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第23話 レアドロップ②
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「ちび姫!他の単独プレイヤーが来たから一緒させてやれ!」
幸保が大声で、提灯陸アンコウと戦ってるちび姫とやらに向かって叫んだ。
「なんでよ!こいつはあたしの獲物よ!」
少女は戦いながら一瞬振り返って此方を確認し、怒鳴り返して来る。
答えはノー。
まあそらそうだわな。
こういう場合、後から来たプレイヤーは諦めるかボスのリポップを待つのが常識である。
途中参加など普通ではありえない。
もちろん、助けを求める様な状況なら話は変わって来るが。
「ここまで来てボスと闘えなかったら可哀想じゃないの!共闘させてあげなさいな!」
岡町の言葉に、敵の攻撃をかわすために忙しく動き回っていた少女の動きが一瞬止まる。
どうやら可哀想とか言う、彼の冗談みたいな言葉に反応した様だ。
「あー、もう!しょうがないわね!でも邪魔だったら蹴っ飛ばすからね!」
まさかのオーケー。
口調は荒いが、ちび姫って子は結構お人好しの様だ。
もし俺が彼女の立場だったなら、考慮にも値しないと完全にスルーしていた事だろう。
どう考えてもその程度で可哀想とはならんからな。
「さ、よろしくお願いね」
「わかりました」
岡町がウィンクを飛ばして来た。
俺はそれを本能的に躱し、提灯陸アンコウの元へと向かう。
「バンバン殺されるのもアレだし、一応エクストリームバースト使っとくか」
命三つの状態じゃ、他の攻撃と組み合わされるアンコウのアクアバレットを躱しきるのは難しい。
もちろん喰らっても死なないが、頭とか吹き飛ばされるショッキングなシーンを女の子に見せるのは流石に偲ばれるという物。
まあボスとタイマンしてる相手に、そんな気づかいはいらない様な気もしなくはないが。
『ふおおおおぉぉぉぉ!!みなぎって来たぁ!!ファイヤーバード!!』
エクストリームバーストを発動させると、興奮したぴよ丸が勝手にファイヤーバードを発動させてしまう。
融合しているこの状態だとぴよ丸の毛先はないので、代わりに俺の指が炎へと変わる。
「勝手に発動させるなよな。まあ使わせるつもりだったから別にいいけど」
俺は炎の出力を上げて操り、それを剣の形に変えて握る。
レベルの上がったぴよ丸の能力を把握する為——アングラウスに言われて――道中色々試した結果だ。
破壊力もまずまずなので、現段階の武器としては申し分ない。
『マスターよ!ワシの力を存分に振るうがよか!!』
「そうさせて貰うよ」
「ぎゅおおお!」
アンコウが俺の接近に気付き、雄叫びを上げる。
奴は少女に体当たりを仕掛けながら、額から生えている提灯部分からアクアバレットを此方に飛ばして来た。
「ふっ!」
俺はそれを手にした剣で切りすてる形で対処して、巨体のアンコウに向かって突っ込む。
「俺は顔悠だ。感謝する」
二発目のアクアバレットを躱しつつちび姫に近づき、挨拶と礼を言う。
岡町達に頼まれた事ではあったが、待たずに証が手に入るうえ、ドロップまで貰えるのは俺としては純粋にありがたい事だからな。
例ぐらいは言うさ。
「私は姫路アリスよ!私が気を引くからアンタはその隙を狙いなさい!」
姫路はそう言うと、アンコウの意識を引くため態と奴の鼻先を横切る様に動いた。
その際舌で狙われるが、彼女はそれを軽やかに躱してみせる。
いい動きだ。
ぶっちゃけ、囮なら俺の方がド適性なんだが……
不死身だし。
まあだが本人が買って出るなら断る理由はない。
そもそも火力不足で岡町達に加勢を頼まれている訳だから、彼女がアタッカー役をするよりその方が効率は良いだろう。
