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第十六章 心地良い場所
第十六話 捕獲作戦(上)
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王宮の出没した銀色のスライムに対する対策を練る会議の冒頭、王宮副魔術師長が口ごもりながらこう切り出した。
「十日ほど前から、王宮魔術師長が行方不明になっております」
その言葉に、王宮副魔術師長の隣に座る近衛騎士団長は腕を組んで渋い顔をしていた。
実際、戦勝会では王宮魔術師長の姿を見ることはなかった。
その前から、王宮魔術師長の姿が見えないと王宮内では密かに話題になっており、王宮魔術師長の王都内の屋敷や、王宮内で与えられている部屋に人が遣わされて、王宮魔術師長の行方が探されていたが、見つかっていない。そろそろ後任を据えなければならないという話も出ていた中で、銀色のスライムが出現した。
王宮副魔術師長の言葉に、ウラノス騎兵団長とアルバート王子は同時に(銀色のスライムにやられてしまった可能性があるな)と思っていた。
当然、王宮魔術師長は、人よりも遥かに多い魔力持ちであった。
銀色のスライムから狙われてもおかしくはない。
王宮副魔術師長は非常に言いにくそうに言葉を続けた。
「王宮魔術師長は、……………………たびたび、罪を犯した魔術師を部屋に連れていって、何らかの実験をしておりました」
「実験とはなんだ」
近衛騎士団長の不満そうな声が飛ぶ。
「私どもにも見せて頂くことは出来ませんでしたが、どうやら魔術師から魔力を抜き出していたという話です。部屋から出された魔術師に話を聞いたところ、王宮魔術師長の部屋には銀色のスライムがいたと」
同席していた者達全員がほぼ同時に深いため息をついた。
今の話から、銀色スライムで実験をし、ある意味銀色スライムを育てていたのは王宮魔術師長で決定だろう。
そして彼は、何らかの出来事があって行方不明になっている。
部屋の中の者達は、王宮魔術師長がおそらく、銀色スライムに“処理”されてしまったのだろうと考えていた。
「王宮魔術師長については、また改めて陛下にご報告の上でご意見をお伺いする。今は、銀色スライムの捕獲を検討せねばなるまい」
近衛騎士団長の言葉に、ウラノス騎兵団長も頷いた。
「銀色のスライムは、魔力に惹かれる性質があるようだ。先日の戦勝会でもその傾向が見えた」
「ああ」
近衛騎士団長はチラリと、ウラノス騎兵団長の隣に座るアルバート王子に目を遣った。
大広間で、銀色のスライムは真っ直ぐにアルバート王子の方へ進んでいった。
アルバート王子の肩に留まる小さな紫色の竜を目掛けて。
「そのため、紫竜ルーシェに囮になってもらうつもりだ」
ウラノス騎兵団長はそう言った。
騎兵団長は事前にアルバート王子に話をつけていた。
銀色のスライムを捕まえるためには、魔力の豊富な紫竜を囮にしておびき寄せるしかないと。
そのことはアルバート王子も考えていたことだった。
最愛の竜を囮にすることには、王子から渋られると思っていたが、アルバート王子はすんなりと提案を受け入れてくれた。そうしなければ、銀色のスライムが捕まえられないだろうと考えていたし、同時に、自分が絶対に紫竜には手出しさせないと決めていた。
「紫竜ルーシェに王宮の森にいてもらい、そこに銀色のスライムをおびき寄せる」
王宮内で捕獲するとなれば、また王宮を破壊してしまうだろう。
なにせ、銀色のスライムは体内のコアが見えないために、火魔法を使ってその身を焼き尽くすしかないのだ。先日の戦勝会の際には、大広間の立派な絨毯を燃やしてしまい、侍従長を涙に暮れさせた記憶も生々しい。王宮内で捕獲は無理だということが、部屋の中にいる者達全員の思いだった。
「良い作戦だと思います」
近衛騎士団長、王宮副魔術師長は頷く。
王宮内の森ならば、例え一角を破壊したとしても、また植栽すれば良いことだった。
思う存分火魔法が使えるだろう。
