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第一章 俺の大好きな聖女ちゃんが腐女子で、現世まで追いかけてきた竜騎士とくっつけようと画策しているらしい
第29話 僕がなんとかしてあげるから
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その話をすると、林原郁夫は声をあげて笑っていた。
「もう、笑いごとじゃないんですよ、おじさま」
聖女こと林原麗子は唇を尖らせて言う。
夕食後、麗子は自室でノートパソコンを使い、おじの郁夫を相手にリアルタイムのビデオチャットを行っていた。
「いやいや、おかしいだろう。呼んだら来るって、すごいね」
「異世界でもそうだったんですよ。ゼノン君に言われて思い出しました」
「そうか」
あまりにも笑いすぎたせいで、涙を拭きながら郁夫おじさまは言った。
「それで、まぁ、そっちは変わりはないかい」
「はい」
ユーチューブ番組の撮影の時に、東都大学の教授と学生が来ていた件は、あの後おじに調べてもらった。
教授は弟が防衛省に勤めており、どうもあのゴブリンキングとの繋がりを自衛隊が疑っているのではないかと言った。
ゴブリンキングの頭を割った人物は自衛隊の中では見つかっていない。第三者がそれをやったのは確かだと彼らもわかっているはず。
当日の周辺の監視カメラを洗い出せば、もしかしたら目出し帽姿の彼らを見つけてしまっているかも知れない。
そうなれば、あの“勇者君が岩を斬るよ”の番組自体に興味を持つだろう。
ゴブリンキングの頭蓋骨を叩き割ったように、大岩を叩き斬るわけだから。
「君達に何ができるかな、と思って番組に出していたけれど、失敗したね。悪かったね」
「おじさま」
「こっちに来た問い合わせは、うまくこちらでさばくよ。強引な手は使ってこないと思うが、気を付けておくれ、麗子」
「はい」
その頃、自室にいたゼノンは、机の上に、自らの収納庫から取り出した水晶玉を置いていた。
透き通るようなその水晶玉は、彼が異世界から収納庫に入れて持ち出したものだった。
それは竜族の宝と言われ、幾千の距離を越えて姿を届けるという魔道具だった。
光達の世界に運んできた水晶玉は、ゼノンの故郷の異世界と通信ができた。
その水晶玉には、かつて勇者一行として共に魔王討伐の旅に旅立った魔法使いの姿が映し出されていた。
「秋元さん、こんばんわ」
「やぁ、ゼノン君、元気そうで何よりだね」
秋元という眼鏡のこの男は、光達の世界から異世界へ渡り、そのまま異世界で骨を埋めるといって暮らしていた。彼は、毎回、魔王討伐の旅に選抜されるほどの優れた魔法使いだった。
「どう? みんなは大丈夫?」
秋元は、異世界から現世へ渡ったゼノン、光、麗子を心配していた。
「大丈夫です。今のところ、みんな問題なく暮らしています」
「そう、良かった。ゼノン君は、そちらの世界には慣れたのかな?」
「慣れましたよ。聖女様のおかげで知識も持った上で移動できましたからね」
「そうだねぇ。あの時はみんなびっくりしたよ。聖女ちゃんがあんなお願いするものだから」
ゼノンが異世界へ渡るときに、神に対して彼が困らないように配慮して欲しいと言っていた聖女の姿を思い出して、秋元という魔法使いの男は笑った。
「君は大丈夫?」
「大丈夫ですよ。ヒカルもいますから」
「相変わらず、光が好きなんだね」
「そうでなければ、異世界へ移動しません」
彼はキッパリ言った。
「僕は、光の居るところにこれからもずっと居るつもりですから」
「愛が……愛が重いよ、ゼノン君」
秋元は苦笑いする。
「そうでしょうか?」
「そうだよ。麗子ちゃんにもアドバイスされていただろ? あまりにも重すぎる愛は、逃げられるよ」
「……だから、僕はこちらではだいぶ我慢していますよ」
「…………そうなんだ」
ちょっと信じられない思いがした。異世界にいる時のゼノンは、しょっちゅう勇者の寝込みを襲い、返り討ちに遭っていたからだ。それを繰り返していたせいで、光は現世へ戻ると神に願い出ることになったのだ。
「はい」
「とにかく、約束通り、僕は待機しているからね」
