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第十章 亡国の姫君
第二十三話 筆頭魔術師の招き(下)
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魔術師イーサン=クレイラは、十年ほど前、突如としてイスフェラ皇国の皇宮に現れた。
そしてすぐさま皇帝ミラバス=カーンにその実力を認められ、筆頭魔術師として取り立てられる。
彼のあまりにもスムーズな出世ぶりに、皇帝自身が、魔術師イーサンを“召喚”したのではないかという噂がある。
そしてイーサンに会った者達はすぐに理解しただろう。
イーサンはただの人ではなかった。
彼は、魔を帯びし存在だった。
この西方諸国では、魔を帯びし存在はありふれているし、あちら側の存在を“召喚”しようとする動きも昔からあった。遠い異世界から“召喚”するよりも、西側の領域と入り混じっている魔の領域からの“召喚”は、必要とされる魔力の量も抑えられる(異世界からの“召喚”は桁違いの膨大な魔力が必要であった)。
皇帝に仕える魔術師イーサンは、素晴らしい働きを見せた。
サトー王国の“星弾”の攻撃も、彼の手にかかれば、全て防ぎきることが出来る。
イーサンがいる限り、皇宮は守られ、反対に攻撃に転じることが出来るようになったのだ。
イスフェラ皇国の防衛の要となる魔術師である。
アルバート王子が是が非とも彼の話を聞いてみたいと思うことも当然であった。
深夜も遅い時間となったため、話は翌日に致しましょうと言って、イーサンは召使達にアルバート王子達を眠るための客室へ案内させた。
実際、外はとっぷりと暗い。
更にイーサンは、アルバート王子に「皇宮へは使いを出しておきました。殿下方を私が歓待すると言えば、皇帝陛下は何も仰りません」と告げた。
夜、アルバート王子が勝手に紫竜に乗って皇宮を飛び出した一件の始末をしてくれると言うのだ。
有難く、王子はその申し出を受けた。
そしてイーサンや召使達が退出し、部屋に二人きりになるや、ルーシェは王子に言った。
「あいつ、変だ」
「…………ルー」
「人じゃないよね」
アルバート王子はルーシェの額を人差し指で軽く突っついた。
「お前もそうだろう」
そう言われて、ルーシェは改めて自分が人間ではなく、紫色の竜であることを思い出して、へらりと笑って、突っつかれた額を押さえた。
「そうだった!!」
その明るい答えに、アルバート王子も笑みが零れてしまう。
「この西方では、“混じり合った者”が多い」
「うん」
それを知らなかったわけではない。
以前会った、親友の三橋友親の伴侶である二人の男達も、ただの人間ではなく、彼らもまた混じり合った者達だった。
“混じり合った者”の多くが、魔の力を帯びる。人よりも高い身体能力や魔力、属性など、その突出した力でもって西方地域では成り上がっている者は多い。人ならざる者ゆえ、恐れられ、差別も同時にあったが、それをねじ伏せる力ある者達も多かった。
だから普通とは違う、魔を帯びし者であろう魔術師イーサンが、イスフェラ皇国でその力故に、皇帝から高く評価され、目を掛けられていることも、この地域では特別おかしなことではなかった。
だいたいサトー王国も、その背後には魔族もいて、サトー国王に力を貸しているという話であった。敵も味方も魔に類する者がいなければ、ただの人間だけではもはや相手にはならないということだろう。
「……ここの召使達もそうだったよね」
この屋敷に移動して来たその場で、出迎えてくれた召使達。
いずれも真っ白い肌に、釣り上がった一重の瞳、そして薄暗い闇の中、どこか赤く光る瞳を持っていた。王子達に恭しい態度を見せつつも、彼らもまた、ただの人間ではない様子だった。
「そうだな」
イーサンも、彼に仕える者達も、“魔”の匂いが強い者達である。
そんな中へ、アルバート王子とルーシェは招かれたのだ。
ルーシェは王子の背にピタリとくっついて、頬を寄せた。細い手が王子の身体に回されて抱き締められる。
「でも大丈夫だよ、王子。俺が守るから」