こうして、国王陛下に作戦内容が説明され、裁可を受けた後、銀色スライムの捕獲作戦が決行されることになったのであった。
「十日ほど前から、王宮魔術師長が行方不明になっております」
その言葉に、王宮副魔術師長の隣に座る近衛騎士団長は腕を組んで渋い顔をしていた。
実際、戦勝会では王宮魔術師長の姿を見ることはなかった。
その前から、王宮魔術師長の姿が見えないと王宮内では密かに話題になっており、王宮魔術師長の王都内の屋敷や、王宮内で与えられている部屋に人が遣わされて、王宮魔術師長の行方が探されていたが、見つかっていない。そろそろ後任を据えなければならないという話も出ていた中で、銀色のスライムが出現した。
王宮副魔術師長の言葉に、ウラノス騎兵団長とアルバート王子は同時に(銀色のスライムにやられてしまった可能性があるな)と思っていた。
当然、王宮魔術師長は、人よりも遥かに多い魔力持ちであった。
銀色のスライムから狙われてもおかしくはない。
王宮副魔術師長は非常に言いにくそうに言葉を続けた。
「王宮魔術師長は、……………………たびたび、罪を犯した魔術師を部屋に連れていって、何らかの実験をしておりました」
「実験とはなんだ」
近衛騎士団長の不満そうな声が飛ぶ。
「私どもにも見せて頂くことは出来ませんでしたが、どうやら魔術師から魔力を抜き出していたという話です。部屋から出された魔術師に話を聞いたところ、王宮魔術師長の部屋には銀色のスライムがいたと」
同席していた者達全員がほぼ同時に深いため息をついた。
今の話から、銀色スライムで実験をし、ある意味銀色スライムを育てていたのは王宮魔術師長で決定だろう。
そして彼は、何らかの出来事があって行方不明になっている。
部屋の中の者達は、王宮魔術師長がおそらく、銀色スライムに“処理”されてしまったのだろうと考えていた。
「王宮魔術師長については、また改めて陛下にご報告の上でご意見をお伺いする。今は、銀色スライムの捕獲を検討せねばなるまい」
近衛騎士団長の言葉に、ウラノス騎兵団長も頷いた。
「銀色のスライムは、魔力に惹かれる性質があるようだ。先日の戦勝会でもその傾向が見えた」
「ああ」
近衛騎士団長はチラリと、ウラノス騎兵団長の隣に座るアルバート王子に目を遣った。
大広間で、銀色のスライムは真っ直ぐにアルバート王子の方へ進んでいった。
アルバート王子の肩に留まる小さな紫色の竜を目掛けて。
「そのため、紫竜ルーシェに囮になってもらうつもりだ」
ウラノス騎兵団長はそう言った。
騎兵団長は事前にアルバート王子に話をつけていた。
銀色のスライムを捕まえるためには、魔力の豊富な紫竜を囮にしておびき寄せるしかないと。
そのことはアルバート王子も考えていたことだった。
最愛の竜を囮にすることには、王子から渋られると思っていたが、アルバート王子はすんなりと提案を受け入れてくれた。そうしなければ、銀色のスライムが捕まえられないだろうと考えていたし、同時に、自分が絶対に紫竜には手出しさせないと決めていた。
「紫竜ルーシェに王宮の森にいてもらい、そこに銀色のスライムをおびき寄せる」
王宮内で捕獲するとなれば、また王宮を破壊してしまうだろう。
なにせ、銀色のスライムは体内のコアが見えないために、火魔法を使ってその身を焼き尽くすしかないのだ。先日の戦勝会の際には、大広間の立派な絨毯を燃やしてしまい、侍従長を涙に暮れさせた記憶も生々しい。王宮内で捕獲は無理だということが、部屋の中にいる者達全員の思いだった。
「良い作戦だと思います」
近衛騎士団長、王宮副魔術師長は頷く。
王宮内の森ならば、例え一角を破壊したとしても、また植栽すれば良いことだった。
思う存分火魔法が使えるだろう。
こうして、国王陛下に作戦内容が説明され、裁可を受けた後、銀色スライムの捕獲作戦が決行されることになったのであった。
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