90 / 93
第90話 地雷
しおりを挟む
「く……貴様!」
山田太郎が収束された光を放つ。
分散させた光では効果がないと、先ほどの攻撃でそれを学習したのだろう。
対応が早い事は評価するが――
「無駄だ!」
山田の光線が胸元へと直撃する。
だが、俺はそれを無視して奴へと突っ込んだ。
――多少の痛みはあっても、不死身の相手に威力の大小など意味はないのだ。
「ひぃ!よ、よるな!!」
間合いを詰められ、追い詰められた山田が俺に背を向け逃げようとする。
絶望的状況なのは分かるが、敵に背を向けるのは流石に愚かすぎだろう。
俺は光炎の剣でその背中をバッサリと切り捨てる。
「が……あぁ……助けてくれ」
真っ二つにするつもりだったのに、山田を一撃で倒す事が出来なかった。
耐久力が高いタイプなのか。
それとも、背中を向けた相手に対して無意識にブレーキがかかったのか。
もしくはその両方か。
「も、もう手出ししたりしない……だから……だから命だけは……」
山田が無様に命乞いして来る。
悪人なら悪人らしく、最後まで悪態をついていて欲しい物だ。
やりにくくて仕方がない。
「た、頼む……」
涙を流して命乞いする姿に、気持ちがほんの僅かに揺らぐ。
力の差をきっちり見せつけてやったので、例え此処で見逃したとしても、もう俺を襲って来る心配は薄いだろう。
「私は……ただ……失った物を取りもどしたかっただけなんだ……それももう諦めるから……」
……元アイドルだった訳だし、その頃の姿に戻りたかったんだろうな。
レジェンドスキルのデメリットは人生を変える。
なのでその突破方法が、とんでもなく魅力的である事は疑い様がない。
エリスに至っては、ポンと100億出そうとしていたぐらいだしな。
もし俺が回帰前の死なないだけの身だったなら、こいつらの様にどんな手を使ってでもその情報を得ようとしていたはずだ。
家族を守る力を手に入れる為に。
だが――
「俺だけを狙って来てたなら、見逃してやったかもしれないが……」
俺は死ぬ事がない。
だから、情報目的の誘拐だけなら情状の余地はあっただろう。
しかしこいつは姫ギルドの主力まで壊滅させようとしていた。
自分の欲望の為なら、何でもやる正真正銘の屑だ。
流石にそんな相手にかける情けなど、持ち合わせてはいない。
「ま……待ってくれ!」
――俺は命乞いする山田に、剣を突き刺し無慈悲にトドメを刺す。
「がぅ……ば……ぁ……」
「さて……」
「ひぃぃ……」
「わぁあ!」
それまで俺の動きに呆然としていた周囲の奴らが、頭を潰されてパニックにでもなったのだろう。
蜘蛛の子を散らす様に、バラバラに逃げ出し始めた。
「やれやれ」
ここはSSランクダンジョンだ。
しかも、結構深い場所まで進んで来ている。
Sランク以下のプレイヤーが散り散りになって逃げても、その先に待つのは死のみ。
ここまで来る様なプレイヤーなら、それぐらい理解しているはず。
パニックってのは恐ろしいもんだな。
まあ追いかける必要すらないだろう。
単独でも逃げ延びる可能性のある、SSランクの陳って奴だけ始末すれば――
「——っ!?」
急に周囲で大爆発が起き、散らばって逃げだした奴らが吹き飛ぶ。
「なんだ!?」
『たーまやー!』
たまやじゃねぇよ。
てか、一体何が起きた?
爆発が続く中――
「地雷男参上!」
頭上から突然、おかっぱ頭のメガネ男――田吾作が降って来た。
「田吾さん!?何でここに!?」
「アイリスさんに蹴飛ばされて、むしゃくしゃしてサーチしたら顔《かんばせ》さんが一人休憩ポイントから離れている事に気付きまして……」
むしゃくしゃしてサーチとか、どんな理由だよ。
「で、こっそりつけて来た訳なんですが……そしたら物騒な話を耳にしましたので、隠れてこそこそ逃げ道を地雷で塞いでやった次第という訳です。顔さんなら、一人で無双できると思ってましたから」
田吾が眼鏡を指で得意げに上下に動かす。
以前のSSSランクという鑑定結果から、この状況を推測したのだろう。
「なるほど……」
何故こっそりつけて来たのかは置いといて、取り敢えず今の状況は理解できた。
まあアングラウスがその事に気づいていなかったとも思えないので、きっと害はないと放置したんだろう。
「顔さんは、逃げ出す者達など放置しても良いと考えたかもしれませんが……プレイヤーの中には、生存特化の能力を持つ者もいますから。こういう事は徹底しておきませんとな」
生存特化か……
最初に始末したミイラ男なんかが、その典型ではあるな。
カイザーギルドが自分達が返り討ちにあう可能性を考慮していたとは思えないが、万一のメッセンジャーとしてそういうプレイヤーを他にも引き連れて来ていないとは限らない。
自分の詰めの甘さを痛感させられる。
「そうですね。助かりました」
逃がしてもいい事などないだろうから、本当に助かった。
見た目や趣向はアレだが、頼れる人だ。
「礼にはおよびませんよ。愛するアリスを手にかけようとしていた極悪人共なので、きっちり処理したまでです」
うん、やっぱりこの人は変態だな。
「さて、残りは……」
SSランカーの陳だけだ。
奴だけは逃げ出そうとしなかった。
少数で逃げても、死ぬだけだと分かっているからだろう。
山田太郎が収束された光を放つ。