アンコウが側面に回った姫路の動きを追って、体を大きく動かす。
そのお陰で奴の隙だらけの腹が丸見えとなり、絶好の攻撃チャンスが生まれる。
――と、言いたい所だが。
「提灯には気をつけて!」
奴の額から生えている提灯は、此方をロックオンしていた。
まあ仮にもボスだからな。
相手を一人追って、もう一人をフリーにする程間抜けではない。
俺への牽制とばかりに、奴は散弾状の低威力なアクアバレットを飛ばして来る。
「分かってる!」
散弾状の水弾は小さく、弾速も通常の物より相当遅い。
恐らく、単発時の十分の一も威力はないだろう。
つまり俺の体を貫通してくれないので、喰らうと逆に足止めになってしまうという事だ。
せっかくちび姫から見えない位置だというのに、無視できないのが面倒くさい事この上なしである。
まあだが高速かつ柔軟に動き回る舌での攻撃や、巨体による体当たりよりかは遥かに対応が楽だ。
しかも此方が見えていないので、その狙いも適当だから猶更である。
「はぁっ!」
水弾を躱し、俺はアンコウの腹部に手にした炎の剣で切りつける。
剣が奴の皮膚と分厚い脂肪を切り裂くが――
「想像以上に堅いな」
――致命傷には程遠いダメージ。
無防備な所を切りつけてこれか。
この状態の攻撃なら、一撃は無理でも数発で決着がつくと思っていたんだが……
「こりゃ結構かかりそうだな」
事前に調べてかなり耐久力がある事は分かっていたが、思っていた以上である。
どうやらちび姫が非力なのではなく、こいつが硬すぎるだけだった様だ。
流石Dランク最強クラスのボスである。
「ぎょぎょん!」
腹を切られたアンコウが飛び上がり、俺の上に落ちて来る。
「危ない!躱して!」
もちろん姫路に言われるまでもない。
俺は大きく飛び退いてその攻撃を躱す。
「くくく。魚一匹捌けんとは非力だな、悠」
アングラウスが俺の足元で嫌味を言って来る。
「ああ、悲しい程にな」
アングラウスと戦った回帰前なら、この程度の魔物デコピン一発で倒せただろう。
だが命三つの今の状態じゃ、こんな雑魚相手にすら大立ち回りが必要になる。
さっさと力を取り戻したいものだ。
「しょうがない。まあまた我が手を貸し手やろう」
「おいおいおい、火を噴くのは勘弁してくれよ」
以前ボスに向かってはいたブレスをまたやられたら、偉い事になってしまう。
あの時は俺だけだからよかったが、今回は周りに他の人間がいるのだ。
ブレスに巻き込まれれば彼らは確実に確実にあの世行きである。
「安心しろ、我とてそれぐらい理解している」
「いや、そもそも人目があるから手出しは――」
「今回は地味にやるから見ていろ」
俺の言葉を無視し、再びジャンプしたアンコウを追ってアングラウスが跳躍する。
「ドラ……肉球パーンチ!」
アンコウに空中で接触したアングラウスが、その短い前足で猫パンチをぶちかす。
その一撃が強力すぎた為か、バンっと鈍い破裂音と共にアンコウの体が風船のように破裂してしまう。
「……」
どう考えても、Dランクに来るプレイヤーの使い魔の強さではない。
姫路の方を見ると『え?マジで?』みたいな顔で着地したアングラウスを見ていた。
岡町達も目を見開いて驚いている。
「全然地味じゃねぇじゃねぇか」
「流石にあれ以上地味にするのは無理だ」
だったら手を出すなよな。
因みにドロップは鎧だった。
レアドロップだ。
ついてる。
と言いたい所だが、ボスのレアドロップはそうぽこぽこ落ちる様な物ではない。
連続で落ちるなんてよっぽどだ。
考えられるとしたら――
「なあ、お前なんかスキル持ってるのか?」
「気づいたか」
アングラウスが口の端を歪めてニヤリと笑う。
「我には初討伐時、レアドロップが確定するスキルがある」
なんでEXダンジョンのボスがそんなスキル持ってんだ?
