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第十五章 この世界で君と共に
第二十三話 帰国へ
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ハルヴェラ王国での戦勝会が終わり、いよいよラウデシア王国へ戻ることになった。
それに際して、今更ながらルーシェはハッと気が付いた。
「お、俺、今戻ると一番上の兄王子にとっ捕まるんじゃないの!?」
(気付くのが遅すぎる)
アルバート王子とエイベル副竜騎兵団長の感想である。
「ねぇ、ウラノス騎兵団長も言っていたじゃん。ほとぼりが冷めるまでこっちにいていいって。もう少しいようよ!! ねぇ、王子」
幼い子供姿のルーシェがアルバート王子の足にしがみつき、涙目で上目遣いで見つめてくる。
つい「いいぞ。お前の望むままずっとこの国にいよう」と言いそうになる可愛さである。
しかし、アルバート王子はグッとその感情に耐えた。
「ルー。エイベル副騎兵団長にはすでにご相談していたのだが、私は自分が“勇者”であることを公表しようと思う」
「!?」
ルーシェの黒い目が見開かれる。
「だって、そんなことしたら」
(サトー王国のサトーがやってきて、王子が殺される!!)
と思ったのだが、考えてみれば、サトー王国のサトー国王はそのアルバート王子が討ち取っているのである。殺されることはない。
「え、でもどうして」
「私がサトーを討ち取った“勇者”である方が何かと都合が良いのだ」
足にしがみついていた幼児姿のルーシェを抱き上げて、そのふくふくとした頬に口づける。
「どうして?」
「箔がつく」
「そうすると、俺が一番上の王子に捕まらない?」
「もしそうされたなら、お前を連れて、ハルヴェラ王国に亡命する。その話は事前にウラノス騎兵団長から、ラウデシア王国内で広めておいてもらっている」
「!?」
このことは、自分の兄王子シルヴェスターの行動をならってのことだった。
新王国ゴルティニアで活躍を続けるシルヴェスター王子は、ユーリスと並び立つため、戦場に飛び込んだ。いつか自分が認められるようにと。あの兄王子はその後、どうしているのだろうかと考えることもあった。
「殿下はサトー国王をその手で討った“勇者”です。殿下がハルヴェラ王国に亡命するなど、それも次期国王と称される第一王子の浮ついた心によるものなど、許されるはずがありません」
エイベル副騎兵団長はそう断じた。
そしてウラノス騎兵団長は、アルバート王子がいかに勇敢にサトー国王をその手で討ったのか、広くその話を国民の間に伝えるようにしていた。
「じゃあ、王子と一緒に国へ戻れるんだね!!」
「そうだ、ルーシェ。胸を張って戻れるぞ」
「やった」とばかりにルーシェは王子にしがみつき、今度は王子の頬にチュッと口づけをしたのだった。
実際、アルバート王子とルーシェが、ラウデシア王国に向けて出立する時には、ハルヴェラ王国王太子妃リンから「もう、ずっとこの国にいてくれてもいいのに!!!!」と本気の声で言われ、別れを惜しまれた。
更にはカルフィー魔道具店の三橋友親からも「ラウデシア王国が嫌になったら、うちの魔道具店に来てもいいぞ」と言われる。リン王太子妃が「なんで魔道具店が王子達を引き取るというのよ!!」と言うと「うちの魔道具店は金だけは唸るようにあるんだから。ルーシェ達を匿うくらい屁の河童だ」と訳の分からない論理を展開していた。
ともあれ、仲の良い友人達と別れ、そして再会を約束して、紫色の美しい竜は愛しい王子を背に乗せて、北の国ラウデシア王国へと旅立ったのだった。
それに際して、今更ながらルーシェはハッと気が付いた。
「お、俺、今戻ると一番上の兄王子にとっ捕まるんじゃないの!?」
(気付くのが遅すぎる)
アルバート王子とエイベル副竜騎兵団長の感想である。
「ねぇ、ウラノス騎兵団長も言っていたじゃん。ほとぼりが冷めるまでこっちにいていいって。もう少しいようよ!! ねぇ、王子」
幼い子供姿のルーシェがアルバート王子の足にしがみつき、涙目で上目遣いで見つめてくる。
つい「いいぞ。お前の望むままずっとこの国にいよう」と言いそうになる可愛さである。
しかし、アルバート王子はグッとその感情に耐えた。
「ルー。エイベル副騎兵団長にはすでにご相談していたのだが、私は自分が“勇者”であることを公表しようと思う」
「!?」
ルーシェの黒い目が見開かれる。
「だって、そんなことしたら」
(サトー王国のサトーがやってきて、王子が殺される!!)
と思ったのだが、考えてみれば、サトー王国のサトー国王はそのアルバート王子が討ち取っているのである。殺されることはない。
「え、でもどうして」
「私がサトーを討ち取った“勇者”である方が何かと都合が良いのだ」
足にしがみついていた幼児姿のルーシェを抱き上げて、そのふくふくとした頬に口づける。
「どうして?」
「箔がつく」
「そうすると、俺が一番上の王子に捕まらない?」
「もしそうされたなら、お前を連れて、ハルヴェラ王国に亡命する。その話は事前にウラノス騎兵団長から、ラウデシア王国内で広めておいてもらっている」
「!?」
このことは、自分の兄王子シルヴェスターの行動をならってのことだった。
新王国ゴルティニアで活躍を続けるシルヴェスター王子は、ユーリスと並び立つため、戦場に飛び込んだ。いつか自分が認められるようにと。あの兄王子はその後、どうしているのだろうかと考えることもあった。
「殿下はサトー国王をその手で討った“勇者”です。殿下がハルヴェラ王国に亡命するなど、それも次期国王と称される第一王子の浮ついた心によるものなど、許されるはずがありません」
エイベル副騎兵団長はそう断じた。
そしてウラノス騎兵団長は、アルバート王子がいかに勇敢にサトー国王をその手で討ったのか、広くその話を国民の間に伝えるようにしていた。
「じゃあ、王子と一緒に国へ戻れるんだね!!」
「そうだ、ルーシェ。胸を張って戻れるぞ」
「やった」とばかりにルーシェは王子にしがみつき、今度は王子の頬にチュッと口づけをしたのだった。
実際、アルバート王子とルーシェが、ラウデシア王国に向けて出立する時には、ハルヴェラ王国王太子妃リンから「もう、ずっとこの国にいてくれてもいいのに!!!!」と本気の声で言われ、別れを惜しまれた。
更にはカルフィー魔道具店の三橋友親からも「ラウデシア王国が嫌になったら、うちの魔道具店に来てもいいぞ」と言われる。リン王太子妃が「なんで魔道具店が王子達を引き取るというのよ!!」と言うと「うちの魔道具店は金だけは唸るようにあるんだから。ルーシェ達を匿うくらい屁の河童だ」と訳の分からない論理を展開していた。
ともあれ、仲の良い友人達と別れ、そして再会を約束して、紫色の美しい竜は愛しい王子を背に乗せて、北の国ラウデシア王国へと旅立ったのだった。
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