分散させた光では効果がないと、先ほどの攻撃でそれを学習したのだろう。
対応が早い事は評価するが――
「無駄だ!」
山田の光線が胸元へと直撃する。
だが、俺はそれを無視して奴へと突っ込んだ。
――多少の痛みはあっても、不死身の相手に威力の大小など意味はないのだ。
「ひぃ!よ、よるな!!」
間合いを詰められ、追い詰められた山田が俺に背を向け逃げようとする。
絶望的状況なのは分かるが、敵に背を向けるのは流石に愚かすぎだろう。
俺は光炎の剣でその背中をバッサリと切り捨てる。
「が……あぁ……助けてくれ」
真っ二つにするつもりだったのに、山田を一撃で倒す事が出来なかった。
耐久力が高いタイプなのか。
それとも、背中を向けた相手に対して無意識にブレーキがかかったのか。
もしくはその両方か。
「も、もう手出ししたりしない……だから……だから命だけは……」
山田が無様に命乞いして来る。
悪人なら悪人らしく、最後まで悪態をついていて欲しい物だ。
やりにくくて仕方がない。
「た、頼む……」
涙を流して命乞いする姿に、気持ちがほんの僅かに揺らぐ。
力の差をきっちり見せつけてやったので、例え此処で見逃したとしても、もう俺を襲って来る心配は薄いだろう。
「私は……ただ……失った物を取りもどしたかっただけなんだ……それももう諦めるから……」
……元アイドルだった訳だし、その頃の姿に戻りたかったんだろうな。
レジェンドスキルのデメリットは人生を変える。
なのでその突破方法が、とんでもなく魅力的である事は疑い様がない。
エリスに至っては、ポンと100億出そうとしていたぐらいだしな。
もし俺が回帰前の死なないだけの身だったなら、こいつらの様にどんな手を使ってでもその情報を得ようとしていたはずだ。
家族を守る力を手に入れる為に。
だが――
「俺だけを狙って来てたなら、見逃してやったかもしれないが……」
俺は死ぬ事がない。
だから、情報目的の誘拐だけなら情状の余地はあっただろう。
しかしこいつは姫ギルドの主力まで壊滅させようとしていた。
自分の欲望の為なら、何でもやる正真正銘の屑だ。
流石にそんな相手にかける情けなど、持ち合わせてはいない。
「ま……待ってくれ!」
――俺は命乞いする山田に、剣を突き刺し無慈悲にトドメを刺す。
「がぅ……ば……ぁ……」
「さて……」
「ひぃぃ……」
「わぁあ!」
それまで俺の動きに呆然としていた周囲の奴らが、頭を潰されてパニックにでもなったのだろう。
蜘蛛の子を散らす様に、バラバラに逃げ出し始めた。
「やれやれ」
ここはSSランクダンジョンだ。
しかも、結構深い場所まで進んで来ている。
Sランク以下のプレイヤーが散り散りになって逃げても、その先に待つのは死のみ。
ここまで来る様なプレイヤーなら、それぐらい理解しているはず。
パニックってのは恐ろしいもんだな。
まあ追いかける必要すらないだろう。
単独でも逃げ延びる可能性のある、SSランクの陳って奴だけ始末すれば――
「——っ!?」
急に周囲で大爆発が起き、散らばって逃げだした奴らが吹き飛ぶ。
「なんだ!?」
『たーまやー!』
たまやじゃねぇよ。
てか、一体何が起きた?
爆発が続く中――
「地雷男参上!」
頭上から突然、おかっぱ頭のメガネ男――田吾作が降って来た。
「田吾さん!?何でここに!?」
「アイリスさんに蹴飛ばされて、むしゃくしゃしてサーチしたら顔《かんばせ》さんが一人休憩ポイントから離れている事に気付きまして……」
むしゃくしゃしてサーチとか、どんな理由だよ。
「で、こっそりつけて来た訳なんですが……そしたら物騒な話を耳にしましたので、隠れてこそこそ逃げ道を地雷で塞いでやった次第という訳です。顔さんなら、一人で無双できると思ってましたから」
田吾が眼鏡を指で得意げに上下に動かす。
以前のSSSランクという鑑定結果から、この状況を推測したのだろう。
「なるほど……」
何故こっそりつけて来たのかは置いといて、取り敢えず今の状況は理解できた。
まあアングラウスがその事に気づいていなかったとも思えないので、きっと害はないと放置したんだろう。
「顔さんは、逃げ出す者達など放置しても良いと考えたかもしれませんが……プレイヤーの中には、生存特化の能力を持つ者もいますから。こういう事は徹底しておきませんとな」
生存特化か……
最初に始末したミイラ男なんかが、その典型ではあるな。
カイザーギルドが自分達が返り討ちにあう可能性を考慮していたとは思えないが、万一のメッセンジャーとしてそういうプレイヤーを他にも引き連れて来ていないとは限らない。
自分の詰めの甘さを痛感させられる。
「そうですね。助かりました」
逃がしてもいい事などないだろうから、本当に助かった。
見た目や趣向はアレだが、頼れる人だ。
「礼にはおよびませんよ。愛するアリスを手にかけようとしていた極悪人共なので、きっちり処理したまでです」
うん、やっぱりこの人は変態だな。
「さて、残りは……」
SSランカーの陳だけだ。
奴だけは逃げ出そうとしなかった。
少数で逃げても、死ぬだけだと分かっているからだろう。
75
お気に入りに追加
281
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる