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第二十五章 小さな妖精の罪ほろぼしと王太子の沈黙
第十話 相愛
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未だ少年の姿をとったままのバーナード騎士団長が、フィリップの屋敷に入った時、まだフィリップは騎士団から帰宅していなかった。
王宮から、王立騎士団の拠点に立ち寄ることなく直帰したものだから、自分の方が早かったようだ。
少年は上着を簡単に畳むと、椅子の上に置いて、夕食の調理に取り掛かる。
フィリップが帰る前に、夕食の支度を終えておく方がいいだろう。
居間の鏡に、黒髪に茶色の瞳のすらりとした少年の姿が映ったのを見て、フィリップが帰ってくる前に元の大人の姿に戻っておいた方がいいだろうかと一瞬迷う。
王宮から急いでフィリップの屋敷に帰りたかったため、いつも立ち寄るマグル王宮副魔術師長のところへも行かずに、直接帰ってきたのだ。そのため、耳には“若返りの魔道具”であるピアスがはめられたままであった。
ただ、フィリップが自分のために用意してくれた服をまだ着ていたい気持ちもある。
そうこうしているうちに、フィリップが屋敷に帰ってきた。
彼は部屋の中に、少年の姿をとったバーナードを認めて、嬉しそうに笑っていた。
「お帰りなさい。早かったのですね」
「ああ。すぐに帰ってきた」
フィリップはバートのそばまで近寄ると、その身をぎゅっと抱きしめ、何故か息を吸い込むようにしていた。
なんとなく、こいつは何をしているんだという気持ちで、フィリップを見返すと、彼はぽつりと言った。
「殿下の匂いがあまりついていないので、良かったです」
「………………………」
狼だという話だが、こいつはやはり、犬……犬なのか。
そして、匂いを嗅いだだけで、何をされたのか分かるこいつは……。
「殿下とは話をしただけだ。当然だろう」
フィリップはバートの頭に顔を埋め、スンスンと匂いを嗅いでいる。
ますます、バートの眉間に皺が寄る。
犬……こいつは犬だ。
「おい、よせ。匂いを嗅ぐな」
「嫌です。私が選んだ服を着て、私の匂いに包まれている貴方を抱きしめたい。それに、行く前に言ったじゃありませんか」
少年の耳元で、フィリップは艶っぽい声で囁くのだ。
「“続きは帰ってからだ”と」
そうだった。
バートはフィリップの顔を見上げる。期待に青い目が輝いているように見える。
「とりあえず、夕食を食べよう。お前も仕事で疲れているだろう」
「夕食の用意をして下さったんですね。ありがとうございます」
フィリップも手伝うと言って、皿をテーブルに運び、二人で仲良く穏やかに夕食を取った。
食後のお茶を飲んで、居間で寛ぐ中で、フィリップは自身の膝の上にバートを座らせた。
相変わらず、彼の頭や耳の後ろの匂いを嗅ごうとする様子に、バートの眉間に皺が寄っている。
「……お前は、噛む、舐める、嗅ぐと、本当に犬じみているぞ」
「貴方は私の番なのだから、いいでしょう? 貴方の匂いが好きなんです。人狼になって初めてこうした感覚を知りました。貴方の匂いが好きです。とてもいい香りがする」
フィリップがそう言って、目を細めどこか陶然としている様子に、バートはなんとも言えぬ表情をしながらも、嗅覚や聴覚、視覚といった感覚が普通の人間よりも遥かに発達している人狼は、人間とは感覚が違うのだろうと思った。噛む喜びも、舐める喜びも、匂いを嗅ぐ喜びというものも、新たにできているのかも知れない。
実際、フィリップはバーナードを噛んで舐めて、匂いを嗅ぐことが大好きな様子だった。
最初は呆れて蹴り飛ばしていたのだが、もはや今では諦めている。
同様に、バーナードも淫魔になった今では、ひどく快感に弱くなっている。相愛のフィリップに触れられると、身体の奥から熱がじわじわと広がり、その広がりが止められない。悦びに流されてしまう。
今もフィリップが、バートの胸元のボタンを外し、指を胸の突起に触れさせ、摘まむようにもて遊び始めると、熱く息を漏らし始めていた。
