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第17話 ワンアップ
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「封印は雌の勲章じゃい!」
流石に自身が雌であるという衝撃の事実はスルー出来なかったのか、傷の部分と合わせてヒヨコは言葉を修正する。
ここまで執着するって事は、勲章のフレーズが相当気に入っているのだろう。
「封印は雌の勲章じゃい!」
「で、ヒヨコの左目には何が封印されてるんだ?」
俺は奇行に走るヒヨコは無視して、封印の事をアングラウスに尋ねた。
「それは我にも分からん。だが、相当な魔力が籠っているのは確かだ。恐らく生まれたばかりの子供では持てあますと判断し、親が封印したのだろう」
「不明か……やばい能力じゃないだろうな?」
アングラウスが相当と言う位だ。
かなり強い力と考えて間違いないだろう。
もし見た物を無差別に燃やすとかだったら、結構シャレにならない事になるんだが……
「解けて危険な物なら、我が再封印してやるから安心しろ」
「ああ、まあその方向で頼む」
なんでアングラウスが持ってきた卵の事で俺が頼む側になってるんだって気もしなくもないが、細かい事は気にしない事にする。
「それで?封印はともかくとして、こいつにはどういう能力があるんだ?」
封印を見抜いたアングラウスなら、どういった能力を持っているか見抜けるんじゃないかと思い尋ねたら――
「ワシには無限の可能性がある!」
勲章ごっこは飽きたのか、ヒヨコが会話に混ざって来た。
「その一端をその目に焼き付けるがよい!モードチェンジ!ファイヤーバード!!」
ヒヨコが叫んだ瞬間、その羽の先端部分ほんの数ミリが火に変わる。
が、それ以外の変化は特に見られない。
ファイヤーバードという名称にしては、かなりショボい変化である。
「ふふふ、その期待の眼差し。むろんこれで終わりではなか!わしのファイヤーバードの力を更に見せてやるバイ!」
別に期待は一切していないが、どうやら手羽先にマッチ以下の火が灯るだけではない様だ。
にしても……
かけられている翻訳魔法のせいだろうが、ちょいちょい変な方言がヒヨコの言葉に混ざっていて微妙に不快に感じてしまう。
まあそのうち慣れるだろうとは思うが。
「ファイヤーウィング!」
ヒヨコがその短い羽を羽搏かせる。
するとその体がほんの僅かに浮かび上がった。
「ファイヤーウィング!」
体は更に上昇して行く。
少しづつ。
本当に少しづつだが。
「ファイヤーウィング!ファイヤーウィング!ファイヤーウィングゥ!……ファイヤー……ウィングゥ……ファイ……はぁはぁ……うぐぅ……ウイン……ぶげ」
だがヒヨコの体は10センチ程浮いた所で毛先の火が消え、そのまま墜落してしまう。
余程体力を消耗したのだろう。
ヒヨコは息も絶え絶えといった感じにベッドの上で荒く呼吸していた。
「想像以上にショボいな」
「まあ生まれたてだからな、そんな物だろう。それにこのヒヨコの真価は別にある」
「真価が別にある?」
「今能力を深く確認してみたが、どうもこいつは他者と融合する能力がある様だな」
アングラウスには他者の力を見抜く鑑定能力がある様だ。
「へぇ……」
融合か。
ゲーム的な感で考えるなら、融合するとパワーアップするってイメージだ。
当然融合しても分離できるのがデフォな訳だが、こいつの場合はどうなのだろうか?
