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第十五章 この世界で君と共に
第二十一話 この世界で君と共に(上)
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サトー王国のサトー国王が倒された。
その首がアレドリア王国内で晒された後、死体はイスフェラ皇国が引き取ると述べた。弔うためではなく、その死体をサトー王国の残党が手にして、またそれを旗印に決起され、騒ぎを起こされることを恐れてのことだった。だから、引き取った後のサトー国王の死体の行方は明らかにされていない。
死んだ後の死体の処理まで、頭を悩まさなければならないとは。死んだ後まで大変な野郎だったと、三橋友親は呟いていた。
佐藤優斗を倒した後、アルバート王子とルーシェ、エイベル副騎兵団長、そして三橋友親とカルフィー魔術師達は、ハルヴェラ王国の王宮に招かれ、その後は戦勝会へと雪崩こむ。現金なことに、体調を崩して寝込んでいたハルヴェラ国王も、元気を取り戻し、サトーを倒した竜騎兵達を祝福した。
そしてサトー王国の“星弾”から見事国を守ったリン王太子妃以下の王宮魔術師達も、国を挙げて称賛される。
何より、最後のトドメを刺したというアルバート王子は、英雄扱いになっていた。
王や重臣達から「このままハルヴェラ王国にいて下さっても構わないのですよ」と口々に言われ、エイベル副騎兵団長以下の竜騎兵達がジロリとそう口にする者達を睨みつける光景が見られた。
勿論、アルバート王子やルーシェも、この戦勝会が終われば、母国ラウデシア王国へ戻るつもりだった。
アルバート王子と竜騎兵達が、サトー王国のサトーを倒すことにかかり切りであった頃、他の国では様々な動きが起きていた。
新王国ゴルティニアは、ハルヴェラ王国から「サトー王国の“星弾”アレドリアから飛翔して来たれり」の一報があった後、すぐさま小さな黄金竜の雛が魔の領域に飛び込み、ハルヴェラ王国に侵攻しようとしていた魔の者達を蹴散らしたという。そのせいで、ハルヴェラ王国には一人の魔族も侵入してこなかったという。散々小さな黄金竜の雛が、魔の者達を蹴散らし、追いかけ回したせいで、魔の者達はこちらの世界に侵攻してくる気が、当面の間は無くなったようですと、イーサン=クレイラが静かに話してくれた。
二撃目以降はイーサン=クレイラが撃ち落としてくれるという話ではあったが(実際、二撃目はイーサン=クレイラが撃ち落としてくれた)、リン王太子妃と王宮魔術師達は三撃目がいつ飛んできても対応出来るように空を睨みつけて待ち構えていたという。そしていつまで経っても三撃目がとんでこないため、ずっと空を王宮の物見櫓の上から見つめ続けていたらしい(そのせいで皆、首が痛くなったと零していた)。
イーサン=クレイラは、サトー国王のそばを離れたヴィータ公とやり合っていた。本当なら、サトー国王を倒しに自分も加勢しに行くつもりであったのに、結局行けずに申し訳ないと頭を下げられた。
母国ラウデシア王国の竜騎兵達は、ハルヴェラ王国から「サトー王国の“星弾”アレドリアから飛翔して来たれり」の一報があった後、空に飛び立ち、サトー王国軍の支配下にある隣国の旧ザナルカンド王国を強襲。たちまち攻め落とす。そしてそのままサトー王国軍の支配下にあった旧バーズワース王国まで制圧したという話であった。ラウデシア王国の国境を、ウラノス騎兵団長ら竜騎兵達は、歴史上、初めて大きく越境して他国領土の奥まで攻め込んだ。対サトー同盟加盟後、ラウデシア王国は国是としていた“専守防衛”を初めて破ることになったが、それは侵略ではなく解放という建前であった。
サトー王国軍は散り散りに逃げ惑い、投降した兵士達も多かった。やがてサトー国王が討たれたという話が広がると、投降する兵士達の数が増大していったという。
旧ザナルカンド王国も、旧バーズワース王国も、王族や有力な貴族達のそのことごとくが処刑されている。そのため、これらの国の管理を今後どうしていくのか、簡単に国を落とすことは出来たが、その後のことを考えるとウラノス騎兵団長は頭が痛い様子であった。
戦勝会の後、ハルヴェラ王国の立派な客室へ案内されたアルバート王子と小さな竜のルーシェ。
部屋から侍従が一礼して立ち去った後、小さな竜姿をとっていたルーシェは、たちまち人の姿に変わって、アルバート王子を寝台に押し倒した。そして彼の身体の上に馬乗りになったかと思うと、その紫色の頭をぐりぐりと王子の胸に押し付けて言った。
「王子、王子、やったね!! 王子、これで国に帰れるね」
「ああ」
「やっぱり俺の王子は最高に強い。勇者だもんな!!」
「ああ」
アルバート王子は自分の胸元にあるルーシェの紫色の髪をそっと撫でた。
サラリと揺られる綺麗な髪に、王子の鳶色の瞳が細められる。
彼がルーシェの頬に手をやったところで、ルーシェの方から王子の唇に自分の唇を押し付けるようにして口づけた。
「……お前に言わなければならないことがある」
何故か、アルバート王子が緊張したような面持ちでルーシェを見つめて言った。
それにルーシェは不思議そうな表情で王子を見つめ、首を傾げた。
「どうかしたの」
「私は、サトー王国のサトーを倒した。神の試練を乗り越えた」
「うん」
「神が私の望みを叶えると言っている。ルー、お前は……」