おかしくね?
幸保が大声で、提灯陸アンコウと戦ってるちび姫とやらに向かって叫んだ。
「なんでよ!こいつはあたしの獲物よ!」
少女は戦いながら一瞬振り返って此方を確認し、怒鳴り返して来る。
答えはノー。
まあそらそうだわな。
こういう場合、後から来たプレイヤーは諦めるかボスのリポップを待つのが常識である。
途中参加など普通ではありえない。
もちろん、助けを求める様な状況なら話は変わって来るが。
「ここまで来てボスと闘えなかったら可哀想じゃないの!共闘させてあげなさいな!」
岡町の言葉に、敵の攻撃をかわすために忙しく動き回っていた少女の動きが一瞬止まる。
どうやら可哀想とか言う、彼の冗談みたいな言葉に反応した様だ。
「あー、もう!しょうがないわね!でも邪魔だったら蹴っ飛ばすからね!」
まさかのオーケー。
口調は荒いが、ちび姫って子は結構お人好しの様だ。
もし俺が彼女の立場だったなら、考慮にも値しないと完全にスルーしていた事だろう。
どう考えてもその程度で可哀想とはならんからな。
「さ、よろしくお願いね」
「わかりました」
岡町がウィンクを飛ばして来た。
俺はそれを本能的に躱し、提灯陸アンコウの元へと向かう。
「バンバン殺されるのもアレだし、一応エクストリームバースト使っとくか」
命三つの状態じゃ、他の攻撃と組み合わされるアンコウのアクアバレットを躱しきるのは難しい。
もちろん喰らっても死なないが、頭とか吹き飛ばされるショッキングなシーンを女の子に見せるのは流石に偲ばれるという物。
まあボスとタイマンしてる相手に、そんな気づかいはいらない様な気もしなくはないが。
『ふおおおおぉぉぉぉ!!みなぎって来たぁ!!ファイヤーバード!!』
エクストリームバーストを発動させると、興奮したぴよ丸が勝手にファイヤーバードを発動させてしまう。
融合しているこの状態だとぴよ丸の毛先はないので、代わりに俺の指が炎へと変わる。
「勝手に発動させるなよな。まあ使わせるつもりだったから別にいいけど」
俺は炎の出力を上げて操り、それを剣の形に変えて握る。
レベルの上がったぴよ丸の能力を把握する為——アングラウスに言われて――道中色々試した結果だ。
破壊力もまずまずなので、現段階の武器としては申し分ない。
『マスターよ!ワシの力を存分に振るうがよか!!』
「そうさせて貰うよ」
「ぎゅおおお!」
アンコウが俺の接近に気付き、雄叫びを上げる。
奴は少女に体当たりを仕掛けながら、額から生えている提灯部分からアクアバレットを此方に飛ばして来た。
「ふっ!」
俺はそれを手にした剣で切りすてる形で対処して、巨体のアンコウに向かって突っ込む。
「俺は顔悠だ。感謝する」
二発目のアクアバレットを躱しつつちび姫に近づき、挨拶と礼を言う。
岡町達に頼まれた事ではあったが、待たずに証が手に入るうえ、ドロップまで貰えるのは俺としては純粋にありがたい事だからな。
例ぐらいは言うさ。
「私は姫路アリスよ!私が気を引くからアンタはその隙を狙いなさい!」
姫路はそう言うと、アンコウの意識を引くため態と奴の鼻先を横切る様に動いた。
その際舌で狙われるが、彼女はそれを軽やかに躱してみせる。
いい動きだ。
ぶっちゃけ、囮なら俺の方がド適性なんだが……
不死身だし。
まあだが本人が買って出るなら断る理由はない。
そもそも火力不足で岡町達に加勢を頼まれている訳だから、彼女がアタッカー役をするよりその方が効率は良いだろう。
アンコウが側面に回った姫路の動きを追って、体を大きく動かす。
そのお陰で奴の隙だらけの腹が丸見えとなり、絶好の攻撃チャンスが生まれる。
――と、言いたい所だが。
「提灯には気をつけて!」
