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[挿話]
“そば”の定義 (2)
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第二話 “転移”の弱点(上)
アイスランドの国際空港に車が到着した後、一行は警護を受けながら、個室の待合室に移動した。
そして、柚彦は警護の自衛隊員達も部屋から外に出すと、秋元に言った。
「さあ、日本へ“転移”させて下さい」
「わかった」
秋元は柚彦と麗子の手を握る。
(考えてみれば、柚彦君と一緒に“転移”することは初めてだな)
そんなことを秋元は思っていた。その時は呑気にもそう思っていたのだ。
一瞬で空間が揺らぎ、三人は麗子の家の麗子の部屋に“転移”していた。
階下には麗子の両親がいるだろうと思って、秋元は小声で麗子に話す。
「じゃあね、麗子ちゃん。本当に色々とありがとう。そして、旦那さんと一緒に幸せになるんだよ」
魔王討伐を終えた後、挙式を予定している麗子は、泣き笑いのような顔をしていた。
「招待状、秋元さんにも渡しますから、絶対に来てくださいね」
「勿論だよ」
「柚彦さんも、必ず来てくださいよ」
「ああ、麗子さん、伺わせて頂く。麗子さん、今までありがとう」
秋元と柚彦にそうねぎらわれ、麗子はまた目を潤ませた。
「私こそ、今まで守って下さってありがとうございました。さようなら」
秋元は柚彦の手を握って“転移”した。
そこは、柚彦の自衛隊官舎の中だった。
「君を送るのはここでいいかな?」
秋元がそう言うと、柚彦はうなずいた。
「ええ」
「じゃあ、僕、とりあえずアメリカに戻ろうと思う」
その言葉に、柚彦はじっと秋元を見つめた。
「……僕、秋元さんに、自衛隊のアドバイザーの仕事もご用意しているとお話しましたよね。日本の戸籍も用意していると」
「うん。でもさ、僕、堅苦しいこと苦手なんだよね。軍隊とかちょっとね」
それでいつも、秋元は日本でもダンジョン開発推進機構に入っていたし、米国でもADDO(アメリカダンジョン開発機構)に所属していたのだ。自衛隊や米軍に入る選択は、はなからなかった。
「しばらくはのんびり過ごそうかなと思う」
とりあえず、アメリカで世話になっているリチャード=ブルマンのペントハウスにでも身を寄せようと思っていた。彼はきっと秋元のことを歓迎するだろう。彼の元でしばらくはぶらぶらとしてもいい。
柚彦は不機嫌そうに眉を寄せていた。
「…………僕、言いましたよね」
「……何を?」
「秋元さんにこの世界にずっといて欲しいと。そして」
柚彦ははっきりと言った。
「ずっと側にいて欲しいと」
秋元は困惑した様子を見せた。
「……ずっと側って、君の側にいるの?」
「そうです」
「どうして?」
そう尋ねてくる秋元の言葉に、一瞬、柚彦はカッとなった。
この人は本当に、何も感じていなかったのだ。
ここまで言っても、まったく自分の言葉は響いていない。
普通なら、少しは感じるはずなのに。
以前、聖女の麗子さんがこう言っていた。
「秋元さんは、自分の恋愛事には疎いような気がします。異世界での三人の奥さんとの馴れ初めを少し聞いたことがあったのだけど、一人目の奥さんに強引に結婚に結びつけられた後、残り二人の奥さんは、一人目の奥さんがスカウトしたらしいですよ」
残り二人の奥さんをスカウトって何だと、それを聞いた時、柚彦は呆れた思いがあった。
そしてそういう色恋事が面倒だと思ったらしい秋元は、それを受け入れてしまったらしい。
「だから……だから秋元さんと恋愛って大変だと思いますよ」
麗子は秋元と柚彦がくっつくことを、腐女子として望みつつも、その後の柚彦の苦労を見越していたようだ。
アイスランドの国際空港に車が到着した後、一行は警護を受けながら、個室の待合室に移動した。
そして、柚彦は警護の自衛隊員達も部屋から外に出すと、秋元に言った。
「さあ、日本へ“転移”させて下さい」
「わかった」
秋元は柚彦と麗子の手を握る。
(考えてみれば、柚彦君と一緒に“転移”することは初めてだな)
そんなことを秋元は思っていた。その時は呑気にもそう思っていたのだ。
一瞬で空間が揺らぎ、三人は麗子の家の麗子の部屋に“転移”していた。
階下には麗子の両親がいるだろうと思って、秋元は小声で麗子に話す。
「じゃあね、麗子ちゃん。本当に色々とありがとう。そして、旦那さんと一緒に幸せになるんだよ」
魔王討伐を終えた後、挙式を予定している麗子は、泣き笑いのような顔をしていた。
「招待状、秋元さんにも渡しますから、絶対に来てくださいね」
「勿論だよ」
「柚彦さんも、必ず来てくださいよ」
「ああ、麗子さん、伺わせて頂く。麗子さん、今までありがとう」
秋元と柚彦にそうねぎらわれ、麗子はまた目を潤ませた。
「私こそ、今まで守って下さってありがとうございました。さようなら」
秋元は柚彦の手を握って“転移”した。
そこは、柚彦の自衛隊官舎の中だった。
「君を送るのはここでいいかな?」
秋元がそう言うと、柚彦はうなずいた。
「ええ」
「じゃあ、僕、とりあえずアメリカに戻ろうと思う」
その言葉に、柚彦はじっと秋元を見つめた。
「……僕、秋元さんに、自衛隊のアドバイザーの仕事もご用意しているとお話しましたよね。日本の戸籍も用意していると」
「うん。でもさ、僕、堅苦しいこと苦手なんだよね。軍隊とかちょっとね」
それでいつも、秋元は日本でもダンジョン開発推進機構に入っていたし、米国でもADDO(アメリカダンジョン開発機構)に所属していたのだ。自衛隊や米軍に入る選択は、はなからなかった。
「しばらくはのんびり過ごそうかなと思う」
とりあえず、アメリカで世話になっているリチャード=ブルマンのペントハウスにでも身を寄せようと思っていた。彼はきっと秋元のことを歓迎するだろう。彼の元でしばらくはぶらぶらとしてもいい。
柚彦は不機嫌そうに眉を寄せていた。
「…………僕、言いましたよね」
「……何を?」
「秋元さんにこの世界にずっといて欲しいと。そして」
柚彦ははっきりと言った。
「ずっと側にいて欲しいと」
秋元は困惑した様子を見せた。
「……ずっと側って、君の側にいるの?」
「そうです」
「どうして?」
そう尋ねてくる秋元の言葉に、一瞬、柚彦はカッとなった。
この人は本当に、何も感じていなかったのだ。
ここまで言っても、まったく自分の言葉は響いていない。
普通なら、少しは感じるはずなのに。
以前、聖女の麗子さんがこう言っていた。
「秋元さんは、自分の恋愛事には疎いような気がします。異世界での三人の奥さんとの馴れ初めを少し聞いたことがあったのだけど、一人目の奥さんに強引に結婚に結びつけられた後、残り二人の奥さんは、一人目の奥さんがスカウトしたらしいですよ」
残り二人の奥さんをスカウトって何だと、それを聞いた時、柚彦は呆れた思いがあった。
そしてそういう色恋事が面倒だと思ったらしい秋元は、それを受け入れてしまったらしい。
「だから……だから秋元さんと恋愛って大変だと思いますよ」
麗子は秋元と柚彦がくっつくことを、腐女子として望みつつも、その後の柚彦の苦労を見越していたようだ。
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