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留学生
第63話 三日
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それは余りにも予想外で、唐突な言葉だった。
「用務員を務めている男を、叩きのめしてください」
「何かの冗談か?」
氷部とエヴァの勝負。
その審判を頼まれた際に、ついでと言わんばかりの淡々とした口調で、茨城からとんでもない事を俺は頼まれた。
学園で働く人物をボコボコにしろとか、とてもではないが生徒会副会長を務める人間の言葉とは思えないのだが。
「あれは真央様のストーカーです。迷惑をしているので、排除してください」
「それ、俺に頼む事か?迷惑だってんなら、荒木自身にやらせろよ」
排除とかまるで暗殺依頼だ。
まあ殺せではなく叩きのめせだから、命まで奪えと言ってるわけではないんだろうが……
「アポロンと戦いたくはないのですか?」
「む……」
茨城から的確な切り返しが戻ってくる。
戦いたいか戦いたくないかで言うなら――――もちろん死ぬほど戦いたい。
荒木程ではないにしろ、あの強さは相当なものだ。
戦いたくないわけがない。
だが俺だって、最低限の常識はわきまえているつもりだ。
生徒ではなく用務員。
しかもそれは臨時で、本当の身分はギリシアの偉いさんとなれば、流石の俺も喧嘩を吹っ掛けるのは躊躇われる。
後々面倒な事になるのは目に見えているからな。
「3日です」
「ん?」
何が3日なんだ?
「罰は反省室3日で済ませます。それ以外のごたごたも真央様の名において、責任を持って対処する事をお約束しましょう」
茨城が荒木の名を使って宣言している以上、単独の判断ではなく、正式に荒木からの依頼と考えていいだろう。
彼女が勝手に名前を使うとは思えないからな。
真央グループが責任持ってけつを持ってくれるんなら、後々のごたごたは気にしなく済む……か。
だが彼女の言葉に、一つだけ気になる所があった。
「すまん、確認させてくれ。3日ってのは、俺が反省室に入るのか?」
「暴れた本人をお咎めなしにはできませんので。ですが安心してください。3日で済ませますから」
自信満々気に茨城は答える。
あまりにもふざけた、正気を疑う言葉だ。
何で頼みごとを聞いた俺が、反省室に入れられにゃならんのだ?
割に合わないにも程がある。
それで受ける奴がいるのなら、顔を見てみたいものだ。
「わかった。ちゃんと後処理はしろよ」
ええ、実は毎日鏡で見てます。
冷静に考えて、たった3日反省室に入るだけであれと戦えるのなら、こんな魅力的な提案はない。
ここは荒木の奴に恩を売る意味も込めて、がっつり引き受ける事にする。
「では、お願いします」
「任せろ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おらぁ!」
「むん!」
アポロンの顔面に容赦なく回し蹴りを叩き込む。
だが奴はそれを、片手で容易く受け止めて見せた。
――そうでなくっちゃ。
正面から走ってきて攻撃しているのだ。
それに反応できない様なボンクラなら、戦う価値などないからな。
「何のつもりだ?」
「あんた、荒木真央のストーカーなんだってな?」
「戯言を」
アポロンはその言葉を鼻で笑うが、横にいた女性はストーカーという俺の言葉に反応を見せた。
本人には全く自覚がない様だが、どうやらストーカーというのは本当の事らしい。
まあ今更それが嘘か誠かなんて俺にはどうでもいい事ではあるのだが、一応確認だけはしておいた。
「いたいけな少女(?)を付け回す悪漢を、学園のキングとしては見逃すわけにはいかないんでな。成敗させてもらう」
うむ、我ながら見事な口上だ。
荒木に頼まれたと言っても良かったのだが、万一その事でアポロンが強いショックを受け、戦闘に影響が出てしまってはあれだからな。
そこは伏せておく。
「なるほど……貴様が裸王か。だが聞き捨てならんな。荒木真央を苦しめる悪漢は、貴様であろうが!」
――なんでやねん。
何をどうしたら俺が悪漢になる?
いやまあ、今嬉々として喧嘩を吹っ掛けてるのは確かにアレではあるが……
後、真面目なシチュエーションでその2つ名を出されるとなんだかモヤっとする。
「そちらの方からやってくるとはな。丁度いい。貴様を叩き潰し、彼女の安寧をこの手で掴み取ってくれる。彼女の将来の夫である、このアポロンがな!」
あんな子供相手に将来の夫とか、頭おかしいんじゃねぇか?