くっ付いたままとか、絶対御免こうむるぞ。
「安心しろ。分離は可能だ」
俺の表情から考えを察したのか、アングラウスが分離可能だと教えてくれる。
「なら、純粋にパワーアップだけが出来るお得なブースターって感じで使える訳か」
パワーアップの仕方次第では、相当な活躍が期待できる能力だ。
封印された力が気になりはするが、こいつはかなりの掘り出し物なのかもしれない。
「試しに融合してみてはどうだ?因みに融合方法は……ヒヨコのキスだ」
「きすぅ?」
お馬鹿全快のヒヨコとキスする姿を想像して、俺は眉根を顰める。
なんかすごく嫌なのだが。
「くくく……その顔、勘違いしている様だな。別に口同士でする必要はない。キスは頬でも手足で構わないぞ」
「ああ、要は嘴で突っつくみたいな感じか」
まあそれなら問題ないな。
「おい」
ベッドで寝転ぶヒヨコの頭を人差し指で軽くつつくと、ゆっくりと起き上がる。
「マスター、今のはもしや……もしやワシへ求愛行動!?ワシは何と罪作りな雌なんじゃあ!!」
「うん、全然違う」
お馬鹿な発言にイラっとして思わずに握りつぶしたくなるが、ぐっと堪える。
所詮は子供の戯言だ。
「融合の能力があるんだろ?それを使ってみてくれないか」
「ふむ。確かにワシにはそういう類の能力があるみたいじゃが……ちとその呼び名はダサいのう。よし!決めた!!ワシはこの能力をミラクルドッキングと名付ける!」
「そうか……」
その名前は絶対アレだとは思ったが、ヒヨコ自身の能力なので俺が口を出す問題ではないと発言を控えておく。
「ではマスター!ミラクルドッキングじゃい!」
ヒヨコが俺の指先をその嘴で勢いよくつついた。
その瞬間、ヒヨコの体が光になって俺の体に吸い込まれて消える。
『これぞ!ミラクルドッキングじゃい!』
脳内でヒヨコの声が響く。
どうやら融合は完了した様だが――
「見た目に変化はないな」
部屋にある姿見で見た限り、俺の見た目に変化はない。
軽く体を動かしてみたが、身体能力にも全く差異は感じられなかった。
「融合してもなにも変化が感じられないんだが?」
強いていうなら、頭の中で『融合ではない!ミラクルドッキングじゃい!』というヒヨコの騒音が響くという迷惑な変化だけだ。
「どうやら効果は、融合した相手にそのヒヨコの能力が加わる感じの様だな」
「ゴミじゃねぇか」
そりゃ真面に飛べもしないヒヨコ一匹分強くなっただけじゃ、その差異は感じられない訳だ。
まあ成長して、更に左目の封印が解ければ話は変わって来るのかもしれないが、少なくとも今の所は何の価値もないゴミ——
あれ?
その時、気づく。
自分の体の中の変化を。
それは表層的な物ではなく、内部的な物だった。
――そう、俺の命が一つ増えていたのだ。
流石に自身が雌であるという衝撃の事実はスルー出来なかったのか、傷の部分と合わせてヒヨコは言葉を修正する。
ここまで執着するって事は、勲章のフレーズが相当気に入っているのだろう。
「封印は雌の勲章じゃい!」
「で、ヒヨコの左目には何が封印されてるんだ?」
俺は奇行に走るヒヨコは無視して、封印の事をアングラウスに尋ねた。
「それは我にも分からん。だが、相当な魔力が籠っているのは確かだ。恐らく生まれたばかりの子供では持てあますと判断し、親が封印したのだろう」
「不明か……やばい能力じゃないだろうな?」
アングラウスが相当と言う位だ。
かなり強い力と考えて間違いないだろう。
もし見た物を無差別に燃やすとかだったら、結構シャレにならない事になるんだが……
「解けて危険な物なら、我が再封印してやるから安心しろ」
「ああ、まあその方向で頼む」
なんでアングラウスが持ってきた卵の事で俺が頼む側になってるんだって気もしなくもないが、細かい事は気にしない事にする。
「それで?封印はともかくとして、こいつにはどういう能力があるんだ?」
封印を見抜いたアングラウスなら、どういった能力を持っているか見抜けるんじゃないかと思い尋ねたら――
「ワシには無限の可能性がある!」
勲章ごっこは飽きたのか、ヒヨコが会話に混ざって来た。
「その一端をその目に焼き付けるがよい!モードチェンジ!ファイヤーバード!!」
ヒヨコが叫んだ瞬間、その羽の先端部分ほんの数ミリが火に変わる。
が、それ以外の変化は特に見られない。
ファイヤーバードという名称にしては、かなりショボい変化である。
「ふふふ、その期待の眼差し。むろんこれで終わりではなか!わしのファイヤーバードの力を更に見せてやるバイ!」
別に期待は一切していないが、どうやら手羽先にマッチ以下の火が灯るだけではない様だ。
にしても……
かけられている翻訳魔法のせいだろうが、ちょいちょい変な方言がヒヨコの言葉に混ざっていて微妙に不快に感じてしまう。
まあそのうち慣れるだろうとは思うが。
「ファイヤーウィング!」
ヒヨコがその短い羽を羽搏かせる。
するとその体がほんの僅かに浮かび上がった。
「ファイヤーウィング!」
体は更に上昇して行く。
少しづつ。
本当に少しづつだが。
「ファイヤーウィング!ファイヤーウィング!ファイヤーウィングゥ!……ファイヤー……ウィングゥ……ファイ……はぁはぁ……うぐぅ……ウイン……ぶげ」
だがヒヨコの体は10センチ程浮いた所で毛先の火が消え、そのまま墜落してしまう。
余程体力を消耗したのだろう。
ヒヨコは息も絶え絶えといった感じにベッドの上で荒く呼吸していた。
「想像以上にショボいな」
「まあ生まれたてだからな、そんな物だろう。それにこのヒヨコの真価は別にある」
「真価が別にある?」
「今能力を深く確認してみたが、どうもこいつは他者と融合する能力がある様だな」
アングラウスには他者の力を見抜く鑑定能力がある様だ。
「へぇ……」
融合か。
ゲーム的な感で考えるなら、融合するとパワーアップするってイメージだ。
当然融合しても分離できるのがデフォな訳だが、こいつの場合はどうなのだろうか?
