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第五章 懐かしい友との再会
第二十二話 忠告
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紫竜の中の存在、沢谷雪也と再会できたことに目を潤ませて感動していたトモチカであったが、階下から足音が近づいてくることに気が付くと、立ち上がり、小さな竜に言った。
「……俺はここから離れないといけなくなるだろう。また連絡する。ユキ、これだけは覚えておいてくれ」
「もう行っちゃうの?」というように、小さな竜のウルウルとした黒目がちの瞳で甘えるように見上げられたトモチカは、「お前はエグイ位に可愛いなぁ……」とポツリと言う。それから慌ただしく彼は言った。
「お前、魔素が使えるんだろう?」
トモチカからふいに言われた言葉に小さな竜はビクンと身を震わせた。
アルバート王子も身構える。
魔素
空気中にあるその魔法の源は、本来、触れることの出来ないはずのものだった。
それを紫竜は触れることができる。
そしてそのことを、レネ魔術師からは、他の人間には知られないようにしなさいと注意を受けていた。
何故そのことを知っているのだと、紫竜はトモチカを見つめる。
トモチカは続けて言う。
「いいか。それが使えることは決して誰にも話すな。そもそも、お前が別の世界からの転生者だということもバレないようにしろ。分かったな。そうでなければ、お前は狩られる対象になる」
扉の外から男の声がする。トモチカの名を呼ぶ声だ。
そして荒々しく扉が叩かれる。
「開けるんだ」という声に、トモチカが「今開ける」と声をかける。
「それから……佐藤には近づくな。あいつはヤバい。分かったな」
そう言うと、トモチカは杖をつきながら扉の前に立ち、鍵を開ける。
途端に扉を開けて、トモチカの護衛の大男が部屋に入って来た。
部屋の中にいる、アルバート王子、護衛のバンナム、小さな竜の顔を順繰りにジロリと見た後、トモチカに何の異常もないことに安心したように息をついた。そしてすぐさま非難の声を上げる。
「何故、部屋から出た」
「お詫びの品を贈られたから、御礼を言いに来たんだ」
「一人で移動するな。護衛を扉の外へ出してどういうつもりだ」
トモチカは仕方ないような顔をしながら、大男の小言を聞き、それからアルバート王子と小さな竜に向かって言う。
「それでは失礼します。お品は有難く頂戴します」
そのままトモチカは部屋を去っていったのだった。
小さな竜は王子の膝の上で、彼の姿が扉の向こうに消えていくのをじっと見送っていた。
心の中で、彼に言われた言葉を反芻する。
(魔素が使えることは誰にも話すなと言われた。転生者だということもバレないようにしろと言われた)
それはやっぱり、使えるはずのない魔素を使うことができるからだろうか。
(佐藤はヤバいとか言っていた)
そこで、小さな竜は頭を傾げた。
(佐藤って誰? 俺、知らないんだけど……)
トラックに跳ねられた時、その場にいたのは、紫竜の中身である沢谷雪也、そして親友の三橋友親。
それから五、六人の生徒達が跳ねられたと思う。
佐藤という名の人間も、その生徒の一人なのだろうか。
(俺、そいつ知らんよ)
でも、トモチカは知っている。
知っていて、ヤバいと言う。
一体、佐藤という奴は何をしたんだろう。
小さな竜が首を傾げている後ろで、アルバート王子もその護衛のバンナムも、その“サトウ”という風変わりな名前に聞き覚えがあった。
それは遥か西方で、十七年前より、周辺の国々を瞬く間に併合し、大陸の統一を目指すと気勢を上げた王国の、王の名が“サトー”であった。
すでに大陸の三分の一の国々を併合した王国。
とても偶然とは思えない名前であった。
「……俺はここから離れないといけなくなるだろう。また連絡する。ユキ、これだけは覚えておいてくれ」
「もう行っちゃうの?」というように、小さな竜のウルウルとした黒目がちの瞳で甘えるように見上げられたトモチカは、「お前はエグイ位に可愛いなぁ……」とポツリと言う。それから慌ただしく彼は言った。
「お前、魔素が使えるんだろう?」
トモチカからふいに言われた言葉に小さな竜はビクンと身を震わせた。
アルバート王子も身構える。
魔素
空気中にあるその魔法の源は、本来、触れることの出来ないはずのものだった。
それを紫竜は触れることができる。
そしてそのことを、レネ魔術師からは、他の人間には知られないようにしなさいと注意を受けていた。
何故そのことを知っているのだと、紫竜はトモチカを見つめる。
トモチカは続けて言う。
「いいか。それが使えることは決して誰にも話すな。そもそも、お前が別の世界からの転生者だということもバレないようにしろ。分かったな。そうでなければ、お前は狩られる対象になる」
扉の外から男の声がする。トモチカの名を呼ぶ声だ。
そして荒々しく扉が叩かれる。
「開けるんだ」という声に、トモチカが「今開ける」と声をかける。
「それから……佐藤には近づくな。あいつはヤバい。分かったな」
そう言うと、トモチカは杖をつきながら扉の前に立ち、鍵を開ける。
途端に扉を開けて、トモチカの護衛の大男が部屋に入って来た。
部屋の中にいる、アルバート王子、護衛のバンナム、小さな竜の顔を順繰りにジロリと見た後、トモチカに何の異常もないことに安心したように息をついた。そしてすぐさま非難の声を上げる。
「何故、部屋から出た」
「お詫びの品を贈られたから、御礼を言いに来たんだ」
「一人で移動するな。護衛を扉の外へ出してどういうつもりだ」
トモチカは仕方ないような顔をしながら、大男の小言を聞き、それからアルバート王子と小さな竜に向かって言う。
「それでは失礼します。お品は有難く頂戴します」
そのままトモチカは部屋を去っていったのだった。
小さな竜は王子の膝の上で、彼の姿が扉の向こうに消えていくのをじっと見送っていた。
心の中で、彼に言われた言葉を反芻する。
(魔素が使えることは誰にも話すなと言われた。転生者だということもバレないようにしろと言われた)
それはやっぱり、使えるはずのない魔素を使うことができるからだろうか。
(佐藤はヤバいとか言っていた)
そこで、小さな竜は頭を傾げた。
(佐藤って誰? 俺、知らないんだけど……)
トラックに跳ねられた時、その場にいたのは、紫竜の中身である沢谷雪也、そして親友の三橋友親。
それから五、六人の生徒達が跳ねられたと思う。
佐藤という名の人間も、その生徒の一人なのだろうか。
(俺、そいつ知らんよ)
でも、トモチカは知っている。
知っていて、ヤバいと言う。
一体、佐藤という奴は何をしたんだろう。
小さな竜が首を傾げている後ろで、アルバート王子もその護衛のバンナムも、その“サトウ”という風変わりな名前に聞き覚えがあった。
それは遥か西方で、十七年前より、周辺の国々を瞬く間に併合し、大陸の統一を目指すと気勢を上げた王国の、王の名が“サトー”であった。
すでに大陸の三分の一の国々を併合した王国。
とても偶然とは思えない名前であった。
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