「…………フィリップ」
右手は彼の淡い突起を摘まみ上げるようにしながら、左手は少年のズボンを開かせ、ゆっくりと包み始めている。
そしてフィリップはバートの細い首に口づけし、甘く噛んだ。
「……う……ん」
いつも舐められ、噛まれるそこは、そうされることに敏感になってしまっている。
少年の前が固くなりはじめ、トロトロと先端を濡らし始めているのを見て、フィリップは彼の唇に自分の唇を覆いかぶせるように重ねた。
そしてズボンを下着ごと落とし、その腰を掴むとゆっくりと自身の男根で貫いていく。すでに蕾は触れずとも、潤みはじめていた。固くそそり立つそれを包み込むように受け止めていく。
少年ののけぞる、滑らかな背中を宥めるようにさする。
荒く息をつき、ゆっくりゆっくりと根本まで蕾が受け入れていく。
「力を抜いて……そう、いいです」
ぴったりとその部分がすべてを咥え込んだのを見て、フィリップもまた荒く息を吐く。
「ああ、すごくいいです。貴方は本当に、よく締める」
「……それは、誉め言葉なのか」
「誉め言葉ですよ、バート」
上はシャツ一枚で、下はむき出しの裸である。椅子の上に座る金髪の男に跨り、深々とその男のモノを後孔で受け止めている。自分でもなんと浅ましい姿であろうと分かっている。
でも、いい。
「……お前が気持ちがいいのなら、いい」
そうバートが言うと、フィリップは青い目を細め、少年の唇にまた啄むように口づけた。
「貴方が悦くなるように致しましょうか」
「んん、まだ動く……な」
下から突き上げるように揺すられると、少年が切なげに甘く声を上げる。
その様子にフィリップは目を輝かせていた。
「貴方が悦ぶ姿が見たい」
「いつも、しているだろう」
途切れ途切れに喘ぎながら答える彼の身体をきつく抱きしめる。
「貴方をもっと悦ばせたいんです」
これ以上、悦楽に堕とされたのなら、自分がどうなってしまうか分からない。一瞬恐怖にも似た思いが胸を横切ったが、それもまた、フィリップならばよいかと思った。
彼になら、何を許してもいい。
この身も心も、彼に全てを捧げても。
後悔など一切しないと思った。
王宮から、王立騎士団の拠点に立ち寄ることなく直帰したものだから、自分の方が早かったようだ。
少年は上着を簡単に畳むと、椅子の上に置いて、夕食の調理に取り掛かる。
フィリップが帰る前に、夕食の支度を終えておく方がいいだろう。
居間の鏡に、黒髪に茶色の瞳のすらりとした少年の姿が映ったのを見て、フィリップが帰ってくる前に元の大人の姿に戻っておいた方がいいだろうかと一瞬迷う。
王宮から急いでフィリップの屋敷に帰りたかったため、いつも立ち寄るマグル王宮副魔術師長のところへも行かずに、直接帰ってきたのだ。そのため、耳には“若返りの魔道具”であるピアスがはめられたままであった。
ただ、フィリップが自分のために用意してくれた服をまだ着ていたい気持ちもある。
そうこうしているうちに、フィリップが屋敷に帰ってきた。
彼は部屋の中に、少年の姿をとったバーナードを認めて、嬉しそうに笑っていた。
「お帰りなさい。早かったのですね」
「ああ。すぐに帰ってきた」
フィリップはバートのそばまで近寄ると、その身をぎゅっと抱きしめ、何故か息を吸い込むようにしていた。
なんとなく、こいつは何をしているんだという気持ちで、フィリップを見返すと、彼はぽつりと言った。
「殿下の匂いがあまりついていないので、良かったです」
「………………………」
狼だという話だが、こいつはやはり、犬……犬なのか。
そして、匂いを嗅いだだけで、何をされたのか分かるこいつは……。
「殿下とは話をしただけだ。当然だろう」
フィリップはバートの頭に顔を埋め、スンスンと匂いを嗅いでいる。
ますます、バートの眉間に皺が寄る。
犬……こいつは犬だ。
「おい、よせ。匂いを嗅ぐな」
「嫌です。私が選んだ服を着て、私の匂いに包まれている貴方を抱きしめたい。それに、行く前に言ったじゃありませんか」
