7 / 48
6――冒険者
しおりを挟む
「身分証明書をお願いします」
「はい」
俺は王宮から発行されている特殊な身分証を提示する。
王族時代は必要が無かったので持っていなかったが、王宮から追い出されるにあたり、手渡されていた。
それが示す身分は――当然只の市民だ。
「カオス・マックスさんで間違いないですか?」
受付の女性が身分証に記された名を確認してくる。
俺はもう王家の人間ではないので、シタイネンの性は名乗れない。
そこで折角なので、苗字を変える序でに名前も変えておいた。
カッコいいだろ?
「ええ」
「少々お借りしますね」
身分証は、魔法で情報が刻み込まれた名刺サイズの薄い金属版で出来ている。
受付の女性は、それをさっとスキャン用の魔法器具の上に翳した。
すると器具が身分証に記されている情報を読み取り、カウンターの奥にある特殊なモニターがその内容を映し出す。
受付嬢はその内容を確認して、俺に身分証を返した。
「では、登録いたしますのでしばらくお待ちください」
ここは冒険者ギルド。
その受付だ。
俺は冒険者登録の為に此処へやって来ていた。
「よっこらせっと」
おっさん臭い掛け声とともに椅子に腰かけ、手持ち無沙汰な俺は何となく周囲を見渡す。
辺りには、ガラの悪そうな連中が散見される。
とてもではないが、この冒険者ギルドはお上品な場所とは言い難かった。
まあそれも仕方のない事だろう。
冒険者ギルドは何でも屋に近い業態だ。
畑仕事から護衛や討伐まで、多種多様の業務を幅広く請け負っている。
とは言え、メインとなっているのは魔物の討伐系だ。
この世界には魔物が大量に存在しており、国もその対応に当たってはいるのだが、如何せんその数が多すぎて対応しきれていない。
そういった部分を補うのが、冒険者ギルドの役割のメインとなっている。
そのため冒険者には、腕っぷしに自信のある――ガラの悪い連中が者が多いのだ。
今もちょっとキョロキョロしていたら、目の合ったモヒカンのマッチョに睨まれてしまった。
ぶっちゃけ、居心地は死ぬ程悪い。
何せこちらは元王族上がりのボンボン――前世も平凡なサラーリマン――なのだ。
こういうアウトローっぽい場所には当然慣れていない。
早く登録と初仕事を受けて、さっさとおさらばしたい所である。
「カオスさん、お待たせしました」
落ち着き無くソワソワしていると、程なく登録が終わり名を呼ばれる。
カウンターまで行くと、受付のお姉さんは笑顔で赤銅色のプレートを差し出してきた。
これは赤銅の冒険者証で、この色は駆け出しを示していた。
仕事には役職がある様に、冒険者という仕事にも役職代わりにランクという物が存在している。
下から赤銅・鉄・銀・鋼・金・白金・金剛石・魔法金属・幻想金属の9種類に区切られており、ランクは高ければ高い程仕事面で優遇され、ギルドからの信頼も厚くなっていく。
「ありがとうございます」
冒険者証を受け取ると、今ならガイダンスと試験を受けられると受付のお姉さんから勧められた。
ガイダンスは冒険者の仕事の受け方や礼儀などの細かい説明で、試験とは実力を示す事で赤銅を飛び越え、強さに見合ったランクが与えられる昇格試験の事だ。
通常、試験は事前に申し込む必要があるそうだが、初登録者だけは優先的にそれを受ける事が出来る様だった。
きっと実力のある者をカッパーの仕事で腐らせず、一早く活躍して欲しいという狙いからだと思われる。
「一応、試験だけ受けさせて貰えますか」
冒険者の知識に関しては、1夜漬け程度ではあるが事前に調べて来ている。
そのため、講習を受ける意味はあまりなかった。
だが昇格試験は受けておく。
そうでないと、暫く赤銅としてのしょぼい仕事しか受けれなくなってしまうからだ。
もちろん実力が伴わなければ試験を受ける意味はないのだが、王宮で教育を受けていた俺は、最低限の剣術や魔法を扱う事が出来た。
しかも強力な宝玉を取り込んでいるのだ。
正直、鉄位は楽勝じゃないかと踏んでいる。
上手くすれば銀スタートも有り得るぞ。
「分かりました。では奥の扉にどうぞ」
受付嬢はカウンターの横にある扉を指し示した。
俺はその指示に従い、扉の奥へと進む。
「はい」
俺は王宮から発行されている特殊な身分証を提示する。
王族時代は必要が無かったので持っていなかったが、王宮から追い出されるにあたり、手渡されていた。
それが示す身分は――当然只の市民だ。
「カオス・マックスさんで間違いないですか?」
受付の女性が身分証に記された名を確認してくる。
俺はもう王家の人間ではないので、シタイネンの性は名乗れない。
そこで折角なので、苗字を変える序でに名前も変えておいた。
カッコいいだろ?