王子は「分かった」と言って、ルーシェのほっそりとした身体を抱き締めながら寝台の毛布の中に入って眠りについた。だが、イーサンがアルバート王子達に対して何かしようというのなら、森の中で王子とルーシェが睦み合っている時こそが攻撃の最大なチャンスであった。それをしなかったというのだから、イーサン達は王子達に危害を加えるつもりはないだろうと思う。
そのイーサン=クレイラは、アルバート王子が小さな竜を胸元に隠しつつ皇宮へやって来た時から、彼らに注目していた。この西方地域には竜は生息していない。大陸の中で竜が生息しているのは、北方のラウデシア王国だけであった。その王国の七番目の王子アルバートが竜騎兵になったことも、そして滅多に生まれない“魔術の王”の異名を持つ紫色の竜のマスターになったことも、イーサンは情報として知っていた。イーサンは、西方の国々では目にすることのない、この世界に生息する竜に興味があった。
皇帝からの歓待を受けながらも、夜に紫竜が王子を背に乗せて、皇宮から突然飛び出した様子もイーサンは眺めていた。そして彼らは森の中に降り立つと、一瞬で紫色の竜は少年の姿に化身した。
竜は人化の力を持つ者もいるとは聞いていた。だからそのことにイーサンは驚くことはなかった。驚いたのは、紫色の竜が化身したのが、アッと驚くほどの美貌の少年であったことである。そしてその少年と王子は抱き合い、熱心に口づけを交わしたかと思うと、たちまち身体を交え始めた。
正直、突然、夜の森の中で二人が激しい肉体的な一戦を始めたことには驚かされたが、イーサンは黙ってそれを邪魔することもなく静かに観察していた。紫色の髪に黒い大きな瞳の少年が、細身を大きくしならせ、甘く啼きながら王子に抱かれている様子は、なかなか目を奪うものがある。イーサンに情人がいなければ、竜の化身の少年はイーサンでさえもちょっかいを出したくなるような容貌と肢体をしていた。だが、見るからにアルバート王子と竜の化身の少年は愛し合っていた。互いを見つめ合い、一つになろうと熱心に求め合う姿は、艶めかしく美しい。
だから、王子達が今夜の宿泊地について困った様子を見せた時、声を掛けつつも思わず素直な感想を漏らしてしまった。本当に目の保養をさせてもらったと思ったのだ。竜の少年は真っ赤になって言葉を失っている様子には内心、笑ってしまったのだが。
そしてすぐさま皇帝ミラバス=カーンにその実力を認められ、筆頭魔術師として取り立てられる。
彼のあまりにもスムーズな出世ぶりに、皇帝自身が、魔術師イーサンを“召喚”したのではないかという噂がある。
そしてイーサンに会った者達はすぐに理解しただろう。
イーサンはただの人ではなかった。
彼は、魔を帯びし存在だった。
この西方諸国では、魔を帯びし存在はありふれているし、あちら側の存在を“召喚”しようとする動きも昔からあった。遠い異世界から“召喚”するよりも、西側の領域と入り混じっている魔の領域からの“召喚”は、必要とされる魔力の量も抑えられる(異世界からの“召喚”は桁違いの膨大な魔力が必要であった)。
皇帝に仕える魔術師イーサンは、素晴らしい働きを見せた。
サトー王国の“星弾”の攻撃も、彼の手にかかれば、全て防ぎきることが出来る。
イーサンがいる限り、皇宮は守られ、反対に攻撃に転じることが出来るようになったのだ。
イスフェラ皇国の防衛の要となる魔術師である。
アルバート王子が是が非とも彼の話を聞いてみたいと思うことも当然であった。
深夜も遅い時間となったため、話は翌日に致しましょうと言って、イーサンは召使達にアルバート王子達を眠るための客室へ案内させた。
実際、外はとっぷりと暗い。
更にイーサンは、アルバート王子に「皇宮へは使いを出しておきました。殿下方を私が歓待すると言えば、皇帝陛下は何も仰りません」と告げた。
夜、アルバート王子が勝手に紫竜に乗って皇宮を飛び出した一件の始末をしてくれると言うのだ。
有難く、王子はその申し出を受けた。
そしてイーサンや召使達が退出し、部屋に二人きりになるや、ルーシェは王子に言った。
「あいつ、変だ」
「…………ルー」
「人じゃないよね」
アルバート王子はルーシェの額を人差し指で軽く突っついた。
「お前もそうだろう」
そう言われて、ルーシェは改めて自分が人間ではなく、紫色の竜であることを思い出して、へらりと笑って、突っつかれた額を押さえた。
「そうだった!!」
その明るい答えに、アルバート王子も笑みが零れてしまう。
