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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる
第四話 ノウザン公(下)
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渦の中からこの世界へ現れようとしたモノを、膨大な金色の芽は、元の世界へと押し返した。
それから金色の芽はこちらの世界から、あちらの世界へ渡った。
驚いたのは渦から現れようとしていた存在である。
その存在は、本来、人の界へ渡ることなど直接することのない魔のやんごとなき方、ノウザン公その者だった。自身の部下が怪死したことに、ユーリスへの興味を持ち、公自らがユーリスの姿を見ようとしたところ、この事態である。ノウザン公は牛頭に人の上半身、蛇の下半身を持つ。その異形は、再び魔の領域に押し返された。そして次の瞬間、ブワリと金色の芽が彼を押し包んで始末しようとした。
慌てた公は、空を飛び、凄まじい勢いで飛んで逃げようとする。
その後を、金色の芽もスピードを上げて追い駆けていく。
ノウザン公は慌てた。
アレは一体なんだと思い、自身の配下達を呼びよせて、その金色の芽を足止めさせているのだが、現れた先から配下達は金色の芽によっていとも容易く五体を切り落とされている。バターか何かのようにスパスパと切り落とされては、地面にボタボタと配下達の命を無くした体が落ちていく光景を見て、ようやく、そう、今になって自分の命も危ないことをノウザン公は理解した。
ノウザン公は、魔の領域の空を飛びながら、何度もその強大な魔法の力で、その金色の芽を蹴散らそうとしたが、その金色の芽を倒すことは出来なかった。魔法の技を何度受けても、その金色の芽が消滅することはない。むしろ、更にスピードを上げて追いついてこようとする。
ノウザン公は焦った。
魔の領域の、やんごとなき方として、魔族達の崇敬を集めるこの自分を、こうまで追いかけ、その命を摘み取ろうとする者は、これまで存在していなかった。
一体アレはなんなんだ。
必死に空を駆けるノウザン公の後ろから、金色の芽はザワザワと大きく広がる。網のように広がったそれが、とうとうノウザン公に追いついた次の瞬間、その金色の芽はノウザン公の異形の姿をパクリと包み込んだ。
それだけだった。
それだけで、ノウザン公という存在は消滅した。
ユーリス達が昼食を取っていた店の屋根の上で、小さな黄金竜の雛は「キュルルルゥ」と鳴く。
あちらの世界へ渡った金色の芽は、こちらの世界へ戻って来る。
そしてまたユーリスのそばで沈み込み、彼を守り続ける。
ユーリスとイルム、パオとラオの四人は、そのまま食事を続ける気も無くなったようで、店を出てクランに帰る道を戻り始めた。
その時ユーリスは、周囲を見回し、何かを探すように青い目を彷徨わせた。
目的のものが見つからないと分かると、彼は残念そうにため息をついて、イルム達と歩いていく。
(ユーリスは私を探しているようだ)
それに気が付いた黄金竜の雛ウェイズリーは、少しだけ嬉しそうに黄金色の瞳を輝かせた。
あの優しい番の青年は、自分の不在を寂しく思ってくれている。
そのことが嬉しかった。自分がいなくなっても何てことはないと、無関心で何も思われないことこそ悲しいことだったからだ。いなくなったことを、少しは寂しく思ってくれている。
本当なら、今すぐにでもユーリスの胸の中に飛び込みたかった。
そして「キュウキュウ」と甘えて鳴く自分の頭を、彼の白い手で撫でてもらいたい。
でも、それは出来ない。
その切なさに、ウェイズリーは丸くなり、寂しそうに鳴いていた。
イスフェラ皇国の皇宮で、ノウザン公の消滅を知った筆頭魔術師イーサン=クレイラは嬉しい驚きを覚えた。
まさか、こんなに早くユーリスのそばにいる者が、ノウザン公を始末するとは思わなかった。
圧倒的ではないか。
ただ、ノウザン公は、サトー王国のサトウについている三公の中で最も弱い、最弱の存在であった。だから真っ先に命を落としてもおかしくはない。それでも、早い。早すぎるくらいの始末のスピードだった。
うまくやれば、更に残りの二公を削ることが出来るかも知れない。
ただもう、残りの二公もこの異変を知っていることだろう。
