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[挿話] 前途多難な恋
第十六話 更なる六十二階層へ
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そして合流後、第三陣は小休憩を取り、第一陣から第三陣を含めて階下の六十一階層ワールドフロアの探索に乗り出した。
討伐チーム以外の調査スタッフなども含めての探索であるから、総勢二百名を超える人海戦術である。
その甲斐もあって、二時間後に六十二階層の地下扉を発見した。
ここでチームは三つに分散することになった。
小休憩しかとっていない第三陣チームは一旦六十階層に戻り、休憩スペースで十分な休憩を今一度取ることになった。
第二陣は調査チームと共に、六十一階層へ。
そして佐久間柚彦ら隊長を含む第一陣は、その下の六十二階層の扉を開けることになった。
そこで、秋元は柚彦に言った。
「六十二階層には、僕もついて行きたい」
「第三陣は休憩をとるようにという話です」
出立前の準備のため、柚彦が一人テントの中にいたところ、勝手に秋元がテントに入って来てそう言った。
「いいじゃないか。僕と君との仲なんだから」
両手を広げ、肩をすくめるポーズをとる秋元に、柚彦はため息をついた。
「ダメです」
「僕も連れていった方がいいと思うよ」
「大丈夫です。六十一階層のボスも、無事に倒せたでしょう?」
実際、余裕であった。
ドラゴンであっても、あのように焔の剣で易々とその頭を斬り落とせたのだ。
魔法使いの秋元がいなくても倒せたことに、柚彦は大きな自信を感じていた。
自分の勇者の力と、自衛隊やダン開のスタッフ達の知恵を合わせれば、やっていけるのである。
たとえそれが危険極まりない新階層であったとしても。
だが、秋元は極めて慎重だった。
「六十一階層はうまくいったけど、新階層は用心を重ねた方がいい」
「分かっています。次の階層も、ドローンを送り込んで偵察を重ねてから行くつもりです。大丈夫ですよ」
あくまでそう言う柚彦に対して、秋元は少しため息混じりだった。
「わかった。じゃあ、危なくなったら必ず、必ず撤退するんだ。わかったね」
秋元は六十階層へ戻る。休憩をとるためだ。
戻ってきた彼を見て、瓜生が「どうした、浮かない顔をしているな」と声を掛けてきた。
「子供が巣立つ親の気持ちというのは、こういう感じなのでしょうかね」
「…………お前、子供がいたのか!?」
驚く瓜生に、秋元は頷いて、テントの中一人さっさと寝袋を用意している。
寝袋に入ると、チャックをしめて、目を閉じて眠る体勢に入っている。
そうしながらも独り言めいていた。
「まぁ、親らしいことはあまりしていない気持ちもありますが」
「ヒドイ親だな……」
「それでもいらないと言われたら、やっぱり寂しいですね」
一方の第一陣のチームの調査班は、早速六十二階層の扉からドローンを進ませていた。
今度は、侵入して早々にドローンが敵に襲われることもなく、順調に偵察を進められている。
今回は、ジャングルではなく、針葉樹の森が広がっていた。
足元にはシロツメ草が群生して生えている。木々のそばにはリスや鹿といった動物がおり、ドローンに気が付いて慌てて逃げていく。
御伽めいた美しい風景だった。
「一転して、綺麗な場所になりましたね。こんな美しい場所がダンジョンの中にあるなんて」
調査担当のスタッフがそうドローンからの映像を見ながら呟く。
「そうだな。これはダンジョンの中のモンスターさえうまくさばければ、観光名所にできるんじゃないか」
「人が分け入っていない場所だからこそ、美しい気がします。観光名所化には反対ですね」
「どちらにしろ、カメラを至る場所に設置するんだ。今のような状態は維持できないさ」
スタッフ達が話し合っている場所に、佐久間リーダーが現れて、パソコンの映像を眺めて言った。
「どこかにボスがいるはずだ。それが見つけてくれ」
「「ハイ」」
慌ててスタッフ達は背筋を伸ばし、映像を、目を皿のようにして見つめる。
ドローンは一時間飛行を続けたが、滞空時間制限に引っかかりそうだったので、交代のドローンを飛ばして一機目を六十一階に帰還させる。
そして二機目のドローンが飛び続けて三十分ほど経った時、ようやくボスらしきものの姿を見つけたのだった。
「…………人間?」
それは白いロープをまとったうら若い女性のような体付きをしていた。
豊かな胸にくびれた腰、細い手足。
だが、ドローンの見つけ、鋭い黄色い瞳でそれを睨みつける。
真っ赤な唇には細かな尖った歯が生え、唇の端が切れ上がっていた。
