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第49話 がーん!
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「ほわぁ!?」
結界について尋ねてきた少女――多分、世界ランク5位のエリス・サザーランドだ。
ネットで顔を見た覚えがある。
とにかく、そのエリスがアングラウスを見て声をあげ、その場で尻もちをついた。
「エリスちゃん!?どうしたっすか!?」
一緒にいた糸目の女性が、慌てて彼女の肩に手をかけて声をかける。
この人、あんな細目でちゃんと見えてるんだろうか?
そんな事を考えつつ、俺は足元にいるアングラウスを見た。
「お前、何かしたのか?」
「なにもしておらんよ。目の辺りに魔力が籠っていたから、恐らく魔眼辺りで我を見定めようとでもしたのだろう」
アングラウスを鑑定して、そのとんでもない結果に腰を抜かしたって訳か。
「それってどこまでみられたんだ?」
驚いているって事は、レベルあたりは確認しているはずだ。
名前だけ見てこの反応はないだろう。
まあ名前やレベルあたりの、表面上の情報を見られるぐらいなら問題ない。
いや、アングラウスの場合はレベルもとんでもない事になってるから、実際はそれ程良くもないんだが。
だがまあそれ位なら、たぶん誤魔化せる。
気がする。
だがアングラウスがエターナルダンジョンのボスと言うのがバレるのは、流石にまずすぎる。
なにせこいつは外に出られる筈のない、しかもExtra指定されているエターナルダンジョンのボスな訳だからな。
もし周囲にその事が知れたらそれこそ大騒ぎだ。
なのでもしそこまで見られてしまっていたなら、何らかの方法での口封じが必要になって来る。
「さあな?我は魔法があまり得意ではないからな。相手の魔眼の能力を魔法で暴く様な真似は出来ん。まあ、その辺りは直接聞いてみればよかろう」
アングラウスって魔法が苦手だったのか。
分身つくったり、結界を張ったりしてるからてっきり得意なのかと。
……そういや、俺と戦った時は魔法一切使ってなかったな。
苦手だから戦闘では使ってなかったという訳か。
「私は大丈夫よ。その猫……一体何者なの?」
起き上ったエリス・サザーランドが、アングラウスが何者か聞いて来る。
何者かを尋ねたって事は、少なくともダンジョンボスである事はバレてないと思っていいだろう。
もしそれが見えていたなら、何故外にいるのか的な質問になっていた筈だ。
「我か?我は只の猫だ」
その問に、アングラウスはしれっと嘘を返した。
流石にそれは無理があると思うんだが?
「なるほど……答えられないって訳ね。まあいいわ。私の目的はその猫の正体を暴く事じゃないから、もうそこは詮索しないわ」
アングラウスについて、エリスは詮索しないと言う。
もし本当なら話が早くて助かる。
とんでもない化け物猫がいるなんて噂を広められても敵わんしな。
「私が知りたいのは、レジェンドスキルのデメリットの突破方法よ。貴方ご希望の100億も用意して来てるわ。だから私……に――」
エリスが途中で言葉を区切り、俺の顔をまじまじと見つめる。
なんだいったい?
「えーっと、出来れば間違いであって欲しいんだけど。貴方って、レベル1……よね?」
「ああ、俺はレベル1だ」
どうやらアングラウスの言っていた魔眼で、俺のレベルを見ていた様だ。
「レベル1って事は……それってひょっとして……もしかしてなんだけど……」
エリスが言葉を詰まらせる。
まるでその先を口にしたくないかの様に。
流石に此処まで来ると、彼女が俺に何を言おうとしているかは分かる。
「お察しの通りだ。俺はレジェンドスキルの突破方法なんて知らない。100億云々は、カイザーギルドが俺への嫌がらせの為に流布したデマだ」
「がーん!」
今にも両眼が飛び出しそうな程に見開かれた目と、大きく開いた口。
こんな漫画みたいな顔初めて見た。
美少女でもこんな奇怪な表情が出来るんだな。
あと、口で『がーん』とか言う奴も初めてだ。
まあそんな冗談みたいなリアクションを取ってしまう程、ショックだったという事なのだろう。
「そんな……そんな……私の……希望が……」
エリスが数歩、後ろによろめく。
そして膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んでしまう。
見ると、開きっぱなしのその目は完全に白目をむいていた。
どうやらショックのあまり気絶してしまった様だ。
「え、エリスちゃーん!しっかりするっす!!」
「面白い小娘だな」
「100億をガチで用意して来たみたいだからな。それだけ期待してたって事なんだろう」
噂に踊らされた少女。
ちょっと可哀想な気もするが、俺ではどうしてやる事も出来ない。
突破方法なんてガチで知らないしな。
『マスター!用事が済んだなら家に戻って追いマヨネーズじゃ』
……追加を寄越せって事か。
何が追いマヨネーズだ。
意味が全然違ってるぞ。
「おい悠。その小娘には少し話がある。家に連れて帰るから背負え」
「いやいや、そんな事したら俺が警察に連行されちまう」
気絶した小さな女の子を、成人した男性が背負って連れ帰るとか事案以外何物でもない。
どう見てもただのロリ誘拐だ。
「保護者なら、そこの糸目がいるから大丈夫だろう」
「えーっと、そうですね……休ませて貰えるんなら有難いっす。日本に来るのは初めてなんで、エリスちゃんを休ませてあげられる場所がどこにあるかとか分からないっすから」
日本に来るのが初めての割に、日本語は随分と流ちょうだな。
まあ少々謎の『っす』って訛りがあるけど。
「ああでも、エリスちゃんは私が背負いますんで」
「そうして貰えると助かるよ」
俺はエリスを背負った糸目女性を家へと案内する。
アングラウスは彼女といったい、何の話をするつもりなんだろうな?
