爵家が4つあり、アブリス侯爵家はその一つだ。
侯爵家を罠に嵌めるのなら同じ侯爵家クラスとは考えていたので、当然三つとも疑っていた訳だが、その根拠となる物はまだ見つかっていない。
古く、しかも高位の貴族が関わっている事であるため、調査が困難な物となっていたためだ。
なのでその情報が、それも信頼度の高い情報が入るというのなら、こちらとしては大歓迎ではある。
「その情報は確かなのですか?」
「無論だ。一族の運命が関わっているのだ。嘘は吐かんよ」
『事実だ』
エーツーに視線をやると、嘘は吐いていないと答えてくれる。
少なくとも、テライルに嘘の意識はないと言う事だな。
但し、彼が掴んでいる情報がガセでないという保証はないが。
そこまで疑うのも、彼が所詮商人だからである。
大貴族の秘密を、商人如きがそう簡単につかめるとは思えないからな。
「30年前……私はアブリス侯爵家に取り入ろうとしていた」
「徐爵を受ける為ですか?」
「ああ、そうだ。当時、あの侯爵家には徐爵権の余りがあったのでな。それを得る為、私はあそこには多くの貢物を送っていた。ま、中々上手くいかなかったがね」
当然だ。
相手は最高位の侯爵家である。
早々簡単に行く訳もない。
「それでも何とかしようと、まずは足元――執事や家令達にも色々とばら撒いたのだ」
「買収ですか?しかも侯爵家の人間の」
「まさか。そんな大げさな物ではない。少しでも情報を得られれば儲け物と思ってやった事にすぎんよ」
まあ侯爵家の人間がそう簡単に靡く訳もないからな。
駄目元でやっていた訳だ。
だが――
「情報があると言う事は……その成果があったと言う訳ですね」
「まあそう言う事になる」
あっさり買収されてしまう様な者を雇っているとはな。
侯爵家の名が泣くという物。
まあ当時のコーガス侯爵家も当主がぼんくらだった事を考えると、あまり人の事は言えないのかもしれないが……
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