アルバート王子の鳶色の瞳がルーシェを見つめたまま聞いてきた。
「お前は元の世界に戻りたい気持ちはあるのか?」
その首がアレドリア王国内で晒された後、死体はイスフェラ皇国が引き取ると述べた。弔うためではなく、その死体をサトー王国の残党が手にして、またそれを旗印に決起され、騒ぎを起こされることを恐れてのことだった。だから、引き取った後のサトー国王の死体の行方は明らかにされていない。
死んだ後の死体の処理まで、頭を悩まさなければならないとは。死んだ後まで大変な野郎だったと、三橋友親は呟いていた。
佐藤優斗を倒した後、アルバート王子とルーシェ、エイベル副騎兵団長、そして三橋友親とカルフィー魔術師達は、ハルヴェラ王国の王宮に招かれ、その後は戦勝会へと雪崩こむ。現金なことに、体調を崩して寝込んでいたハルヴェラ国王も、元気を取り戻し、サトーを倒した竜騎兵達を祝福した。
そしてサトー王国の“星弾”から見事国を守ったリン王太子妃以下の王宮魔術師達も、国を挙げて称賛される。
何より、最後のトドメを刺したというアルバート王子は、英雄扱いになっていた。
王や重臣達から「このままハルヴェラ王国にいて下さっても構わないのですよ」と口々に言われ、エイベル副騎兵団長以下の竜騎兵達がジロリとそう口にする者達を睨みつける光景が見られた。
勿論、アルバート王子やルーシェも、この戦勝会が終われば、母国ラウデシア王国へ戻るつもりだった。
アルバート王子と竜騎兵達が、サトー王国のサトーを倒すことにかかり切りであった頃、他の国では様々な動きが起きていた。
新王国ゴルティニアは、ハルヴェラ王国から「サトー王国の“星弾”アレドリアから飛翔して来たれり」の一報があった後、すぐさま小さな黄金竜の雛が魔の領域に飛び込み、ハルヴェラ王国に侵攻しようとしていた魔の者達を蹴散らしたという。そのせいで、ハルヴェラ王国には一人の魔族も侵入してこなかったという。散々小さな黄金竜の雛が、魔の者達を蹴散らし、追いかけ回したせいで、魔の者達はこちらの世界に侵攻してくる気が、当面の間は無くなったようですと、イーサン=クレイラが静かに話してくれた。
二撃目以降はイーサン=クレイラが撃ち落としてくれるという話ではあったが(実際、二撃目はイーサン=クレイラが撃ち落としてくれた)、リン王太子妃と王宮魔術師達は三撃目がいつ飛んできても対応出来るように空を睨みつけて待ち構えていたという。そしていつまで経っても三撃目がとんでこないため、ずっと空を王宮の物見櫓の上から見つめ続けていたらしい(そのせいで皆、首が痛くなったと零していた)。
イーサン=クレイラは、サトー国王のそばを離れたヴィータ公とやり合っていた。本当なら、サトー国王を倒しに自分も加勢しに行くつもりであったのに、結局行けずに申し訳ないと頭を下げられた。
母国ラウデシア王国の竜騎兵達は、ハルヴェラ王国から「サトー王国の“星弾”アレドリアから飛翔して来たれり」の一報があった後、空に飛び立ち、サトー王国軍の支配下にある隣国の旧ザナルカンド王国を強襲。たちまち攻め落とす。そしてそのままサトー王国軍の支配下にあった旧バーズワース王国まで制圧したという話であった。ラウデシア王国の国境を、ウラノス騎兵団長ら竜騎兵達は、歴史上、初めて大きく越境して他国領土の奥まで攻め込んだ。対サトー同盟加盟後、ラウデシア王国は国是としていた“専守防衛”を初めて破ることになったが、それは侵略ではなく解放という建前であった。
サトー王国軍は散り散りに逃げ惑い、投降した兵士達も多かった。やがてサトー国王が討たれたという話が広がると、投降する兵士達の数が増大していったという。
旧ザナルカンド王国も、旧バーズワース王国も、王族や有力な貴族達のそのことごとくが処刑されている。そのため、これらの国の管理を今後どうしていくのか、簡単に国を落とすことは出来たが、その後のことを考えるとウラノス騎兵団長は頭が痛い様子であった。
戦勝会の後、ハルヴェラ王国の立派な客室へ案内されたアルバート王子と小さな竜のルーシェ。
部屋から侍従が一礼して立ち去った後、小さな竜姿をとっていたルーシェは、たちまち人の姿に変わって、アルバート王子を寝台に押し倒した。そして彼の身体の上に馬乗りになったかと思うと、その紫色の頭をぐりぐりと王子の胸に押し付けて言った。
「王子、王子、やったね!! 王子、これで国に帰れるね」
「ああ」
「やっぱり俺の王子は最高に強い。勇者だもんな!!」
「ああ」
アルバート王子は自分の胸元にあるルーシェの紫色の髪をそっと撫でた。
サラリと揺られる綺麗な髪に、王子の鳶色の瞳が細められる。
彼がルーシェの頬に手をやったところで、ルーシェの方から王子の唇に自分の唇を押し付けるようにして口づけた。
「……お前に言わなければならないことがある」
何故か、アルバート王子が緊張したような面持ちでルーシェを見つめて言った。
それにルーシェは不思議そうな表情で王子を見つめ、首を傾げた。
「どうかしたの」
「私は、サトー王国のサトーを倒した。神の試練を乗り越えた」
「うん」
「神が私の望みを叶えると言っている。ルー、お前は……」
アルバート王子の鳶色の瞳がルーシェを見つめたまま聞いてきた。
「お前は元の世界に戻りたい気持ちはあるのか?」
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