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第21話 待ち伏せ
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「闇の牙が?」
「ええ。カナン家襲撃の協力を、ガーグに依頼していたわ」
ガーグが言っていた届け物。
その詳細をローズに確認したのだが、その口から出た意外な名前に俺は驚かされる。
呪術の様な外法を扱っているとはいえ、まさか奴らがヴァンパイアと通じていたとは……
しかもカナン家を襲撃する予定だったらしい。
本当にしつこい奴らだ。
まあガーグが死んだ今、奴らにそれだけの戦力はないだろうから、もう屋敷が襲撃される心配はないとは思うが。
「その対価が、奴の言っていた12人の生贄って訳か……」
想定していた人数よりも少ない。
だがその全てが成人した処女の女性だというのなら、話は別だ。
ヴァンパイアにとって肉体が成熟しきった清らかな乙女の血は、何物にも代え難い御馳走だからな。
奴らが自分で適当に人間を襲って、それに当たる確率は低い。
だが人間社会に溶け込んでいる闇の牙なら、集めるのはそこまで難しくはないだろう。
場合によっては、ヴァンパイアへの依頼を想定して子供を攫い、それを自分達の元で洗脳して育てている可能性すらある。
「それで?どうするんだ?」
ガドンさんが聞いてくる。
まあ尋ねるというよりは、確認と言った方が正しいだろう。
「勿論、助けますよ」
ローズが言うには、今夜生贄の女性達が届けられる予定だったそうだ。
いつ来るか分からないとなると少々厳しかったが、もう数時間でやって来るなら迷う必要はない。
「ただ、ローズさんはお疲れでしょうから。マリーさんと二人で先に帰ってください」
ローズは長い期間、ガーグに支配されていた。
酷い目には合わされていないそうだが、きっと心労が溜まっている筈だ。
早く休息を取りたいだろうと思い、そう口にしたのだが――
「私の事ならご心配なく。捕らえらえた女性達の安全を確保するためにも、人手は必要なはずです。私達にもお手伝いさせてください」
「……分かりました。お願いします」
連れて来られる人間が、人質に利用される事は無い。
俺のスキルで封じるからだ。
そのため人手はそれ程必要としないのだが、まあそれを伝える訳にもいかないので承諾しておいた。
「ローズさん。闇の牙がやって来る方角は分かりますか?」
屋敷で待ち伏せるという選択肢はない。
森の中を徘徊しているワーウルフを全て始末してしまっているので、異変に気付かれる可能性が高いからだ。
そうなるとやってくる前に引き返されてしまう。
なので、可能ならば森の浅い位置で待ち伏せするのが理想だった。
「魔法を使い、以前来た者達の足跡は確認できます」
「同じルートを通る可能性は高い、か」
来る度に違う道を通るとは思えない。
そこを張るのが最も合理的だろう。
「恐らく。でも万一の事態も考えて、この森自体に簡易結界を張っておきましょう」
「エルフの魔法ですか?」
「はい。防御機能はありませんが、侵入者があれば直ぐに察知できます」
この森は結構広い。
防御機能が無いとはいえ、その全域をカバー出来るとなるとかなり強力な魔法と言える。
どうやらローズは、相当優秀な魔術師の様だ。
それに俺のスキルで止まったとはいえ、ガーグに向けた剣筋も中々のものだった。
もし妹であるマリーが人質に取られてさえいなかったなら、彼女達は最初の討伐でガーグを倒せていたのかもしれない。
「分かりました。お願いします」
ローズに結界を頼み、俺達は闇の牙の予想経路に潜んで夜になるのを待つ。
やがて太陽が沈み、森を月の光が包む頃奴らは姿を現わし。
大量の魔物を引き連れて。
「ええ。カナン家襲撃の協力を、ガーグに依頼していたわ」
ガーグが言っていた届け物。
その詳細をローズに確認したのだが、その口から出た意外な名前に俺は驚かされる。
呪術の様な外法を扱っているとはいえ、まさか奴らがヴァンパイアと通じていたとは……
しかもカナン家を襲撃する予定だったらしい。
本当にしつこい奴らだ。
まあガーグが死んだ今、奴らにそれだけの戦力はないだろうから、もう屋敷が襲撃される心配はないとは思うが。
「その対価が、奴の言っていた12人の生贄って訳か……」
想定していた人数よりも少ない。
だがその全てが成人した処女の女性だというのなら、話は別だ。
ヴァンパイアにとって肉体が成熟しきった清らかな乙女の血は、何物にも代え難い御馳走だからな。
奴らが自分で適当に人間を襲って、それに当たる確率は低い。
だが人間社会に溶け込んでいる闇の牙なら、集めるのはそこまで難しくはないだろう。
場合によっては、ヴァンパイアへの依頼を想定して子供を攫い、それを自分達の元で洗脳して育てている可能性すらある。
「それで?どうするんだ?」
ガドンさんが聞いてくる。
まあ尋ねるというよりは、確認と言った方が正しいだろう。
「勿論、助けますよ」
ローズが言うには、今夜生贄の女性達が届けられる予定だったそうだ。
いつ来るか分からないとなると少々厳しかったが、もう数時間でやって来るなら迷う必要はない。
「ただ、ローズさんはお疲れでしょうから。マリーさんと二人で先に帰ってください」
ローズは長い期間、ガーグに支配されていた。
酷い目には合わされていないそうだが、きっと心労が溜まっている筈だ。
早く休息を取りたいだろうと思い、そう口にしたのだが――
「私の事ならご心配なく。捕らえらえた女性達の安全を確保するためにも、人手は必要なはずです。私達にもお手伝いさせてください」
「……分かりました。お願いします」
連れて来られる人間が、人質に利用される事は無い。
俺のスキルで封じるからだ。
そのため人手はそれ程必要としないのだが、まあそれを伝える訳にもいかないので承諾しておいた。
「ローズさん。闇の牙がやって来る方角は分かりますか?」
屋敷で待ち伏せるという選択肢はない。
森の中を徘徊しているワーウルフを全て始末してしまっているので、異変に気付かれる可能性が高いからだ。
そうなるとやってくる前に引き返されてしまう。
なので、可能ならば森の浅い位置で待ち伏せするのが理想だった。
「魔法を使い、以前来た者達の足跡は確認できます」
「同じルートを通る可能性は高い、か」
来る度に違う道を通るとは思えない。
そこを張るのが最も合理的だろう。
「恐らく。でも万一の事態も考えて、この森自体に簡易結界を張っておきましょう」
「エルフの魔法ですか?」
「はい。防御機能はありませんが、侵入者があれば直ぐに察知できます」
この森は結構広い。
防御機能が無いとはいえ、その全域をカバー出来るとなるとかなり強力な魔法と言える。
どうやらローズは、相当優秀な魔術師の様だ。
それに俺のスキルで止まったとはいえ、ガーグに向けた剣筋も中々のものだった。
もし妹であるマリーが人質に取られてさえいなかったなら、彼女達は最初の討伐でガーグを倒せていたのかもしれない。
「分かりました。お願いします」
ローズに結界を頼み、俺達は闇の牙の予想経路に潜んで夜になるのを待つ。
やがて太陽が沈み、森を月の光が包む頃奴らは姿を現わし。
大量の魔物を引き連れて。
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