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第三章 現世ダンジョン編 ~もう一人の勇者~
第十四話 春がやって来て、また戻ってきました
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その後、マスコミに対してダンジョン開発推進機構と自衛隊の共同記者会見が開かれ、今後毎月一つずつ発生するといわれる各地のダンジョンの拡張に関して、共同で探索任務を行うことが発表された。
先日の岩手県内のダンジョン主討伐は共同で討伐した良い先例になっていた。
未知の現象に対して、最善を尽くすというアピールでもある。
四つの民間向けダンジョンを抱えるダンジョン開発推進機構にとっても、三つの専用ダンジョンを抱える自衛隊にとっても、ダンジョンの拡張は未知の経験であった。
岩手県内の自衛隊専用ダンジョンから無事に帰還したダンジョン開発推進機構開発部スタッフ達に、秋元は「用事があるのでまた」と言って、開発推進機構の本部ビルに戻ることもなく勝手にどこかへ消えてしまっていた。それ以来、彼の姿を見ない。
同じ開発部のSランクスタッフの瓜生は、秋元の適当さに怒って、上司達にきつく彼の行方を問いただしていた。だが、登場の仕方からしてよくわからない謎の男であったから、途中でその行方を追及することも諦めたようだった。
四月になって、佐久間柚彦は、父親の在籍する自衛隊情報本部ではなく、彼はダンジョンエリートと呼ばれる自衛隊内の討伐専門チームに在籍することになった。
十八歳の彼が、他の機関での任務経験を一切経ることなくそのチームに属することは異例の抜擢といえる。
その抜擢には、彼が“勇者”称号を持つことも理由であったが、彼が秋元から貸与されている灼熱の魔法剣“焔の剣”の持ち主になっていることが大きい。
その火力は、過去の自衛隊がダンジョンで入手した魔法剣よりも遥かに大きいものだった。そして、それを扱える人間は、現在、佐久間柚彦だけであった。
討伐専門チームの柳良太は、自衛隊に正式に入隊する以前から、佐久間柚彦が自衛隊に出入りし、あまつさえあの岩手県内のダンジョン探索の時にも、彼が正規の自衛隊員ではないのに参加していたことを知って、驚いていた。
「佐久間さんも無茶をする……」
そして、柚彦の髪に手をやる。くしゃりとその髪を掻きまぜる。
「四月から、君はうちの部隊の一員になるのだけど、ダンジョンだけが人生じゃない」
柳は柚彦に言った。
「遊ぶことも覚えろ。まぁ、遊ぶことも教えてくれる奴はうちの隊にゴロゴロいる」
「はい」
遊ぶこと。
柚彦は考えた。
子供の頃から、養親から“勇者”称号を持つのだからといって、厳しい訓練を受けていた。
友人達と遊んだ記憶はない。
ただ、時々会いに来る秋元さんだけが僕を心配していた。
“勇者”としてしか必要とされない自分を。
柳は秋元に似ていた。
「四月から、よろしく頼む」
「はい」
そして佐久間柚彦は自衛隊内の討伐専門チームに在籍し、彼は各ダンジョンの拡張に際して、華々しく活躍することになる。
四月になり、再び戻ってきた者もいた。
くしゃくしゃになった封筒から、小銭を取り出し、少年はようやく見つけた公衆電話に小銭を入れた。
メモしていた電話番号を見ながら、ボタンを押していく。
発信音の後に、受話器越しに出た若い女性の声に向かって、彼は必死になって話しかけていた。
「麗子ちゃん、俺だよ、光。……困っているんだ、助けてくれない?」
そして彼女が迎えに来るまで、光は地面にしゃがみこんでため息をついていた。
「あーあ、……どうしてこんなことになっちゃったんだろう」と呟いて。
先日の岩手県内のダンジョン主討伐は共同で討伐した良い先例になっていた。
未知の現象に対して、最善を尽くすというアピールでもある。
四つの民間向けダンジョンを抱えるダンジョン開発推進機構にとっても、三つの専用ダンジョンを抱える自衛隊にとっても、ダンジョンの拡張は未知の経験であった。
岩手県内の自衛隊専用ダンジョンから無事に帰還したダンジョン開発推進機構開発部スタッフ達に、秋元は「用事があるのでまた」と言って、開発推進機構の本部ビルに戻ることもなく勝手にどこかへ消えてしまっていた。それ以来、彼の姿を見ない。
同じ開発部のSランクスタッフの瓜生は、秋元の適当さに怒って、上司達にきつく彼の行方を問いただしていた。だが、登場の仕方からしてよくわからない謎の男であったから、途中でその行方を追及することも諦めたようだった。
四月になって、佐久間柚彦は、父親の在籍する自衛隊情報本部ではなく、彼はダンジョンエリートと呼ばれる自衛隊内の討伐専門チームに在籍することになった。
十八歳の彼が、他の機関での任務経験を一切経ることなくそのチームに属することは異例の抜擢といえる。
その抜擢には、彼が“勇者”称号を持つことも理由であったが、彼が秋元から貸与されている灼熱の魔法剣“焔の剣”の持ち主になっていることが大きい。
その火力は、過去の自衛隊がダンジョンで入手した魔法剣よりも遥かに大きいものだった。そして、それを扱える人間は、現在、佐久間柚彦だけであった。
討伐専門チームの柳良太は、自衛隊に正式に入隊する以前から、佐久間柚彦が自衛隊に出入りし、あまつさえあの岩手県内のダンジョン探索の時にも、彼が正規の自衛隊員ではないのに参加していたことを知って、驚いていた。
「佐久間さんも無茶をする……」
そして、柚彦の髪に手をやる。くしゃりとその髪を掻きまぜる。
「四月から、君はうちの部隊の一員になるのだけど、ダンジョンだけが人生じゃない」
柳は柚彦に言った。
「遊ぶことも覚えろ。まぁ、遊ぶことも教えてくれる奴はうちの隊にゴロゴロいる」
「はい」
遊ぶこと。
柚彦は考えた。
子供の頃から、養親から“勇者”称号を持つのだからといって、厳しい訓練を受けていた。
友人達と遊んだ記憶はない。
ただ、時々会いに来る秋元さんだけが僕を心配していた。
“勇者”としてしか必要とされない自分を。
柳は秋元に似ていた。
「四月から、よろしく頼む」
「はい」
そして佐久間柚彦は自衛隊内の討伐専門チームに在籍し、彼は各ダンジョンの拡張に際して、華々しく活躍することになる。
四月になり、再び戻ってきた者もいた。
くしゃくしゃになった封筒から、小銭を取り出し、少年はようやく見つけた公衆電話に小銭を入れた。
メモしていた電話番号を見ながら、ボタンを押していく。
発信音の後に、受話器越しに出た若い女性の声に向かって、彼は必死になって話しかけていた。
「麗子ちゃん、俺だよ、光。……困っているんだ、助けてくれない?」
そして彼女が迎えに来るまで、光は地面にしゃがみこんでため息をついていた。
「あーあ、……どうしてこんなことになっちゃったんだろう」と呟いて。
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