秋元は言った。
「……異世界へ戻りたくなったらいつでも、そう……いつでも呼びかけなさい」
彼は微笑みながら言った。
「僕がなんとかしてあげるから」
「もう、笑いごとじゃないんですよ、おじさま」
聖女こと林原麗子は唇を尖らせて言う。
夕食後、麗子は自室でノートパソコンを使い、おじの郁夫を相手にリアルタイムのビデオチャットを行っていた。
「いやいや、おかしいだろう。呼んだら来るって、すごいね」
「異世界でもそうだったんですよ。ゼノン君に言われて思い出しました」
「そうか」
あまりにも笑いすぎたせいで、涙を拭きながら郁夫おじさまは言った。
「それで、まぁ、そっちは変わりはないかい」
「はい」
ユーチューブ番組の撮影の時に、東都大学の教授と学生が来ていた件は、あの後おじに調べてもらった。
教授は弟が防衛省に勤めており、どうもあのゴブリンキングとの繋がりを自衛隊が疑っているのではないかと言った。
ゴブリンキングの頭を割った人物は自衛隊の中では見つかっていない。第三者がそれをやったのは確かだと彼らもわかっているはず。
当日の周辺の監視カメラを洗い出せば、もしかしたら目出し帽姿の彼らを見つけてしまっているかも知れない。
そうなれば、あの“勇者君が岩を斬るよ”の番組自体に興味を持つだろう。
ゴブリンキングの頭蓋骨を叩き割ったように、大岩を叩き斬るわけだから。
「君達に何ができるかな、と思って番組に出していたけれど、失敗したね。悪かったね」
「おじさま」
「こっちに来た問い合わせは、うまくこちらでさばくよ。強引な手は使ってこないと思うが、気を付けておくれ、麗子」
「はい」
その頃、自室にいたゼノンは、机の上に、自らの収納庫から取り出した水晶玉を置いていた。
透き通るようなその水晶玉は、彼が異世界から収納庫に入れて持ち出したものだった。
それは竜族の宝と言われ、幾千の距離を越えて姿を届けるという魔道具だった。
光達の世界に運んできた水晶玉は、ゼノンの故郷の異世界と通信ができた。
その水晶玉には、かつて勇者一行として共に魔王討伐の旅に旅立った魔法使いの姿が映し出されていた。
「秋元さん、こんばんわ」
「やぁ、ゼノン君、元気そうで何よりだね」
秋元という眼鏡のこの男は、光達の世界から異世界へ渡り、そのまま異世界で骨を埋めるといって暮らしていた。彼は、毎回、魔王討伐の旅に選抜されるほどの優れた魔法使いだった。
「どう? みんなは大丈夫?」
秋元は、異世界から現世へ渡ったゼノン、光、麗子を心配していた。
「大丈夫です。今のところ、みんな問題なく暮らしています」
「そう、良かった。ゼノン君は、そちらの世界には慣れたのかな?」
「慣れましたよ。聖女様のおかげで知識も持った上で移動できましたからね」
「そうだねぇ。あの時はみんなびっくりしたよ。聖女ちゃんがあんなお願いするものだから」
ゼノンが異世界へ渡るときに、神に対して彼が困らないように配慮して欲しいと言っていた聖女の姿を思い出して、秋元という魔法使いの男は笑った。
「君は大丈夫?」
「大丈夫ですよ。ヒカルもいますから」
「相変わらず、光が好きなんだね」
「そうでなければ、異世界へ移動しません」
彼はキッパリ言った。
「僕は、光の居るところにこれからもずっと居るつもりですから」
「愛が……愛が重いよ、ゼノン君」
秋元は苦笑いする。
「そうでしょうか?」
「そうだよ。麗子ちゃんにもアドバイスされていただろ? あまりにも重すぎる愛は、逃げられるよ」
「……だから、僕はこちらではだいぶ我慢していますよ」
「…………そうなんだ」
ちょっと信じられない思いがした。異世界にいる時のゼノンは、しょっちゅう勇者の寝込みを襲い、返り討ちに遭っていたからだ。それを繰り返していたせいで、光は現世へ戻ると神に願い出ることになったのだ。
「はい」
「とにかく、約束通り、僕は待機しているからね」
秋元は言った。
「……異世界へ戻りたくなったらいつでも、そう……いつでも呼びかけなさい」
彼は微笑みながら言った。
「僕がなんとかしてあげるから」
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