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第73話 不老
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死を弄ぶ秘術には二つの効果がある。
一つは死のエネルギーの吸収と、そのエネルギーを使っての製作だ。
――死のエネルギーとは、生物が死ぬ際に発せられる負のエネルギーである。
ストックの効果範囲は、半径100キロ程。
その範囲内で死んだ生物のエネルギーを自動で吸収してくれる。
但し、生物の死なら何でもいい訳ではない。
植物や、小さな虫や小動物なんかだとエネルギーが小さすぎて吸収できない様になっている。
まあ要は、大型の動物や魔物――それに人間の死がエネルギー源になるという訳だ。
特に人間の死は、魔物の100倍近いエネルギーが手に入る。
そのため、効率よく集めるなら人間を殺しまくるのが一番だった。
……ま、流石にそれはしないけどな。
ああ後、範囲内で勝手に死なれるより、俺自身が直接――正確にはスキルの宿った死霊術師の剣で相手を殺した方が吸収率は良い様だ。
さて、もう一つの効果である制作には5種類ある。
アイテム制作。
武器制作。
防具制作。
アクセサリー制作。
それと死の眷属精製に、死鬼体精製だ。
上4つはまあ、そのままである。
アイテムや装備品を製作でき、中には銭豚の錬成に無い物もいくつかラインナップされていた。
驚いたのは、その中に死霊の指輪が入っていた事だ。
どうやらイベント産のアイテムも制作可能らしい。
え?
これで世界中の死霊術師の不遇を解消してやれる?
そんな面倒くさい事する訳ないじゃん。
無かったら死ぬ訳でも無し。
そもそも、死霊術師って数が滅茶苦茶少ないからな。
少なくとも俺の知る限り、俺以外の死霊術師は指輪をくれたNPCのペェズリーだけだ。
それぐらい数が少ない。
正直、何処にいるかも分からない少数の存在を探し出して、そいつに指輪を届けるなんてやってられん。
量産して市場に流そうにも、需要がニッチ過ぎるから話にならないし。
という訳で、指輪は偶然遭遇したら渡してやらなくもないって所だ。
「ふむ……死鬼体ってなんなんだ?」
眷属精製は、忠実な下僕を生み出すスキルだ。
まあその下僕がどういう扱いか――アンデッドかそうでないか――までは分からないが、取りあえず効果は分かる。
問題は死鬼体だ。
スキルの詳細では、魂のない死の肉体を生み出すとしか分からなかった。
用途が不明だ。
しかもこのスキル、一体生み出すのに150万近い死のエネルギーが必要になる。
人間で言ったら1万5千人分の命だ。
それだけのエネルギーが必要になる以上、相当強力な効果の筈。
出来ればその使い道や詳細は知っておきたい。
「そうさねぇ……」
俺の問いに、ゼゼコはニヤリと笑って手を付き出す。
さっき置いた金貨100枚は、もうどこかに消えてしまっている。
「まだ取るつもりかよ!」
スキルの情報を聞くのに金貨100枚も払っているのに、追加を求めて来るとか。
この糞豚妖精め。
「詳細情報は別腹さ。けど、あたしも鬼じゃない。さっきのサービスとして、代わりに一つ良い情報を教えて上げようじゃないか」
「いい情報?」
「そうさ、あんたにとって重要な情報だよ。耳かっぽじってよく聞きな……死を弄ぶ秘術じゃ、アルティメットエリクサーは精製されない」
ゼゼコが口元を歪ませ、ニマリと笑う。
今にも「ぶひひ」という擬音が聞こえてきそうな、超ムカつく顔だ。