「この西方では、“混じり合った者”が多い」
「うん」
それを知らなかったわけではない。
以前会った、親友の三橋友親の伴侶である二人の男達も、ただの人間ではなく、彼らもまた混じり合った者達だった。
“混じり合った者”の多くが、魔の力を帯びる。人よりも高い身体能力や魔力、属性など、その突出した力でもって西方地域では成り上がっている者は多い。人ならざる者ゆえ、恐れられ、差別も同時にあったが、それをねじ伏せる力ある者達も多かった。
だから普通とは違う、魔を帯びし者であろう魔術師イーサンが、イスフェラ皇国でその力故に、皇帝から高く評価され、目を掛けられていることも、この地域では特別おかしなことではなかった。
だいたいサトー王国も、その背後には魔族もいて、サトー国王に力を貸しているという話であった。敵も味方も魔に類する者がいなければ、ただの人間だけではもはや相手にはならないということだろう。
「……ここの召使達もそうだったよね」
この屋敷に移動して来たその場で、出迎えてくれた召使達。
いずれも真っ白い肌に、釣り上がった一重の瞳、そして薄暗い闇の中、どこか赤く光る瞳を持っていた。王子達に恭しい態度を見せつつも、彼らもまた、ただの人間ではない様子だった。
「そうだな」
イーサンも、彼に仕える者達も、“魔”の匂いが強い者達である。
そんな中へ、アルバート王子とルーシェは招かれたのだ。
ルーシェは王子の背にピタリとくっついて、頬を寄せた。細い手が王子の身体に回されて抱き締められる。
「でも大丈夫だよ、王子。俺が守るから」
王子は「分かった」と言って、ルーシェのほっそりとした身体を抱き締めながら寝台の毛布の中に入って眠りについた。だが、イーサンがアルバート王子達に対して何かしようというのなら、森の中で王子とルーシェが睦み合っている時こそが攻撃の最大なチャンスであった。それをしなかったというのだから、イーサン達は王子達に危害を加えるつもりはないだろうと思う。
そのイーサン=クレイラは、アルバート王子が小さな竜を胸元に隠しつつ皇宮へやって来た時から、彼らに注目していた。この西方地域には竜は生息していない。大陸の中で竜が生息しているのは、北方のラウデシア王国だけであった。その王国の七番目の王子アルバートが竜騎兵になったことも、そして滅多に生まれない“魔術の王”の異名を持つ紫色の竜のマスターになったことも、イーサンは情報として知っていた。イーサンは、西方の国々では目にすることのない、この世界に生息する竜に興味があった。
皇帝からの歓待を受けながらも、夜に紫竜が王子を背に乗せて、皇宮から突然飛び出した様子もイーサンは眺めていた。そして彼らは森の中に降り立つと、一瞬で紫色の竜は少年の姿に化身した。
竜は人化の力を持つ者もいるとは聞いていた。だからそのことにイーサンは驚くことはなかった。驚いたのは、紫色の竜が化身したのが、アッと驚くほどの美貌の少年であったことである。そしてその少年と王子は抱き合い、熱心に口づけを交わしたかと思うと、たちまち身体を交え始めた。
正直、突然、夜の森の中で二人が激しい肉体的な一戦を始めたことには驚かされたが、イーサンは黙ってそれを邪魔することもなく静かに観察していた。紫色の髪に黒い大きな瞳の少年が、細身を大きくしならせ、甘く啼きながら王子に抱かれている様子は、なかなか目を奪うものがある。イーサンに情人がいなければ、竜の化身の少年はイーサンでさえもちょっかいを出したくなるような容貌と肢体をしていた。だが、見るからにアルバート王子と竜の化身の少年は愛し合っていた。互いを見つめ合い、一つになろうと熱心に求め合う姿は、艶めかしく美しい。
だから、王子達が今夜の宿泊地について困った様子を見せた時、声を掛けつつも思わず素直な感想を漏らしてしまった。本当に目の保養をさせてもらったと思ったのだ。竜の少年は真っ赤になって言葉を失っている様子には内心、笑ってしまったのだが。
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小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
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