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第二章 希望を求めて

第四十三話 おめでとう

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「英雄ねぇ」

事情を聞いてベッドの上で頬杖をつく。
どうやら俺が眠ってる間にティーエさんが色々と働き掛けて、俺達は帝国を救った英雄という事になっているらしい。
道理で見ず知らずの看護婦が迫って来たわけだ。

「おや、不服そうだねぇ」

「そらそうだろう。厄災が暴れたのは俺達のせいなんだぜ。それを倒したからって国を救ったってのはちょっとおかしくないか?」

やれやれ、ティーエさんは一体どんな交渉したんだか。本来なら英雄どころか、帝国を危険に晒したろくでなし集団と言われてもおかしくない所だ。

「君は根本的な事を勘違いしていないかい?言っておくけど厄災が暴れたのは決して僕たちの責任じゃないよ」

「あれが俺達の責任じゃないってんなら誰の責任だってんだ」

パーの主張には無理がありすぎる。
責任の所在は火を見るよりも明らかだ。

「責任は帝国にある」

おいおいレイン。
いくらパーの気を引きたいからってそれは無くないか?

「僕達は冒険者として登録して、正式に帝国の許可を貰って王墓を探索をしているんだよ?なら王墓内で起こった問題は、それを管理し許可を出している帝国が背負うべきでしょ?」

「そういう事だ」

言われてみればまあそうか。
帝国は厄災が居るなんて夢にも思わなかったろうが。帝国が管理している以上、厄災が居るなんて思いもしませんでしたは通用しない。

俺達に責任が全くないとは思わないが。
リスクをきちんと把握できず、よくわからん場所に冒険者を送り続けた帝国の責任の方が確かにずっと重い。まあ帝国が進んで責任取ってくれるってんなら、こちらとしても文句をつける理由はないか。

しかし…パーの方を見ると。
どうだい、勉強になったかい?と言わんばかりの物凄いドヤ顔を見せつけてくる。いつ見てもムカつく顔だ。見れば見るほどレインはこれのどこがいいのか謎が深まる。こんど機会があったら聞いてみるとするか。

「そんなに見つめられちゃ、僕照れちゃうよ」

パーがほっぺに両手を当てて、体をクネクネさせる。無駄な恥ずかしさアピールにイラっとする事この上なしだ。
足が滑った事にして蹴り飛ばしてもいいかな?だめかな?

「あら、ダメですよたかしさん。パーちゃんはレインさんとお付き合いしてるんですから」

「え!?」

ベッドの淵に腰掛け、バレない様にそーっとパーに蹴りを入れようとした所。思わぬフラムの言葉に俺は固まる。

つきあう?
マジで!?

「やー、バレちゃったかー」

レインの方を見て目が合うと、奴は満足気に頷いた。一瞬冗談かとも思ったが、レインがこの手の冗談に乗るとも思えないので事実なのだろう。

しかし一体いつの間に……

「ふふ、たかしさんが寝て居る間にレインさんが告白されたんですよ」

フラムが俺の心を読んだかの様に説明してくれた。みるとその顔は上気し、目はこれでもかというぐらいキラキラと輝いている。
本当に恋話の好きな女だ。

しかし人が意識不明の間に告白とは。
普通そういうのって俺が目覚めるまで自粛するもんじゃないか?
あれ?ひょっとして俺軽んじられてる?

レインとはいい友人関係を築けてると思ってたんだが、ちょっとショックだ。
まあ今は細かいことは気にせず、奴を祝福してやるとしよう。

「レインおめでとう」

「ありがとう、たかし。お前のおかげだ」

「は?俺のおかげ?」

告白シーンに立ち会うどころか、俺はグースカ寝てたわけで。はっきり言って俺は何もしていないのだが。

「お前の強さが俺に勇気を与えてくれたんだ」

「え?どゆこと?」

俺の頭は?マークで一杯だ。
相変わらずレインは言葉足らずで、何を言っているのかよくわからん。

「お前はあの時彩音を救うために命を賭け、そして強くなって戻って来た。その時気付いたのさ。ただ守るだけでは無く、お互いに手を取り合い生きる強さを。だから俺は彼女とそうあるべく、勇気を出して彼女に自分の思いのたけをぶつける事ができた。おまえのお陰だ、ありがとう」

「お、おう……」

適当に相槌を打っては見たものの、正直何言ってるか全然わからん。というか俺に感謝してるなら、それこそ俺が起きる迄はまてよな。まあ、軽んじられてる訳じゃないと分かったから良しとするか。

たかし君も頑張って素敵な恋人探しをすると良いよ。そう上から目線で語るパーに若干イライラしつつも、俺は素直にレインを祝福した。
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