この様子だと、俺の目的――アルティメットエリクサーの大量生産を見抜いているみたいだな。
「お役立ち情報だろ?」
「ああ」
確かにこれは有用な情報ではある。
死を弄ぶ秘術のエリクサー精製で、大成功が出るかどうか試す必要がなくなった訳だからな。
それ自体は少々残念ではあるが、まあSランクの魔宝玉を頑張って集めればいいだけだ。
そのために聖なる剣だって育てた訳だしな。
俺はゼゼコの手に、追加の金貨を置く。
「死鬼体は、言ってみればアンデッドの卵を生み出す効果さ」
「アンデッドの卵?」
「それ自体にはなんの力もない。卵に魂を入れて初めて意味を持つ物さ」
「魂?」
「そうさ。例えば強い未練を残した死霊の魂なんかを入れれば、そいつにアンデッドの肉体を与える事も出来る」
死霊と聞いて、パッと思い浮かぶのはペェズリーだ。
それと死霊の森でなんかゴチャゴチャ言って来た、男女の霊。
まあ全員NPCな訳だが。
あの3人に肉体を付与したり出来る訳か。
うん、果てしなくどうでもいいな。
「それ以外にも、自分の魂を移して不老の体を手に入れたりも出来るわね」
「自分の魂も移せるのか……」
不老か……
かなり魅力的ではあるが、2つ程大きな問題があるな。
一つは、アンデッドになるって事は、光属性や神聖属性から大ダメージ――それらの属性はアンデッドに特効がある――を受ける事になる事だ。
後、浄化魔法の即死を受けるリスクも。
まあそっちは早々喰らう事はないとは思うが。
因みに、ヒールなんかは普通にアンデッドも回復する。
据え置きゲームとかだとダメージを喰らったりする事も多いが、ヘブンスオンラインにそんな仕様は無かった。
MMOだと、死霊術師もパーティーを組んだりする訳だしな。
味方の範囲回復でダメージ受けるとか、そこまでドMな仕様にはなっていない。
そしてもう一つの問題は、人間を辞める事になる事だ。
廃人の俺も流石に「俺は人間をやめるぞ!クレア!」とかはようやらん。
まあ寿命的に最強装備やレベルがコンプできなきゃ、最後の手段で有りかって位か。
どちらにせよ、今すぐ役に立つ物ではないな。
エネルギーの必要数を馬鹿みたいに多いし。
一つは死のエネルギーの吸収と、そのエネルギーを使っての製作だ。
――死のエネルギーとは、生物が死ぬ際に発せられる負のエネルギーである。
ストックの効果範囲は、半径100キロ程。
その範囲内で死んだ生物のエネルギーを自動で吸収してくれる。
但し、生物の死なら何でもいい訳ではない。
植物や、小さな虫や小動物なんかだとエネルギーが小さすぎて吸収できない様になっている。
まあ要は、大型の動物や魔物――それに人間の死がエネルギー源になるという訳だ。
特に人間の死は、魔物の100倍近いエネルギーが手に入る。
そのため、効率よく集めるなら人間を殺しまくるのが一番だった。
……ま、流石にそれはしないけどな。
ああ後、範囲内で勝手に死なれるより、俺自身が直接――正確にはスキルの宿った死霊術師の剣で相手を殺した方が吸収率は良い様だ。
さて、もう一つの効果である制作には5種類ある。
アイテム制作。
武器制作。
防具制作。
アクセサリー制作。
それと死の眷属精製に、死鬼体精製だ。
上4つはまあ、そのままである。
アイテムや装備品を製作でき、中には銭豚の錬成に無い物もいくつかラインナップされていた。
驚いたのは、その中に死霊の指輪が入っていた事だ。
どうやらイベント産のアイテムも制作可能らしい。
え?
これで世界中の死霊術師の不遇を解消してやれる?