少年の耳元で、フィリップは艶っぽい声で囁くのだ。
「“続きは帰ってからだ”と」
そうだった。
バートはフィリップの顔を見上げる。期待に青い目が輝いているように見える。
「とりあえず、夕食を食べよう。お前も仕事で疲れているだろう」
「夕食の用意をして下さったんですね。ありがとうございます」
フィリップも手伝うと言って、皿をテーブルに運び、二人で仲良く穏やかに夕食を取った。
食後のお茶を飲んで、居間で寛ぐ中で、フィリップは自身の膝の上にバートを座らせた。
相変わらず、彼の頭や耳の後ろの匂いを嗅ごうとする様子に、バートの眉間に皺が寄っている。
「……お前は、噛む、舐める、嗅ぐと、本当に犬じみているぞ」
「貴方は私の番なのだから、いいでしょう? 貴方の匂いが好きなんです。人狼になって初めてこうした感覚を知りました。貴方の匂いが好きです。とてもいい香りがする」
フィリップがそう言って、目を細めどこか陶然としている様子に、バートはなんとも言えぬ表情をしながらも、嗅覚や聴覚、視覚といった感覚が普通の人間よりも遥かに発達している人狼は、人間とは感覚が違うのだろうと思った。噛む喜びも、舐める喜びも、匂いを嗅ぐ喜びというものも、新たにできているのかも知れない。
実際、フィリップはバーナードを噛んで舐めて、匂いを嗅ぐことが大好きな様子だった。
最初は呆れて蹴り飛ばしていたのだが、もはや今では諦めている。
同様に、バーナードも淫魔になった今では、ひどく快感に弱くなっている。相愛のフィリップに触れられると、身体の奥から熱がじわじわと広がり、その広がりが止められない。悦びに流されてしまう。
今もフィリップが、バートの胸元のボタンを外し、指を胸の突起に触れさせ、摘まむようにもて遊び始めると、熱く息を漏らし始めていた。
「…………フィリップ」
右手は彼の淡い突起を摘まみ上げるようにしながら、左手は少年のズボンを開かせ、ゆっくりと包み始めている。
そしてフィリップはバートの細い首に口づけし、甘く噛んだ。
「……う……ん」
いつも舐められ、噛まれるそこは、そうされることに敏感になってしまっている。
少年の前が固くなりはじめ、トロトロと先端を濡らし始めているのを見て、フィリップは彼の唇に自分の唇を覆いかぶせるように重ねた。
そしてズボンを下着ごと落とし、その腰を掴むとゆっくりと自身の男根で貫いていく。すでに蕾は触れずとも、潤みはじめていた。固くそそり立つそれを包み込むように受け止めていく。
少年ののけぞる、滑らかな背中を宥めるようにさする。
荒く息をつき、ゆっくりゆっくりと根本まで蕾が受け入れていく。
「力を抜いて……そう、いいです」
ぴったりとその部分がすべてを咥え込んだのを見て、フィリップもまた荒く息を吐く。
「ああ、すごくいいです。貴方は本当に、よく締める」
「……それは、誉め言葉なのか」
「誉め言葉ですよ、バート」
上はシャツ一枚で、下はむき出しの裸である。椅子の上に座る金髪の男に跨り、深々とその男のモノを後孔で受け止めている。自分でもなんと浅ましい姿であろうと分かっている。
でも、いい。
「……お前が気持ちがいいのなら、いい」
そうバートが言うと、フィリップは青い目を細め、少年の唇にまた啄むように口づけた。
「貴方が悦くなるように致しましょうか」
「んん、まだ動く……な」
下から突き上げるように揺すられると、少年が切なげに甘く声を上げる。
その様子にフィリップは目を輝かせていた。
「貴方が悦ぶ姿が見たい」
「いつも、しているだろう」
途切れ途切れに喘ぎながら答える彼の身体をきつく抱きしめる。
「貴方をもっと悦ばせたいんです」
これ以上、悦楽に堕とされたのなら、自分がどうなってしまうか分からない。一瞬恐怖にも似た思いが胸を横切ったが、それもまた、フィリップならばよいかと思った。
彼になら、何を許してもいい。
この身も心も、彼に全てを捧げても。
後悔など一切しないと思った。
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