そして何よりも特筆すべきは、長くうねるその女の髪は、青みがかった細い蛇が何百匹も生きて蠢くものだったのだ。
「蛇女だ」
スタッフ達は、明らかに人外のものであるその女を見て呟いた。
討伐チーム以外の調査スタッフなども含めての探索であるから、総勢二百名を超える人海戦術である。
その甲斐もあって、二時間後に六十二階層の地下扉を発見した。
ここでチームは三つに分散することになった。
小休憩しかとっていない第三陣チームは一旦六十階層に戻り、休憩スペースで十分な休憩を今一度取ることになった。
第二陣は調査チームと共に、六十一階層へ。
そして佐久間柚彦ら隊長を含む第一陣は、その下の六十二階層の扉を開けることになった。
そこで、秋元は柚彦に言った。
「六十二階層には、僕もついて行きたい」
「第三陣は休憩をとるようにという話です」
出立前の準備のため、柚彦が一人テントの中にいたところ、勝手に秋元がテントに入って来てそう言った。
「いいじゃないか。僕と君との仲なんだから」
両手を広げ、肩をすくめるポーズをとる秋元に、柚彦はため息をついた。
「ダメです」
「僕も連れていった方がいいと思うよ」
「大丈夫です。六十一階層のボスも、無事に倒せたでしょう?」
実際、余裕であった。
ドラゴンであっても、あのように焔の剣で易々とその頭を斬り落とせたのだ。
魔法使いの秋元がいなくても倒せたことに、柚彦は大きな自信を感じていた。
自分の勇者の力と、自衛隊やダン開のスタッフ達の知恵を合わせれば、やっていけるのである。
たとえそれが危険極まりない新階層であったとしても。
だが、秋元は極めて慎重だった。
「六十一階層はうまくいったけど、新階層は用心を重ねた方がいい」
「分かっています。次の階層も、ドローンを送り込んで偵察を重ねてから行くつもりです。大丈夫ですよ」
あくまでそう言う柚彦に対して、秋元は少しため息混じりだった。
「わかった。じゃあ、危なくなったら必ず、必ず撤退するんだ。わかったね」
秋元は六十階層へ戻る。休憩をとるためだ。
戻ってきた彼を見て、瓜生が「どうした、浮かない顔をしているな」と声を掛けてきた。
「子供が巣立つ親の気持ちというのは、こういう感じなのでしょうかね」
「…………お前、子供がいたのか!?」
驚く瓜生に、秋元は頷いて、テントの中一人さっさと寝袋を用意している。
寝袋に入ると、チャックをしめて、目を閉じて眠る体勢に入っている。
そうしながらも独り言めいていた。
「まぁ、親らしいことはあまりしていない気持ちもありますが」
「ヒドイ親だな……」
「それでもいらないと言われたら、やっぱり寂しいですね」
一方の第一陣のチームの調査班は、早速六十二階層の扉からドローンを進ませていた。
今度は、侵入して早々にドローンが敵に襲われることもなく、順調に偵察を進められている。
今回は、ジャングルではなく、針葉樹の森が広がっていた。
足元にはシロツメ草が群生して生えている。木々のそばにはリスや鹿といった動物がおり、ドローンに気が付いて慌てて逃げていく。
御伽めいた美しい風景だった。
「一転して、綺麗な場所になりましたね。こんな美しい場所がダンジョンの中にあるなんて」
調査担当のスタッフがそうドローンからの映像を見ながら呟く。
「そうだな。これはダンジョンの中のモンスターさえうまくさばければ、観光名所にできるんじゃないか」
「人が分け入っていない場所だからこそ、美しい気がします。観光名所化には反対ですね」
「どちらにしろ、カメラを至る場所に設置するんだ。今のような状態は維持できないさ」
スタッフ達が話し合っている場所に、佐久間リーダーが現れて、パソコンの映像を眺めて言った。
「どこかにボスがいるはずだ。それが見つけてくれ」
「「ハイ」」
慌ててスタッフ達は背筋を伸ばし、映像を、目を皿のようにして見つめる。
ドローンは一時間飛行を続けたが、滞空時間制限に引っかかりそうだったので、交代のドローンを飛ばして一機目を六十一階に帰還させる。
そして二機目のドローンが飛び続けて三十分ほど経った時、ようやくボスらしきものの姿を見つけたのだった。
「…………人間?」
それは白いロープをまとったうら若い女性のような体付きをしていた。
豊かな胸にくびれた腰、細い手足。
だが、ドローンの見つけ、鋭い黄色い瞳でそれを睨みつける。
真っ赤な唇には細かな尖った歯が生え、唇の端が切れ上がっていた。
そして何よりも特筆すべきは、長くうねるその女の髪は、青みがかった細い蛇が何百匹も生きて蠢くものだったのだ。
「蛇女だ」
スタッフ達は、明らかに人外のものであるその女を見て呟いた。
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