そんな面倒くさい事する訳ないじゃん。
無かったら死ぬ訳でも無し。
そもそも、死霊術師って数が滅茶苦茶少ないからな。
少なくとも俺の知る限り、俺以外の死霊術師は指輪をくれたNPCのペェズリーだけだ。
それぐらい数が少ない。
正直、何処にいるかも分からない少数の存在を探し出して、そいつに指輪を届けるなんてやってられん。
量産して市場に流そうにも、需要がニッチ過ぎるから話にならないし。
という訳で、指輪は偶然遭遇したら渡してやらなくもないって所だ。
「ふむ……死鬼体ってなんなんだ?」
眷属精製は、忠実な下僕を生み出すスキルだ。
まあその下僕がどういう扱いか――アンデッドかそうでないか――までは分からないが、取りあえず効果は分かる。
問題は死鬼体だ。
スキルの詳細では、魂のない死の肉体を生み出すとしか分からなかった。
用途が不明だ。
しかもこのスキル、一体生み出すのに150万近い死のエネルギーが必要になる。
人間で言ったら1万5千人分の命だ。
それだけのエネルギーが必要になる以上、相当強力な効果の筈。
出来ればその使い道や詳細は知っておきたい。
「そうさねぇ……」
俺の問いに、ゼゼコはニヤリと笑って手を付き出す。
さっき置いた金貨100枚は、もうどこかに消えてしまっている。
「まだ取るつもりかよ!」
スキルの情報を聞くのに金貨100枚も払っているのに、追加を求めて来るとか。
この糞豚妖精め。
「詳細情報は別腹さ。けど、あたしも鬼じゃない。さっきのサービスとして、代わりに一つ良い情報を教えて上げようじゃないか」
「いい情報?」
「そうさ、あんたにとって重要な情報だよ。耳かっぽじってよく聞きな……死を弄ぶ秘術じゃ、アルティメットエリクサーは精製されない」
ゼゼコが口元を歪ませ、ニマリと笑う。
今にも「ぶひひ」という擬音が聞こえてきそうな、超ムカつく顔だ。
この様子だと、俺の目的――アルティメットエリクサーの大量生産を見抜いているみたいだな。
「お役立ち情報だろ?」
「ああ」
確かにこれは有用な情報ではある。
死を弄ぶ秘術のエリクサー精製で、大成功が出るかどうか試す必要がなくなった訳だからな。
それ自体は少々残念ではあるが、まあSランクの魔宝玉を頑張って集めればいいだけだ。
そのために聖なる剣だって育てた訳だしな。
俺はゼゼコの手に、追加の金貨を置く。
「死鬼体は、言ってみればアンデッドの卵を生み出す効果さ」
「アンデッドの卵?」
「それ自体にはなんの力もない。卵に魂を入れて初めて意味を持つ物さ」
「魂?」
「そうさ。例えば強い未練を残した死霊の魂なんかを入れれば、そいつにアンデッドの肉体を与える事も出来る」
死霊と聞いて、パッと思い浮かぶのはペェズリーだ。
それと死霊の森でなんかゴチャゴチャ言って来た、男女の霊。
まあ全員NPCな訳だが。
あの3人に肉体を付与したり出来る訳か。
うん、果てしなくどうでもいいな。
「それ以外にも、自分の魂を移して不老の体を手に入れたりも出来るわね」
「自分の魂も移せるのか……」
不老か……
かなり魅力的ではあるが、2つ程大きな問題があるな。
一つは、アンデッドになるって事は、光属性や神聖属性から大ダメージ――それらの属性はアンデッドに特効がある――を受ける事になる事だ。
後、浄化魔法の即死を受けるリスクも。
まあそっちは早々喰らう事はないとは思うが。
因みに、ヒールなんかは普通にアンデッドも回復する。
据え置きゲームとかだとダメージを喰らったりする事も多いが、ヘブンスオンラインにそんな仕様は無かった。
MMOだと、死霊術師もパーティーを組んだりする訳だしな。
味方の範囲回復でダメージ受けるとか、そこまでドMな仕様にはなっていない。
そしてもう一つの問題は、人間を辞める事になる事だ。
廃人の俺も流石に「俺は人間をやめるぞ!クレア!」とかはようやらん。
まあ寿命的に最強装備やレベルがコンプできなきゃ、最後の手段で有りかって位か。
どちらにせよ、今すぐ役に立つ物ではないな。
エネルギーの必要数を馬鹿みたいに多いし。
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