騎士団長が大変です

【短編】

騎士団長とケモミミ事件 再び (2)

　そう言って、半年間。
　フィリップはずっとバーナードのそばから離れず、まるで忠犬のように、常に彼の後ろに従っていた。
　マグルも最初のうちは「お前に惚れ切っているなぁ。まぁ、フィリップには犬みたいなところがあるしな」と笑って言っていたものだが、半年間、常にピッタリ、バーナードのそばを離れないフィリップを見て、「フィリップは今後もこの調子なのか？」とさすがに心配になっている様子だった。
　だからある時、バーナードは怒るように言った。

「フィリップ、俺を信じろ。もうそんなに心配するな!!」

「そうですよ、フィリップお父様」

　バーナードの前に、バーナードそっくりの鋭い青い目をした美しい少女が腰に手を当て仁王立ちしている。フィリップとバーナードの娘アレクサンドラである。
　腰には、バーナードから贈られた子供用の鋼の剣がしっかりと下げられている。

「私がバーナードお父様をお守りします。それに」

　バーナードの足元にいた金色の仔狼二頭が、揃って頭を上げて「ワンワン」と吠えた。仔狼なのに。

「ディヴィットとクリストフだって、お父様を守ってくれますわ。だから、フィリップお父様は安心してお出かけになって下さい」

「そうだ。さっさと行け」

　しっしと追い払うようにバーナードから手を振られる。
　今回もまたフィリップは、王宮で副官対象の泊りがけの打ち合わせがあり、それにはバーナードが独断で参加欄に丸印をつけて申し込んでいた。
　恨めしそうな顔で、フィリップは、バーナードと子供達を見つめている。

「……………心配なんです」

「もう耳が痛くなるほど聞いた」

　フーとバーナードはため息をつくと、玄関の扉前でなおもこちらをじっとりと見つめているフィリップのそばに寄り、その耳元で囁くように言った。

「夜、夢を渡って会いに行く」

　驚いてバーナードの顔を見上げるフィリップに小さく笑って言った。

「だから、待っていろ」