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第二十三章 砕け散る魔剣
第七話 魔剣を欲する
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バーナード騎士団長が、レブラン教授の面会の申し込みを受諾した。早速、申し込みの翌日の昼に会うことになった。
バーナードと同席するのは、騎士団長に従ってランディア王国へやって来た王立騎士団大隊長のフレデリックである。
一方のレブランは、同行をせがんだ護衛のイザックを連れて、王宮へとやって来た。
剣士たるイザックは、前回の魔獣をその剣技で圧倒したバーナード騎士団長と是非手合わせをしたいと望んでいた。同席の場で、叶うことならその手合わせの依頼をしたいらしい。
王宮内の応接室に案内をされ、女官が席についた男達の前にお茶を並べて、綺麗に一礼して部屋を退出する。
レブランは忙しい中、面会してくれたことについて丁寧に礼を述べた後、早速、話を切り出したのだった。
「バーナード騎士団長がお持ちの剣ですが、その剣はどちらで手に入れたのでしょうか」
椅子に座り、お茶を口にしていた騎士団長は、カップをソーサーに戻した後、腰の剣に目をやった。
「友人から譲り受けたものだ」
友人といっても、妖精の国の王子だが、そのことをここで告げるわけにはいかないだろう。
それに、レブラン教授はなおも食い下がってきた。
「差支えなければ、ご友人のお名前など伺っても宜しいでしょうか」
「…………」
差支えがあるから、答えることはできない。
そして、まさかレブラン教授からの面会の申し込みが、この剣に関することだったとは考えてもみなかった。
「友人の話はすることは出来ない」
思い返して見れば、このレブランという男は、魔剣の収集家としても有名なのだ。
自分が手にしている魔剣に興味があるのだろう。
バーナードは以前、“氷雪の剣”のオークションの競り合いに負けた苦い記憶を思い出す。
魔剣という魔剣を、金にあかせて買い求めているレブラン教授は、この白い宝珠の剣も手に入れたいと考えているのだろうか。
しかし、この剣はバーナードが初めて“自分のための魔剣”として手に入れたものである。
たとえあと数回で壊れてしまうと言われている魔剣であろうと、思い入れもあった。
友人の話をすることは出来ないと告げられたレブラン教授は、残念そうな様子を見せたが、気を取り直してこう言った。
「剣を見せて頂いても宜しいでしょうか」
「ああ」
そこでバーナードは腰から剣を外し、鞘ごと剣をレブランへ手渡した。
レブランはどこか恭しく両手でその剣を受け取る。
鞘から剣を抜いた後に、柄に埋まる真っ白い宝珠をマジマジと教授は見つめていた。
「……この剣は素晴らしいものです」
レブランの視線が剣を食い入るように見つめていた。
よほど、この剣が気に入ったのだろう。
「バーナード騎士団長、貴方が望むなら、望むだけお支払いしましょう。是非、この剣を売って頂きたい」
そう、レブラン教授は申し出たのだった。
その場にいた男達は、内心皆驚いていた。
レブラン教授が伴っていた護衛の男すらも、驚きの表情を隠せないでいるようだった。
「…………この剣をお売りすることは出来かねる」
そっとレブラン教授の手から白い宝珠の剣を取り上げて、バーナード騎士団長は言った。
そう感じさせまいとしても、バーナード騎士団長の声には冷ややかなものがあった。
騎士の佩いている剣を、その騎士の前で取り上げるように買い求めるとは失礼この上無かった。
収集家というものはこんなにも図々しいものなのだろうかと感じたほどである。
だが、レブラン教授は諦めなかった。
「十億でも、二十億でも言い値で買わせて頂きます。貴殿の望む額をご用意致しましょう」
先日のオークションで、過去最高額を叩き出した“氷雪の剣”でさえも七億である。それを遥かに超える額でも良いと言っているのだ。
だが、バーナードにとって金銭の多寡の意味はなかった。
彼はまったく金に困っていない男であったからだ。
むしろ、そうしたレブランの金に物を言わせて手に入れようとしている収集家としての言動に、内心カチンと来ていたのだった。
(どうせ、買い求めた魔剣は使うことなく飾っているだけなのだろう。剣は使ってこそのものだ。収集家というものはこれだから)
「お売り出来かねる」
憮然と答えるバーナード騎士団長に対して、なおも教授は執拗に食い下がった。
「もし、私のコレクションの魔剣で欲しいものがあるならば、交換という形でも良いです。ご希望なら、一本といわずに何本とでも交換致しましょう」
それに、大隊長フレデリックは内心驚いて、バーナード騎士団長の手にある白い宝珠の魔剣を凝視してしまった。
(それほど、バーナード騎士団長の魔剣は価値があるものなのか)
何本もの魔剣と引き換えにしても良いと望まれるほど価値のある魔剣とは思えなかった。特に魔法的な効果を発するものではなく、団長曰く、ヴァンドライデンほどではないが、よく斬れる剣だというだけだ。
特徴的なのは、その真っ白い宝珠が美しく見えるくらいであろう。