まあなんにせよ、相手はやる気になってくれた様だ。
これで思う存分戦う事が出来る。
「お待ちください。生徒と決闘などすれば、問題を起こさないという約束を破ってしまう事に」
「彼女なら分かってくれる!」
隣の女性が止めようとするが、アポロンは何の根拠もない言葉を言い切った。
もちろんそんな訳はない。
荒木が俺をけしかけたのは、その約束を破らせるために他ならないのだから。
残念ながら、あんたは荒木の顔を拝むことなく国に帰る事になる。
俺の手によってな。
「武舞台に上がりな。お前のその間違いをへし折ってやる」
「ふん。ハニーに勝ったというのも、どうせ卑怯な手を使ったのだろう。彼女に代わって俺が指導してやる」
さて、懲罰三日分の元を取らせて貰うとしようか。
「用務員を務めている男を、叩きのめしてください」
「何かの冗談か?」
氷部とエヴァの勝負。
その審判を頼まれた際に、ついでと言わんばかりの淡々とした口調で、茨城からとんでもない事を俺は頼まれた。
学園で働く人物をボコボコにしろとか、とてもではないが生徒会副会長を務める人間の言葉とは思えないのだが。
「あれは真央様のストーカーです。迷惑をしているので、排除してください」
「それ、俺に頼む事か?迷惑だってんなら、荒木自身にやらせろよ」
排除とかまるで暗殺依頼だ。
まあ殺せではなく叩きのめせだから、命まで奪えと言ってるわけではないんだろうが……
「アポロンと戦いたくはないのですか?」
「む……」
茨城から的確な切り返しが戻ってくる。
戦いたいか戦いたくないかで言うなら――――もちろん死ぬほど戦いたい。
荒木程ではないにしろ、あの強さは相当なものだ。
戦いたくないわけがない。
だが俺だって、最低限の常識はわきまえているつもりだ。
生徒ではなく用務員。
しかもそれは臨時で、本当の身分はギリシアの偉いさんとなれば、流石の俺も喧嘩を吹っ掛けるのは躊躇われる。
後々面倒な事になるのは目に見えているからな。
「3日です」
「ん?」
何が3日なんだ?
「罰は反省室3日で済ませます。それ以外のごたごたも真央様の名において、責任を持って対処する事をお約束しましょう」
茨城が荒木の名を使って宣言している以上、単独の判断ではなく、正式に荒木からの依頼と考えていいだろう。
彼女が勝手に名前を使うとは思えないからな。
真央グループが責任持ってけつを持ってくれるんなら、後々のごたごたは気にしなく済む……か。
だが彼女の言葉に、一つだけ気になる所があった。
「すまん、確認させてくれ。3日ってのは、俺が反省室に入るのか?」
「暴れた本人をお咎めなしにはできませんので。ですが安心してください。3日で済ませますから」
自信満々気に茨城は答える。
あまりにもふざけた、正気を疑う言葉だ。
何で頼みごとを聞いた俺が、反省室に入れられにゃならんのだ?
割に合わないにも程がある。
それで受ける奴がいるのなら、顔を見てみたいものだ。
「わかった。ちゃんと後処理はしろよ」
ええ、実は毎日鏡で見てます。
冷静に考えて、たった3日反省室に入るだけであれと戦えるのなら、こんな魅力的な提案はない。
ここは荒木の奴に恩を売る意味も込めて、がっつり引き受ける事にする。
「では、お願いします」
「任せろ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おらぁ!」
「むん!」
アポロンの顔面に容赦なく回し蹴りを叩き込む。
だが奴はそれを、片手で容易く受け止めて見せた。
――そうでなくっちゃ。
正面から走ってきて攻撃しているのだ。
それに反応できない様なボンクラなら、戦う価値などないからな。
「何のつもりだ?」
「あんた、荒木真央のストーカーなんだってな?」
「戯言を」
アポロンはその言葉を鼻で笑うが、横にいた女性はストーカーという俺の言葉に反応を見せた。
本人には全く自覚がない様だが、どうやらストーカーというのは本当の事らしい。
まあ今更それが嘘か誠かなんて俺にはどうでもいい事ではあるのだが、一応確認だけはしておいた。
「いたいけな少女(?)を付け回す悪漢を、学園のキングとしては見逃すわけにはいかないんでな。成敗させてもらう」
うむ、我ながら見事な口上だ。
荒木に頼まれたと言っても良かったのだが、万一その事でアポロンが強いショックを受け、戦闘に影響が出てしまってはあれだからな。
そこは伏せておく。
「なるほど……貴様が裸王か。だが聞き捨てならんな。荒木真央を苦しめる悪漢は、貴様であろうが!」
――なんでやねん。
何をどうしたら俺が悪漢になる?
いやまあ、今嬉々として喧嘩を吹っ掛けてるのは確かにアレではあるが……
後、真面目なシチュエーションでその2つ名を出されるとなんだかモヤっとする。
「そちらの方からやってくるとはな。丁度いい。貴様を叩き潰し、彼女の安寧をこの手で掴み取ってくれる。彼女の将来の夫である、このアポロンがな!」
あんな子供相手に将来の夫とか、頭おかしいんじゃねぇか?
まあなんにせよ、相手はやる気になってくれた様だ。
これで思う存分戦う事が出来る。
「お待ちください。生徒と決闘などすれば、問題を起こさないという約束を破ってしまう事に」
「彼女なら分かってくれる!」
隣の女性が止めようとするが、アポロンは何の根拠もない言葉を言い切った。
もちろんそんな訳はない。
荒木が俺をけしかけたのは、その約束を破らせるために他ならないのだから。
残念ながら、あんたは荒木の顔を拝むことなく国に帰る事になる。
俺の手によってな。
「武舞台に上がりな。お前のその間違いをへし折ってやる」
「ふん。ハニーに勝ったというのも、どうせ卑怯な手を使ったのだろう。彼女に代わって俺が指導してやる」
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