上 下
85 / 93

第85話 追跡者

しおりを挟む
「よし、休憩だ!」

ダンジョンに入って既に一週間経つ。
奥に進むごとに敵のレベルが上がってくるが、今の所、姫ギルドの攻略は危なげなく順調に進んでいる。

「んまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんまんま」

休憩に入ると同時にマヨネーズを要求するぴよ丸に餌をやっていると、ギルドの女性陣——岡町こみ――がやって来る。

「可愛いわねぇ」

「本当ですねぇ」

女性は丸い物が好き。
その言葉を体現するかの様に、ぴよ丸の女性陣への受けはいい。
寄って来た女性陣は黄色い声を上げてぴよ丸をつついたり撫でまわす。

「げふぅっ」

「ああん、残念。食べ終わっちゃったぁ」

因みに、ぴよ丸を撫でまわす事が出来るのマヨネーズに夢中な食事中だけだ。
それ以外で触ろうとすると、罵詈雑言で相手を威嚇しだすから。

「ウザい。散れい小娘共!ワシに触れようなど100万年早いんじゃ!」

まあ最初はそうでも無かったんだが、女性陣がしつこく撫でまわしてブチ切れて以来そうなっている。

「悠よ」

女性陣が散った所で、アングラウスが声をかけて来る。

「全く気付いていないとは思うが……ずっとつけられておるぞ」

「ん?ずっとつけられてる?」

ひょっとして悪戯か何かで背中に張り紙でもされたのかと思い、一瞬手を伸ばそうかとしたがすぐにその手を止める。

そんな訳ないよな。
子供じゃあるまいし、こんな場所でそんな悪戯をして来るアホがいる訳ない。

「どういう意味だ?」

「何者かが我らの後を尾行して来ていると言っているのだ」

「尾行?SSランクダンジョンを進んでるのにか?」

この状況で誰かに尾行されるとか、普通に考えればあり得ない事だ。
しかしアングラウスが下らない嘘を吐くとも思えない。

「けど、田吾さんが定期的に周囲をサーチしているだろ。そんな相手がいるなら直ぐに気づきそうなもんだけど」

「あの眼鏡のスキルを騙す事ぐらい容易い事だ。強力な魔法か、隠密用のレジェンドスキルでも使えれば……な。まあ今回は魔法ではなくスキルの様だが」

「レジェンドスキル……」

レジェンドスキルを持ち、SSランクダンジョンで当たり前の様に追跡して来る様な相手。
ぱっと俺の頭に思い浮かんだのは異世界からの侵略者だ。
以前戦った百々目鬼レベルの相手なら、レジェンドスキルを持っていてもおかしくはない。

「ああ、言っておくが侵略者共ではないぞ。追跡者はこの世界の人間だ」

俺の考えを読んでか、アングラウスが違うと言って来る。

「人間か……」

一体誰が追って来ているのか?

こんな場所で追跡して来る以上、此方に好意があるとは到底思えない。
となると、敵対している相手な訳だが……

カイザーギルドか?

パッと思い浮かぶのがそこだ。
というか、そもそも俺はアソコとしか揉めてない。

百々目鬼の事を知らないから、俺がメンバーを始末したとお冠だろうし……その可能性は高そうだ。

まあ姫ギルドを敵視している奴の線も捨てきれないが。
何せ大手だし。

アイギス達を見る限り、人に恨みを買う様な事はしてなさそうに思える。
だが恨みつらみなんて物は、ちょっとした事で買ってしまう物だ。
何もしてなくとも、妬みが原因で揉めるなんてよくある話だしな。

「追跡者の数は20人程だ。SSランクレベルが4人にSランクが2人。残りはAランクだな」

「SSランクが4人!?」

「あくまでも、我のおおよその見立てだがな」

アングラウスの見立てが外れているって事は無いだろう。
つまり、追跡者の中にSSランクが4人もいるって事だ。

「……」

日本最大手と言われる大和ギルドでさえ、SSランクに分類されるプレイヤーは3人しかいない。

……相手は海外の大手ギルドの可能性が出て来るな。

そしてそんな所が態々日本までやってきて此方を追跡して来たとなると、考えられる可能性は――

「そうなると……レジェンドスキルの、デメリット突破方法を手に入れる為に俺を追ってるって考えるのが無難か」

「可能性はあるだろうな」

そんな物はないってのに。
果てしなく迷惑な話である。

「どうする?このまま放っておけば、必ずどこかで仕掛けて来るぞ」

アングラウスが俺に聞いて来る。
ぶっちゃけ、彼女がいる以上、どの状況で誰に仕掛けられようとも全く問題ない。

が、ケチはつくだろう。

姫ギルドは今、一丸となってSSランクダンジョンクリアに向かっているのだ。
俺のせいで余計な戦闘が発生して、気勢が削がれでもしたら申し訳ない。

「こっちから仕掛けよう」

「ならば姫ギルドの面子が気づかない様、幻影と心理的な結界を張っておいてやろう」

「ああ頼む。ぴよ丸、行くぞ」

「ラジャ!アルティメットフュージョン!」

俺はアングラウスの案内で、後方にいる追跡者の元へと向かう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!

のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、 ハサンと名を変えて異世界で 聖騎士として生きることを決める。 ここでの世界では 感謝の力が有効と知る。 魔王スマターを倒せ! 不動明王へと化身せよ! 聖騎士ハサン伝説の伝承! 略称は「しなおじ」! 年内書籍化予定!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

処理中です...