くっ付いたままとか、絶対御免こうむるぞ。
「安心しろ。分離は可能だ」
俺の表情から考えを察したのか、アングラウスが分離可能だと教えてくれる。
「なら、純粋にパワーアップだけが出来るお得なブースターって感じで使える訳か」
パワーアップの仕方次第では、相当な活躍が期待できる能力だ。
封印された力が気になりはするが、こいつはかなりの掘り出し物なのかもしれない。
「試しに融合してみてはどうだ?因みに融合方法は……ヒヨコのキスだ」
「きすぅ?」
お馬鹿全快のヒヨコとキスする姿を想像して、俺は眉根を顰める。
なんかすごく嫌なのだが。
「くくく……その顔、勘違いしている様だな。別に口同士でする必要はない。キスは頬でも手足で構わないぞ」
「ああ、要は嘴で突っつくみたいな感じか」
まあそれなら問題ないな。
「おい」
ベッドで寝転ぶヒヨコの頭を人差し指で軽くつつくと、ゆっくりと起き上がる。
「マスター、今のはもしや……もしやワシへ求愛行動!?ワシは何と罪作りな雌なんじゃあ!!」
「うん、全然違う」
お馬鹿な発言にイラっとして思わずに握りつぶしたくなるが、ぐっと堪える。
所詮は子供の戯言だ。
「融合の能力があるんだろ?それを使ってみてくれないか」
「ふむ。確かにワシにはそういう類の能力があるみたいじゃが……ちとその呼び名はダサいのう。よし!決めた!!ワシはこの能力をミラクルドッキングと名付ける!」
「そうか……」
その名前は絶対アレだとは思ったが、ヒヨコ自身の能力なので俺が口を出す問題ではないと発言を控えておく。
「ではマスター!ミラクルドッキングじゃい!」
ヒヨコが俺の指先をその嘴で勢いよくつついた。
その瞬間、ヒヨコの体が光になって俺の体に吸い込まれて消える。
『これぞ!ミラクルドッキングじゃい!』
脳内でヒヨコの声が響く。
どうやら融合は完了した様だが――
「見た目に変化はないな」
部屋にある姿見で見た限り、俺の見た目に変化はない。
軽く体を動かしてみたが、身体能力にも全く差異は感じられなかった。
「融合してもなにも変化が感じられないんだが?」
強いていうなら、頭の中で『融合ではない!ミラクルドッキングじゃい!』というヒヨコの騒音が響くという迷惑な変化だけだ。
「どうやら効果は、融合した相手にそのヒヨコの能力が加わる感じの様だな」
「ゴミじゃねぇか」
そりゃ真面に飛べもしないヒヨコ一匹分強くなっただけじゃ、その差異は感じられない訳だ。
まあ成長して、更に左目の封印が解ければ話は変わって来るのかもしれないが、少なくとも今の所は何の価値もないゴミ——
あれ?
その時、気づく。
自分の体の中の変化を。
それは表層的な物ではなく、内部的な物だった。
――そう、俺の命が一つ増えていたのだ。
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