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第34話 ノック
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「ちょっとボッチー。漫画全部読んじゃった。新しいのちょーだい」
朝、クローゼットを叩く音で目を覚ます。
音の主は、中に結界で封じてあるリリスだ。
結界には完全な防音がかかっている筈なのだが、どういう訳だか奴はそれを突き破って音を出している。
時計をチラリとみると、起床予定より20分ほど早い時間だった。
俺は渋々ベッドから起き上がり、心の中で「ウッザ」と思いながらクローゼットを開くと――
糞女の上記の発言である。
「下らねー事で一々俺を起こすな。後、誰がボッチーだ。蹴り殺すぞ」
魔神リリスの学習能力は高い。
漫画の絵と文字の組み合わせから、日本語はもう完全にマスターしている様だった。
そして言語を理解できるようになった彼女は、日本の漫画に一瞬で嵌まってしまう。
「蹴り殺しても良いからー、新しいの……ちょーだい♡」
リリスは甘ったるい声を出し、媚る様な仕草をする。
取り敢えず、俺は奴の顔面に全力で蹴りを入れた。
ダメージがない事は分かってはいるが、イラっとしたから。
「ほーら、蹴り殺されたー。早く新しい漫画ちょうだーい」
「ねーよ。後で用意してやるから、それまでクローゼットの隅で三角座りでもしてろ」
リリスに渡した漫画は全て、俺の家にあった物だ。
追加で手に入れるには、元居た世界で手に入れる必要がある。
どうやって元の世界で手に入れるのか?
やり方は単純である。
世界に穴を開け――開けられるサイズは、人間の頭部サイズが限界なので俺は通れない――穴の向こう側に魔法で分身を生み出し、そしてそれを操り手に入れるのだ。
もちろん、その際物を盗んだりはしないぞ。
ちゃんと金を払って購入する。
俺には両親の遺してくれた遺産――家は結構金持ちだった――と、保険金も入って来ているからな。
漫画を狂った様に買いあさる位の金はある。
「ぇー、今すぐが良い」
「うっせぇ。我がまま言うなら死ね」
リリスの腹部に、手加減無しの蹴りを叩き込む。
彼女の腹部は粉々に吹っ飛ぶが、不死身なのでダメージは即座に回復してしまう。
厄介極まりない。
とは言え……まあこれはこれで悪くはないか。
殺しても死なないのは確かに面倒この上ないが、手加減無しで殴れるサンドバックがあるのは正直悪くなかった。
ちょっとしたストレス発散には持って来いだ。
――まあそのストレスの最大の発生源が、この女な訳ではあるが。
「もう、乱暴なんだから」
「兎に角、今すぐは無理だ。今晩には用意してやるから、大人しくしてろ」
例の落書きで脅すという手もあるが、それで大人しくなるのは所詮一時的な事だ。
延々脅しに屈する様なタイプには思えないし、罰を実行したらしたで、そのうち突破して来る事は目に見えていた。
何せ、最初の結界や今の結界の防音を突破してる訳だしな。
面倒臭いが、今日の授業が終わったら分身を使って漫画を用意するとしよう。
「ん?」
その時、俺の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
与えられている屋敷には、お手伝いさんが何人か付いている。
そのうちの誰かだろう。
「こんな朝早くからなんだ?」
リリスに大人しくしとけよと再度釘を刺し、クローゼットから出て部屋の扉を開ける。
ノックの主は、お手伝いのおばさんだった。
彼女は少しオドオドした様に――普段はそうでもない――俺にこう告げる。
ゲンブー家を名乗る客が来た、と。
朝、クローゼットを叩く音で目を覚ます。
音の主は、中に結界で封じてあるリリスだ。
結界には完全な防音がかかっている筈なのだが、どういう訳だか奴はそれを突き破って音を出している。
時計をチラリとみると、起床予定より20分ほど早い時間だった。
俺は渋々ベッドから起き上がり、心の中で「ウッザ」と思いながらクローゼットを開くと――
糞女の上記の発言である。
「下らねー事で一々俺を起こすな。後、誰がボッチーだ。蹴り殺すぞ」
魔神リリスの学習能力は高い。
漫画の絵と文字の組み合わせから、日本語はもう完全にマスターしている様だった。
そして言語を理解できるようになった彼女は、日本の漫画に一瞬で嵌まってしまう。
「蹴り殺しても良いからー、新しいの……ちょーだい♡」
リリスは甘ったるい声を出し、媚る様な仕草をする。
取り敢えず、俺は奴の顔面に全力で蹴りを入れた。
ダメージがない事は分かってはいるが、イラっとしたから。
「ほーら、蹴り殺されたー。早く新しい漫画ちょうだーい」
「ねーよ。後で用意してやるから、それまでクローゼットの隅で三角座りでもしてろ」
リリスに渡した漫画は全て、俺の家にあった物だ。
追加で手に入れるには、元居た世界で手に入れる必要がある。
どうやって元の世界で手に入れるのか?
やり方は単純である。
世界に穴を開け――開けられるサイズは、人間の頭部サイズが限界なので俺は通れない――穴の向こう側に魔法で分身を生み出し、そしてそれを操り手に入れるのだ。
もちろん、その際物を盗んだりはしないぞ。
ちゃんと金を払って購入する。
俺には両親の遺してくれた遺産――家は結構金持ちだった――と、保険金も入って来ているからな。
漫画を狂った様に買いあさる位の金はある。
「ぇー、今すぐが良い」
「うっせぇ。我がまま言うなら死ね」
リリスの腹部に、手加減無しの蹴りを叩き込む。
彼女の腹部は粉々に吹っ飛ぶが、不死身なのでダメージは即座に回復してしまう。
厄介極まりない。
とは言え……まあこれはこれで悪くはないか。
殺しても死なないのは確かに面倒この上ないが、手加減無しで殴れるサンドバックがあるのは正直悪くなかった。
ちょっとしたストレス発散には持って来いだ。
――まあそのストレスの最大の発生源が、この女な訳ではあるが。
「もう、乱暴なんだから」
「兎に角、今すぐは無理だ。今晩には用意してやるから、大人しくしてろ」
例の落書きで脅すという手もあるが、それで大人しくなるのは所詮一時的な事だ。
延々脅しに屈する様なタイプには思えないし、罰を実行したらしたで、そのうち突破して来る事は目に見えていた。
何せ、最初の結界や今の結界の防音を突破してる訳だしな。
面倒臭いが、今日の授業が終わったら分身を使って漫画を用意するとしよう。
「ん?」
その時、俺の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
与えられている屋敷には、お手伝いさんが何人か付いている。
そのうちの誰かだろう。
「こんな朝早くからなんだ?」
リリスに大人しくしとけよと再度釘を刺し、クローゼットから出て部屋の扉を開ける。
ノックの主は、お手伝いのおばさんだった。
彼女は少しオドオドした様に――普段はそうでもない――俺にこう告げる。
ゲンブー家を名乗る客が来た、と。
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