結界について尋ねてきた少女――多分、世界ランク5位のエリス・サザーランドだ。
ネットで顔を見た覚えがある。
とにかく、そのエリスがアングラウスを見て声をあげ、その場で尻もちをついた。
「エリスちゃん!?どうしたっすか!?」
一緒にいた糸目の女性が、慌てて彼女の肩に手をかけて声をかける。
この人、あんな細目でちゃんと見えてるんだろうか?
そんな事を考えつつ、俺は足元にいるアングラウスを見た。
「お前、何かしたのか?」
「なにもしておらんよ。目の辺りに魔力が籠っていたから、恐らく魔眼辺りで我を見定めようとでもしたのだろう」
アングラウスを鑑定して、そのとんでもない結果に腰を抜かしたって訳か。
「それってどこまでみられたんだ?」
驚いているって事は、レベルあたりは確認しているはずだ。
名前だけ見てこの反応はないだろう。
まあ名前やレベルあたりの、表面上の情報を見られるぐらいなら問題ない。
いや、アングラウスの場合はレベルもとんでもない事になってるから、実際はそれ程良くもないんだが。
だがまあそれ位なら、たぶん誤魔化せる。
気がする。
だがアングラウスがエターナルダンジョンのボスと言うのがバレるのは、流石にまずすぎる。
なにせこいつは外に出られる筈のない、しかもExtra指定されているエターナルダンジョンのボスな訳だからな。
もし周囲にその事が知れたらそれこそ大騒ぎだ。
なのでもしそこまで見られてしまっていたなら、何らかの方法での口封じが必要になって来る。
「さあな?我は魔法があまり得意ではないからな。相手の魔眼の能力を魔法で暴く様な真似は出来ん。まあ、その辺りは直接聞いてみればよかろう」
アングラウスって魔法が苦手だったのか。
分身つくったり、結界を張ったりしてるからてっきり得意なのかと。
……そういや、俺と戦った時は魔法一切使ってなかったな。
苦手だから戦闘では使ってなかったという訳か。
「私は大丈夫よ。その猫……一体何者なの?」
起き上ったエリス・サザーランドが、アングラウスが何者か聞いて来る。
何者かを尋ねたって事は、少なくともダンジョンボスである事はバレてないと思っていいだろう。
もしそれが見えていたなら、何故外にいるのか的な質問になっていた筈だ。
「我か?我は只の猫だ」
その問に、アングラウスはしれっと嘘を返した。
流石にそれは無理があると思うんだが?
「なるほど……答えられないって訳ね。まあいいわ。私の目的はその猫の正体を暴く事じゃないから、もうそこは詮索しないわ」
アングラウスについて、エリスは詮索しないと言う。
もし本当なら話が早くて助かる。
とんでもない化け物猫がいるなんて噂を広められても敵わんしな。
「私が知りたいのは、レジェンドスキルのデメリットの突破方法よ。貴方ご希望の100億も用意して来てるわ。だから私……に――」
エリスが途中で言葉を区切り、俺の顔をまじまじと見つめる。
なんだいったい?
「えーっと、出来れば間違いであって欲しいんだけど。貴方って、レベル1……よね?」
「ああ、俺はレベル1だ」
どうやらアングラウスの言っていた魔眼で、俺のレベルを見ていた様だ。
「レベル1って事は……それってひょっとして……もしかしてなんだけど……」
エリスが言葉を詰まらせる。
まるでその先を口にしたくないかの様に。
流石に此処まで来ると、彼女が俺に何を言おうとしているかは分かる。
「お察しの通りだ。俺はレジェンドスキルの突破方法なんて知らない。100億云々は、カイザーギルドが俺への嫌がらせの為に流布したデマだ」
「がーん!」
今にも両眼が飛び出しそうな程に見開かれた目と、大きく開いた口。
こんな漫画みたいな顔初めて見た。
美少女でもこんな奇怪な表情が出来るんだな。
あと、口で『がーん』とか言う奴も初めてだ。
まあそんな冗談みたいなリアクションを取ってしまう程、ショックだったという事なのだろう。
「そんな……そんな……私の……希望が……」
エリスが数歩、後ろによろめく。
そして膝から崩れ落ち、その場に倒れ込んでしまう。
見ると、開きっぱなしのその目は完全に白目をむいていた。
どうやらショックのあまり気絶してしまった様だ。
「え、エリスちゃーん!しっかりするっす!!」
「面白い小娘だな」
「100億をガチで用意して来たみたいだからな。それだけ期待してたって事なんだろう」
噂に踊らされた少女。
ちょっと可哀想な気もするが、俺ではどうしてやる事も出来ない。
突破方法なんてガチで知らないしな。
『マスター!用事が済んだなら家に戻って追いマヨネーズじゃ』
……追加を寄越せって事か。
何が追いマヨネーズだ。
意味が全然違ってるぞ。
「おい悠。その小娘には少し話がある。家に連れて帰るから背負え」
「いやいや、そんな事したら俺が警察に連行されちまう」
気絶した小さな女の子を、成人した男性が背負って連れ帰るとか事案以外何物でもない。
どう見てもただのロリ誘拐だ。
「保護者なら、そこの糸目がいるから大丈夫だろう」
「えーっと、そうですね……休ませて貰えるんなら有難いっす。日本に来るのは初めてなんで、エリスちゃんを休ませてあげられる場所がどこにあるかとか分からないっすから」
日本に来るのが初めての割に、日本語は随分と流ちょうだな。
まあ少々謎の『っす』って訛りがあるけど。
「ああでも、エリスちゃんは私が背負いますんで」
「そうして貰えると助かるよ」
俺はエリスを背負った糸目女性を家へと案内する。
アングラウスは彼女といったい、何の話をするつもりなんだろうな?
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