あまりにも食い下がるレブラン教授の様子に、バーナード騎士団長も戸惑っていたが、彼はあくまでも断っていた。
「この剣は、お売りすることは出来かねる」
そうハッキリと騎士団長は断ったのだった。
バーナードと同席するのは、騎士団長に従ってランディア王国へやって来た王立騎士団大隊長のフレデリックである。
一方のレブランは、同行をせがんだ護衛のイザックを連れて、王宮へとやって来た。
剣士たるイザックは、前回の魔獣をその剣技で圧倒したバーナード騎士団長と是非手合わせをしたいと望んでいた。同席の場で、叶うことならその手合わせの依頼をしたいらしい。
王宮内の応接室に案内をされ、女官が席についた男達の前にお茶を並べて、綺麗に一礼して部屋を退出する。
レブランは忙しい中、面会してくれたことについて丁寧に礼を述べた後、早速、話を切り出したのだった。
「バーナード騎士団長がお持ちの剣ですが、その剣はどちらで手に入れたのでしょうか」
椅子に座り、お茶を口にしていた騎士団長は、カップをソーサーに戻した後、腰の剣に目をやった。
「友人から譲り受けたものだ」
友人といっても、妖精の国の王子だが、そのことをここで告げるわけにはいかないだろう。
それに、レブラン教授はなおも食い下がってきた。
「差支えなければ、ご友人のお名前など伺っても宜しいでしょうか」
「…………」
差支えがあるから、答えることはできない。
そして、まさかレブラン教授からの面会の申し込みが、この剣に関することだったとは考えてもみなかった。
「友人の話はすることは出来ない」
思い返して見れば、このレブランという男は、魔剣の収集家としても有名なのだ。
自分が手にしている魔剣に興味があるのだろう。
バーナードは以前、“氷雪の剣”のオークションの競り合いに負けた苦い記憶を思い出す。
魔剣という魔剣を、金にあかせて買い求めているレブラン教授は、この白い宝珠の剣も手に入れたいと考えているのだろうか。
しかし、この剣はバーナードが初めて“自分のための魔剣”として手に入れたものである。
たとえあと数回で壊れてしまうと言われている魔剣であろうと、思い入れもあった。
友人の話をすることは出来ないと告げられたレブラン教授は、残念そうな様子を見せたが、気を取り直してこう言った。
「剣を見せて頂いても宜しいでしょうか」
「ああ」
そこでバーナードは腰から剣を外し、鞘ごと剣をレブランへ手渡した。
レブランはどこか恭しく両手でその剣を受け取る。
鞘から剣を抜いた後に、柄に埋まる真っ白い宝珠をマジマジと教授は見つめていた。
「……この剣は素晴らしいものです」
レブランの視線が剣を食い入るように見つめていた。
よほど、この剣が気に入ったのだろう。
「バーナード騎士団長、貴方が望むなら、望むだけお支払いしましょう。是非、この剣を売って頂きたい」
そう、レブラン教授は申し出たのだった。
その場にいた男達は、内心皆驚いていた。
レブラン教授が伴っていた護衛の男すらも、驚きの表情を隠せないでいるようだった。
「…………この剣をお売りすることは出来かねる」
そっとレブラン教授の手から白い宝珠の剣を取り上げて、バーナード騎士団長は言った。
そう感じさせまいとしても、バーナード騎士団長の声には冷ややかなものがあった。
騎士の佩いている剣を、その騎士の前で取り上げるように買い求めるとは失礼この上無かった。
収集家というものはこんなにも図々しいものなのだろうかと感じたほどである。
だが、レブラン教授は諦めなかった。
「十億でも、二十億でも言い値で買わせて頂きます。貴殿の望む額をご用意致しましょう」
先日のオークションで、過去最高額を叩き出した“氷雪の剣”でさえも七億である。それを遥かに超える額でも良いと言っているのだ。
だが、バーナードにとって金銭の多寡の意味はなかった。
彼はまったく金に困っていない男であったからだ。
むしろ、そうしたレブランの金に物を言わせて手に入れようとしている収集家としての言動に、内心カチンと来ていたのだった。
(どうせ、買い求めた魔剣は使うことなく飾っているだけなのだろう。剣は使ってこそのものだ。収集家というものはこれだから)
「お売り出来かねる」
憮然と答えるバーナード騎士団長に対して、なおも教授は執拗に食い下がった。
「もし、私のコレクションの魔剣で欲しいものがあるならば、交換という形でも良いです。ご希望なら、一本といわずに何本とでも交換致しましょう」
それに、大隊長フレデリックは内心驚いて、バーナード騎士団長の手にある白い宝珠の魔剣を凝視してしまった。
(それほど、バーナード騎士団長の魔剣は価値があるものなのか)
何本もの魔剣と引き換えにしても良いと望まれるほど価値のある魔剣とは思えなかった。特に魔法的な効果を発するものではなく、団長曰く、ヴァンドライデンほどではないが、よく斬れる剣だというだけだ。
特徴的なのは、その真っ白い宝珠が美しく見えるくらいであろう。
あまりにも食い下がるレブラン教授の様子に、バーナード騎士団長も戸惑っていたが、彼はあくまでも断っていた。
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