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ヴァンパイアスレイヤー(幼馴染が)

第四十七話 種

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「御二人とも御無事ですか?」

何故か翼の生えたティーエ達が上空から舞い降り、こちらに安否確認の声をかけてきた。

「ああ、無事だ。しかしなんだその翼は……衣替えか?」
「これティーエさんがかけてくれた飛行用の魔法なんですよ!かわいいでしょ!」

ティーエの魔法か……ティータはともかく、確かに可愛いともいえるな。
特に純白のドレスを着こんだフラムが降りて来た時は、天使が舞い降りたのかと思ったほどだ。

今のフラムを見れば、きっとたかしも見惚れてしまうだろうな……

たかしは否定していたが、神様が言うぐらいだ、きっとたかしはフラムに惚れているのだろう。

「たかしさんが見当たりませんが、彼はいったい?」
「ああ、たかしなら何処かに飛んで行ったぞ?」
「ふん!自分一人で逃げたのか、あの卑怯者め!」

言葉足らずだったためか、ティータに誤解を与えてしまったようだ。

「違います!たかしさんは逃げたんじゃありません!」

ティータの失礼な発言にリンが怒って反論する。
人に説明をしたりするのは苦手なんだが、まだ子供のリンに丸投げするのもあれだと思い説明する。

「まあ、あれだ。ヴラドにダメージを与える為帰還魔法テレポートをかけたんだよ」

ティータが何を言ってるんだこの女は?という顔でこちらを見てくる。
うん、これは確実に伝わってないな。

「成程、帰還魔法テレポートでヴラドの封印に反応させて、ダメージを与えようとしたわけですね」

私の説明を理解してくれたのか、ティーエが分かり易く補足してくれる。
ナイスティーエ、それでこそ私の相棒だ。

「ああ、今頃どこかで気絶しているだろう」
「え?気絶してるんですか?」
「たかしが攻撃したとき、結構な衝撃が発生したからな」

そう言いな両腕を上げて火傷の跡を見せる。

「あ、ごめんなさい。私としたことが彩音さんの怪我に気づかないなんて。すぐに回復します」
「すまない、頼む」

ティーエが此方に駆け寄り回復魔法をかけてくれる。
回復魔法とは便利なもので、見る見るうちに火傷の跡が治っていく。

便利ではあるが、毎回頼る破目になるのは流石に情けないな。
いずれは回復に頼らずに済むぐらい強くなりたいものだ。

「でも彩音さんがそこまでダメージを受けるってことは、たかしさん大怪我してるんじゃ?」
「ひょっとしたら死んでるかもしれませんね」

ティータが不吉な事をさらりと言う。

「たかしさんは死んでなんかいません!私にはわかります!」

ティーエが叱りつけるよりも早く、ティータの不吉な言葉にリンが強く反論する。

「それは何故だ?」
「私、たかしさんと契約したから分かるんです。たかしさんは生きてるって。それは間違いありません!」

リンが言うなら間違いないだろう。

っと、そうそう忘れるところだった。
思い出し、ズボンのポケットから種を取り出す。

「これが落ちて来たんだが、何の種かわかるか?」

そう言ってフラムに種を投げる。

「あ、え!?これって神樹の種ですよ!間違いありません!この種から神樹の息吹を感じます!」
「え!?本当ですか!?」

やはりそうか。
神樹を吹き飛ばした後に上から落ちて来たから、多分そうだろうなと思ってはいたが……

「これなら神樹は甦ります!!」

それはよかった。
正直神樹がどうなろうが個人的にはどうでもいいところだが、ハッピーエンドに越した事は無い。
これならたかしも囮にしたことに文句は言わないだろう。

そういえば、もうずいぶんと長い事たかしを蹴り飛ばしていないな。
ぐだぐだ言うようなら久しぶりに蹴り飛ばすのもいいか。

楽しみだ。
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