そうとなれば、自分が手を出す必要はなく、二公とアレが勝手にぶつかり合い、削り合ってくれるかもしれない。自分はただそれを見守っているだけで良いのだ。
それから金色の芽はこちらの世界から、あちらの世界へ渡った。
驚いたのは渦から現れようとしていた存在である。
その存在は、本来、人の界へ渡ることなど直接することのない魔のやんごとなき方、ノウザン公その者だった。自身の部下が怪死したことに、ユーリスへの興味を持ち、公自らがユーリスの姿を見ようとしたところ、この事態である。ノウザン公は牛頭に人の上半身、蛇の下半身を持つ。その異形は、再び魔の領域に押し返された。そして次の瞬間、ブワリと金色の芽が彼を押し包んで始末しようとした。
慌てた公は、空を飛び、凄まじい勢いで飛んで逃げようとする。
その後を、金色の芽もスピードを上げて追い駆けていく。
ノウザン公は慌てた。
アレは一体なんだと思い、自身の配下達を呼びよせて、その金色の芽を足止めさせているのだが、現れた先から配下達は金色の芽によっていとも容易く五体を切り落とされている。バターか何かのようにスパスパと切り落とされては、地面にボタボタと配下達の命を無くした体が落ちていく光景を見て、ようやく、そう、今になって自分の命も危ないことをノウザン公は理解した。
ノウザン公は、魔の領域の空を飛びながら、何度もその強大な魔法の力で、その金色の芽を蹴散らそうとしたが、その金色の芽を倒すことは出来なかった。魔法の技を何度受けても、その金色の芽が消滅することはない。むしろ、更にスピードを上げて追いついてこようとする。
ノウザン公は焦った。
魔の領域の、やんごとなき方として、魔族達の崇敬を集めるこの自分を、こうまで追いかけ、その命を摘み取ろうとする者は、これまで存在していなかった。
一体アレはなんなんだ。
必死に空を駆けるノウザン公の後ろから、金色の芽はザワザワと大きく広がる。網のように広がったそれが、とうとうノウザン公に追いついた次の瞬間、その金色の芽はノウザン公の異形の姿をパクリと包み込んだ。
それだけだった。
それだけで、ノウザン公という存在は消滅した。
ユーリス達が昼食を取っていた店の屋根の上で、小さな黄金竜の雛は「キュルルルゥ」と鳴く。
あちらの世界へ渡った金色の芽は、こちらの世界へ戻って来る。
そしてまたユーリスのそばで沈み込み、彼を守り続ける。
ユーリスとイルム、パオとラオの四人は、そのまま食事を続ける気も無くなったようで、店を出てクランに帰る道を戻り始めた。
その時ユーリスは、周囲を見回し、何かを探すように青い目を彷徨わせた。
目的のものが見つからないと分かると、彼は残念そうにため息をついて、イルム達と歩いていく。
(ユーリスは私を探しているようだ)
それに気が付いた黄金竜の雛ウェイズリーは、少しだけ嬉しそうに黄金色の瞳を輝かせた。
あの優しい番の青年は、自分の不在を寂しく思ってくれている。
そのことが嬉しかった。自分がいなくなっても何てことはないと、無関心で何も思われないことこそ悲しいことだったからだ。いなくなったことを、少しは寂しく思ってくれている。
本当なら、今すぐにでもユーリスの胸の中に飛び込みたかった。
そして「キュウキュウ」と甘えて鳴く自分の頭を、彼の白い手で撫でてもらいたい。
でも、それは出来ない。
その切なさに、ウェイズリーは丸くなり、寂しそうに鳴いていた。
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まさか、こんなに早くユーリスのそばにいる者が、ノウザン公を始末するとは思わなかった。
圧倒的ではないか。
ただ、ノウザン公は、サトー王国のサトウについている三公の中で最も弱い、最弱の存在であった。だから真っ先に命を落としてもおかしくはない。それでも、早い。早すぎるくらいの始末のスピードだった。
うまくやれば、更に残りの二公を削ることが出来るかも知れない。
ただもう、残りの二公もこの異変を知っていることだろう。
そうとなれば、自分が手を出す必要はなく、二公とアレが勝手にぶつかり合い、削り合ってくれるかもしれない。自分はただそれを見守っているだけで良いのだ。
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