「ええ」
「少々お借りしますね」
身分証は、魔法で情報が刻み込まれた名刺サイズの薄い金属版で出来ている。
受付の女性は、それをさっとスキャン用の魔法器具の上に翳した。
すると器具が身分証に記されている情報を読み取り、カウンターの奥にある特殊なモニターがその内容を映し出す。
受付嬢はその内容を確認して、俺に身分証を返した。
「では、登録いたしますのでしばらくお待ちください」
ここは冒険者ギルド。
その受付だ。
俺は冒険者登録の為に此処へやって来ていた。
「よっこらせっと」
おっさん臭い掛け声とともに椅子に腰かけ、手持ち無沙汰な俺は何となく周囲を見渡す。
辺りには、ガラの悪そうな連中が散見される。
とてもではないが、この冒険者ギルドはお上品な場所とは言い難かった。
まあそれも仕方のない事だろう。
冒険者ギルドは何でも屋に近い業態だ。
畑仕事から護衛や討伐まで、多種多様の業務を幅広く請け負っている。
とは言え、メインとなっているのは魔物の討伐系だ。
この世界には魔物が大量に存在しており、国もその対応に当たってはいるのだが、如何せんその数が多すぎて対応しきれていない。
そういった部分を補うのが、冒険者ギルドの役割のメインとなっている。
そのため冒険者には、腕っぷしに自信のある――ガラの悪い連中が者が多いのだ。
今もちょっとキョロキョロしていたら、目の合ったモヒカンのマッチョに睨まれてしまった。
ぶっちゃけ、居心地は死ぬ程悪い。
何せこちらは元王族上がりのボンボン――前世も平凡なサラーリマン――なのだ。
こういうアウトローっぽい場所には当然慣れていない。
早く登録と初仕事を受けて、さっさとおさらばしたい所である。
「カオスさん、お待たせしました」
落ち着き無くソワソワしていると、程なく登録が終わり名を呼ばれる。
カウンターまで行くと、受付のお姉さんは笑顔で赤銅色のプレートを差し出してきた。
これは赤銅の冒険者証で、この色は駆け出しを示していた。
仕事には役職がある様に、冒険者という仕事にも役職代わりにランクという物が存在している。
下から赤銅・鉄・銀・鋼・金・白金・金剛石・魔法金属・幻想金属の9種類に区切られており、ランクは高ければ高い程仕事面で優遇され、ギルドからの信頼も厚くなっていく。
「ありがとうございます」
冒険者証を受け取ると、今ならガイダンスと試験を受けられると受付のお姉さんから勧められた。
ガイダンスは冒険者の仕事の受け方や礼儀などの細かい説明で、試験とは実力を示す事で赤銅を飛び越え、強さに見合ったランクが与えられる昇格試験の事だ。
通常、試験は事前に申し込む必要があるそうだが、初登録者だけは優先的にそれを受ける事が出来る様だった。
きっと実力のある者をカッパーの仕事で腐らせず、一早く活躍して欲しいという狙いからだと思われる。
「一応、試験だけ受けさせて貰えますか」
冒険者の知識に関しては、1夜漬け程度ではあるが事前に調べて来ている。
そのため、講習を受ける意味はあまりなかった。
だが昇格試験は受けておく。
そうでないと、暫く赤銅としてのしょぼい仕事しか受けれなくなってしまうからだ。
もちろん実力が伴わなければ試験を受ける意味はないのだが、王宮で教育を受けていた俺は、最低限の剣術や魔法を扱う事が出来た。
しかも強力な宝玉を取り込んでいるのだ。
正直、鉄位は楽勝じゃないかと踏んでいる。
上手くすれば銀スタートも有り得るぞ。
「分かりました。では奥の扉にどうぞ」
受付嬢はカウンターの横にある扉を指し示した。
俺はその指示に従い、扉の奥へと進む。
0
お気に入りに追加
418
あなたにおすすめの小説
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。
和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」
同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。
幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。
外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。
しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。
人間、似た物同士が夫婦になるという。
その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。
ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。
そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。
一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。
他の投稿サイトにも掲載しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる