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外伝 護衛の独り言 ~指輪の見せる夢
第五話 一日目の晩(下)
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唇を軽く重ねた後、ジャクセン様は伯爵の唇から自身の唇を離した。
指輪の効力は効いているのかと、問うような視線を向けると、レイノール伯爵は頬を赤く染め身を軽く震わせ、ため息のような声を漏らしていた。
そう、それは喜びの。
きっとレイノール伯爵の前には、伯爵の求める、彼だけの夢のジャクセン様の御姿が現れているのだろう。伯爵のそばにダフネ夫人が駆け寄る。そして伯爵と夫人は抱きしめ合い、熱心に口づけを始めた。
内心、私は呆れていた。
ジャクセン様は伯爵と触れた唇を自身の指で拭い、私のそばまでやって来た。
事前に聞いていた話だと、行為が終わるまで、少なくとも半刻ほどの間、この部屋の中に留まらないとならない。
指輪の相手がある程度近い距離にいなければ、指輪のもたらす夢は解けてしまうらしい。
だからジャクセン様は私の隣に立ち、どこか不快そうに小さくため息をついていた。
もう一つ聞いていたことは、指輪をはめているジャクセン様は、レイノール伯爵が見ている夢と共調しているということ。
レイノール伯爵が夢の中でジャクセン様を求めている様子を、ジャクセン様は見せつけられている。
夢とはいえ、他人が自分を抱いている姿を見続けるのである。
なかなか精神にくるものがあろう。
ジャクセン様は壁に背を寄り掛からせ、目を瞑り腕を組んでじっとしていた。
部屋の中央にある寝台の上では、欲情したレイノール伯爵に、ダフネ伯爵夫人が裸でのしかかり、彼を求めていた。今の今まで“白の結婚”をしていた処女であったはずの夫人である。しかし、目の前の若い女の姿はそう見えなかった。寝台の上で二人、まるで蛇のように身を絡ませ求め合っているその姿には、生々しさがあった。
私は時折、私の隣に立つジャクセン様に視線をやった。彼は目を伏せたままピクとも動かなかった。
一晩目が終わった。
ジャクセン様は、半刻という時間が過ぎると、静かに、だが即座に部屋から退室していた。
指輪の効力は効いているのかと、問うような視線を向けると、レイノール伯爵は頬を赤く染め身を軽く震わせ、ため息のような声を漏らしていた。
そう、それは喜びの。
きっとレイノール伯爵の前には、伯爵の求める、彼だけの夢のジャクセン様の御姿が現れているのだろう。伯爵のそばにダフネ夫人が駆け寄る。そして伯爵と夫人は抱きしめ合い、熱心に口づけを始めた。
内心、私は呆れていた。
ジャクセン様は伯爵と触れた唇を自身の指で拭い、私のそばまでやって来た。
事前に聞いていた話だと、行為が終わるまで、少なくとも半刻ほどの間、この部屋の中に留まらないとならない。
指輪の相手がある程度近い距離にいなければ、指輪のもたらす夢は解けてしまうらしい。
だからジャクセン様は私の隣に立ち、どこか不快そうに小さくため息をついていた。
もう一つ聞いていたことは、指輪をはめているジャクセン様は、レイノール伯爵が見ている夢と共調しているということ。
レイノール伯爵が夢の中でジャクセン様を求めている様子を、ジャクセン様は見せつけられている。
夢とはいえ、他人が自分を抱いている姿を見続けるのである。
なかなか精神にくるものがあろう。
ジャクセン様は壁に背を寄り掛からせ、目を瞑り腕を組んでじっとしていた。
部屋の中央にある寝台の上では、欲情したレイノール伯爵に、ダフネ伯爵夫人が裸でのしかかり、彼を求めていた。今の今まで“白の結婚”をしていた処女であったはずの夫人である。しかし、目の前の若い女の姿はそう見えなかった。寝台の上で二人、まるで蛇のように身を絡ませ求め合っているその姿には、生々しさがあった。
私は時折、私の隣に立つジャクセン様に視線をやった。彼は目を伏せたままピクとも動かなかった。
一晩目が終わった。
ジャクセン様は、半刻という時間が過ぎると、静かに、だが即座に部屋から退室していた。
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