上 下
13 / 14

第13話 信仰

しおりを挟む
「ふーむ……」

帰れないとなると、俺は聖女としての役割を果たすしかないって事になる。

え?
なんでかって?

今現在、邪竜が精霊を封じ込めて、邪悪な魔物が活性化してるって状態だ。
どう考えても放っておいたらその内世界滅びるコースだろ。
それ。
これで特に悪い影響がありませんとかだったら逆に驚きだわ。

つまり、この世界で生きてくなら邪竜は退治しなきゃならないって事だ。
そしてそれが出来るのは俺だけ。
だったらやるしかないだろ?

「取り敢えず……俺は何をしたらいいんだ?」

聖女として邪竜に対抗する為に精霊を解放する。
そこまでは分かるが、具体的にどうすればいいのかまでは浮かんでこない。
情報が無さすぎるし、そもそも、何かをなす様な主体性を持つ人生を送った事のない引きこもりだからな。

「まずは信仰を集めるべきかと」

「信仰?」

信仰という言葉に俺は眉根を寄せる。

そんなもん集めてどうするんだ?
皆の心を一つに束ねて、邪竜に立ち向かえって事だろうか?

「信仰は聖女様のお力に直結致します。ですので、邪竜に対抗する為には人々からの信仰を集める必要があるのです」

信仰が力になるのか。
おしっこが信仰で盛大にパワーアップして、ビームみたいに攻撃できる様になったりしてな。

「むう……」

頭の中で、邪竜のどたまをおしっこビームがぶち抜くさまを想像し、ちょっと微妙な気分になる。

大一番のラスボス戦で、局部丸出しとか嫌すぎ。
更にラストアタックがおしっことか、格好悪いにも程がある。

「聖女様、如何なさいました?」

「ああ、いやなんでもない。気にしないでくれ」

「畏まりました」

「でもまあ……信仰を集めるってんなら、教会の力を借りるのが一番って事か」

信仰と言えば宗教だ。
エテネ教会はこの世界で最大の宗教らしいので――渡された本に書いてあることなので、盛られてる可能性もあるけど――そこの力を借りるのが、信仰集めには一番手っ取り早いだろと思われる。

「いえ、教会に所属したのでは信仰がぶれてしまいますので」

「信仰がぶれる?」

「そうですね。例えば、聖女様が困っている者をお救いになったとしましょう。その者は聖女様に深く感謝し、聖女様の事をその胸に刻み込む事でしょう。そしてそれが信仰となる訳ですが……教会所属の聖女としてその物を救っていた場合、その感謝の気持ちの向かう先が教会になってしまう可能性が高くなるのです」

「ああ……」

実行した人間より組織に信仰が向く。
宗教なら十分考えられる事だ。

「ですので聖女様は、新たに自ら教派を立ち上げるべきかと」

引きこもりの俺に宗教立ち上げろってか?
ハードルたけぇな、おい。

とは言え、出来なきゃ邪竜を倒せないだろうからやるしかない訳だが……

「あー、うんまあ頑張って見るよ」

「まずはあの少女が目覚め次第、自らが聖女である事を明かすのが宜しいかと。呪いを救ってくれた恩義を感じ、信徒一号になってくれる事でしょう」

ゴキミが寝てるティティを勧誘しろと言って来る。
まあ確かに、彼女を辛い環境に追いやっていた呪いを解いたので、彼女の言う通り勧誘はすんなりいくだろう。

けど……

「うーん……なんかそれだと、小さな子に恩を押し付けて宗教勧誘するみたいであんまり気が進まないんけど……」

別に救おうと思っておしっこかけた訳じゃないからな。
放っておけないからやった事に、結果的に下心的な物が付随してしまうのは、ピュアな引きこもりである俺には自分が汚れてしまった様に感じてしまう。

「そうですか。差し出がましい事を口にいたしました。確かに、聖女様が直接お伝えになっては恩着せがましくなってしまいますものね。私の方から彼女に伝えると致しましょう。お任せください」

「いや、そう言う意味じゃなくて……」

全然意味が伝わってねぇ。

「お任せください」

ゴキミが笑顔でもう一度任せろと言う。
どうやら伝わったうえで、俺の意思は無視されていた様だ。

ゴキミ恐るべし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

【R18】領民がありがたがる『聖水』の作り方

黒うさぎ
ファンタジー
傷口にかければたちまちそれを癒し、口に含めばあらゆる病を治す水、『聖水』。それはグリメンス領で『聖女』と呼ばれている一人の女、ミレーユによって作られている。しかし、聖堂の奥でミレーユがどのようなお務めを経て『聖水』を生み出しているのかを知るものはごくわずかだ。知らない方がいいのかもしれない。知ってしまえば、きっとミレーユを『聖女』として見ることができなくなってしまうから。

異世界転生しちゃったら☆みんなにイタズラされてしまいました!

TS少女 18歳
ファンタジー
わけもわからず、目覚めた場所は異世界でした。 この世界で、わたしは冒険者のひとりとして生きることになったようです。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】特殊スキルは聖水でした。

日向沖
ファンタジー
男主人公が「聖水」スキル持ちで…と言うお話です。 18禁になります。 アダルト描写が有る話には★マークを付けます。 直接ではなく、間接的に飲む描写などは☆をつけます、がばがばです。 飲尿描写はとても多いです、むしろメインです。 女の子が飲みます。 変態性の高い食尿描写は★★をつけます。 多少マンネリしてもご容赦下さい。 「大」の方は出てこないので、リトル変態はご安心ください。 ノクターンノベルにも掲載中です!

クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た

pelonsan
恋愛
 ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。  僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。  昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。  去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日…… ※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。

処理中です...