奴の額から生えている提灯は、此方をロックオンしていた。
まあ仮にもボスだからな。
相手を一人追って、もう一人をフリーにする程間抜けではない。
俺への牽制とばかりに、奴は散弾状の低威力なアクアバレットを飛ばして来る。
「分かってる!」
散弾状の水弾は小さく、弾速も通常の物より相当遅い。
恐らく、単発時の十分の一も威力はないだろう。
つまり俺の体を貫通してくれないので、喰らうと逆に足止めになってしまうという事だ。
せっかくちび姫から見えない位置だというのに、無視できないのが面倒くさい事この上なしである。
まあだが高速かつ柔軟に動き回る舌での攻撃や、巨体による体当たりよりかは遥かに対応が楽だ。
しかも此方が見えていないので、その狙いも適当だから猶更である。
「はぁっ!」
水弾を躱し、俺はアンコウの腹部に手にした炎の剣で切りつける。
剣が奴の皮膚と分厚い脂肪を切り裂くが――
「想像以上に堅いな」
――致命傷には程遠いダメージ。
無防備な所を切りつけてこれか。
この状態の攻撃なら、一撃は無理でも数発で決着がつくと思っていたんだが……
「こりゃ結構かかりそうだな」
事前に調べてかなり耐久力がある事は分かっていたが、思っていた以上である。
どうやらちび姫が非力なのではなく、こいつが硬すぎるだけだった様だ。
流石Dランク最強クラスのボスである。
「ぎょぎょん!」
腹を切られたアンコウが飛び上がり、俺の上に落ちて来る。
「危ない!躱して!」
もちろん姫路に言われるまでもない。
俺は大きく飛び退いてその攻撃を躱す。
「くくく。魚一匹捌けんとは非力だな、悠」
アングラウスが俺の足元で嫌味を言って来る。
「ああ、悲しい程にな」
アングラウスと戦った回帰前なら、この程度の魔物デコピン一発で倒せただろう。
だが命三つの今の状態じゃ、こんな雑魚相手にすら大立ち回りが必要になる。
さっさと力を取り戻したいものだ。
「しょうがない。まあまた我が手を貸し手やろう」
「おいおいおい、火を噴くのは勘弁してくれよ」
以前ボスに向かってはいたブレスをまたやられたら、偉い事になってしまう。
あの時は俺だけだからよかったが、今回は周りに他の人間がいるのだ。
ブレスに巻き込まれれば彼らは確実に確実にあの世行きである。
「安心しろ、我とてそれぐらい理解している」
「いや、そもそも人目があるから手出しは――」
「今回は地味にやるから見ていろ」
俺の言葉を無視し、再びジャンプしたアンコウを追ってアングラウスが跳躍する。
「ドラ……肉球パーンチ!」
アンコウに空中で接触したアングラウスが、その短い前足で猫パンチをぶちかす。
その一撃が強力すぎた為か、バンっと鈍い破裂音と共にアンコウの体が風船のように破裂してしまう。
「……」
どう考えても、Dランクに来るプレイヤーの使い魔の強さではない。
姫路の方を見ると『え?マジで?』みたいな顔で着地したアングラウスを見ていた。
岡町達も目を見開いて驚いている。
「全然地味じゃねぇじゃねぇか」
「流石にあれ以上地味にするのは無理だ」
だったら手を出すなよな。
因みにドロップは鎧だった。
レアドロップだ。
ついてる。
と言いたい所だが、ボスのレアドロップはそうぽこぽこ落ちる様な物ではない。
連続で落ちるなんてよっぽどだ。
考えられるとしたら――
「なあ、お前なんかスキル持ってるのか?」
「気づいたか」
アングラウスが口の端を歪めてニヤリと笑う。
「我には初討伐時、レアドロップが確定するスキルがある」
なんでEXダンジョンのボスがそんなスキル持ってんだ?
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