345 / 568
第二十三章 砕け散る魔剣
第五話 新たな魔獣の出現(上)
しおりを挟む
ランディア王国の王宮の会議室で、魔術師長がこれまで現れた魔獣や、その召喚に使われた魔法陣について詳細に説明をしていく。
それを真剣な表情で聴いているバーナード騎士団長の姿を、レブランはじっと見つめていた。
レブランのそばには二人の体格の良い男が控えていた。その二人は護衛であった。
一人は常日頃、彼のそばで仕えているゼトゥという無口な大男である。見上げるほど大きい体躯を持つその男は、レブランに仕えて長く、忠誠心も厚かった。
そしてもう一人は、ゼトゥほどの大男ではないが、イザックという名の若い男で、剣士であった。
イザックはボソリと声を潜めて囁く。
「確かに、恐ろしいほどの“魔”を帯びていますね」
そう、バーナード騎士団長はどう見ても人間とは思えない人物であった。
だが、彼は人間として隣国の王家に仕えている。王立騎士団の騎士団長として働いている。
もちろん、魔族の中にもその身を隠して、人間のそばで働いている者も多い。
だが、レブランは長いこと人間の世界で暮らしていたが、彼のような高位魔族を今まで知らなかった。
それゆえに、レブランがこの騎士団長のことを気に留めていることを知っていた。
「手は出さなくていい。彼がどれほど強いものなのか、お手並みを拝見しよう」
そうレブランは言って、二人の護衛の男達に黙って見守るように命じた。
アルセウスの騎士達は二週間の予定でこの国に滞在するという話だった。
ランディア王国の騎士達に同行して、地下水路の見回りし、魔獣の出現を警戒する。
もし二週間の間に魔獣が出現しなければ、一度アルセウスの騎士達は国へ帰ってしまうという。
だから、不謹慎ではあるがレブランは、バーナード騎士団長がこの国にいる間に、魔獣がまた地下水路から現れることを期待していた。
そしてバーナード騎士団長の手で、現れた魔獣を倒して欲しかった。
あの黒髪の騎士団長が、どれほど強いものなのか、それをこの目で直に見てみたかった。
そんなレブランの不謹慎な願いは、彼らが来て九日目に叶うことになった。
地下水路から巨大なエビのような生き物が這い上がってきたという報告が、地下水路を警戒していた騎士達から上がったのだ。
すぐさま双剣を手にハデス騎士団長らが駆け付ける。
(タコ、イカと続いて、次はエビと来たか……本当に海の生き物ばかりだな)
バーナード騎士団長もまた、ランディア王国の騎士達と一緒にそのエビの大型魔獣の前に立った。
大きな鋏を掲げるそのエビは、馬鹿みたいに大きく、バーナード騎士団長は(確かに、こういう生き物が街で暴れてしまえば、大変な被害を被るだろう)と感じた。
前回までのタコやイカの魔獣と違って、凶悪な鋏が両手にある。
攻撃力がありそうだった。その鋏で人間など挟まれては真っ二つだろう。
とりあえず、アルセウスの騎士達はランディアのハデス騎士団長の攻撃を待ってから、大型魔獣に攻撃を加えることを決めていた。
ハデス騎士団長は、二つの剣をスラリと鞘から抜き、両手に構えた。
事前に魔石で魔力は込めているので、双剣の雷撃を使ったとしても魔力不足に陥ることはない。
どこか湾曲したその刃は、今は青白い光に包まれている。それを騎士達は畏れるような眼差しで見つめていた。
(これがランディア王国の王家に伝わる“双剣”か)
二つの剣の刃を触れ合わせると、雷が発生し、それで敵を撃滅するという魔剣であった。
(この魔剣は、剣で戦うものではなく、雷撃を発する“魔道具”といっても良いものだな)
バーナード騎士団長は、その双剣を興味津々と見つめている。
いつの間にかそばまでやって来ていたレブラン教授が、彼に説明するように言った。
「あの二つの刃が触れ合うと同時に、雷が生じます。ただの人間では、一回か、二回程度しかあの剣を振るうことはできないでしょうね。魔力を相当消費するものです」
「…………」
バーナードは黙って、教授の言葉を傾聴する。
「ただ、雷撃としては絶大な威力を持っています。魔術師達のふるう雷撃の魔術の数十倍の威力があるでしょう。耐性がない限りは、一撃で倒されるはずです」
ハデス騎士団長は、二つの剣の刃を触れ合わせる。途端、白い雷撃が凄まじい轟音と共に、その大型魔獣の頭上に落とされた。
空気がビリビリと震えて、地面は黒く焦げてシュウシュウと煙を上げている。
だが、そのエビの大型魔獣は雷撃を受けてなお、動いていたのだった。
それを真剣な表情で聴いているバーナード騎士団長の姿を、レブランはじっと見つめていた。
レブランのそばには二人の体格の良い男が控えていた。その二人は護衛であった。
一人は常日頃、彼のそばで仕えているゼトゥという無口な大男である。見上げるほど大きい体躯を持つその男は、レブランに仕えて長く、忠誠心も厚かった。
そしてもう一人は、ゼトゥほどの大男ではないが、イザックという名の若い男で、剣士であった。
イザックはボソリと声を潜めて囁く。
「確かに、恐ろしいほどの“魔”を帯びていますね」
そう、バーナード騎士団長はどう見ても人間とは思えない人物であった。
だが、彼は人間として隣国の王家に仕えている。王立騎士団の騎士団長として働いている。
もちろん、魔族の中にもその身を隠して、人間のそばで働いている者も多い。
だが、レブランは長いこと人間の世界で暮らしていたが、彼のような高位魔族を今まで知らなかった。
それゆえに、レブランがこの騎士団長のことを気に留めていることを知っていた。
「手は出さなくていい。彼がどれほど強いものなのか、お手並みを拝見しよう」
そうレブランは言って、二人の護衛の男達に黙って見守るように命じた。
アルセウスの騎士達は二週間の予定でこの国に滞在するという話だった。
ランディア王国の騎士達に同行して、地下水路の見回りし、魔獣の出現を警戒する。
もし二週間の間に魔獣が出現しなければ、一度アルセウスの騎士達は国へ帰ってしまうという。
だから、不謹慎ではあるがレブランは、バーナード騎士団長がこの国にいる間に、魔獣がまた地下水路から現れることを期待していた。
そしてバーナード騎士団長の手で、現れた魔獣を倒して欲しかった。
あの黒髪の騎士団長が、どれほど強いものなのか、それをこの目で直に見てみたかった。
そんなレブランの不謹慎な願いは、彼らが来て九日目に叶うことになった。
地下水路から巨大なエビのような生き物が這い上がってきたという報告が、地下水路を警戒していた騎士達から上がったのだ。
すぐさま双剣を手にハデス騎士団長らが駆け付ける。
(タコ、イカと続いて、次はエビと来たか……本当に海の生き物ばかりだな)
バーナード騎士団長もまた、ランディア王国の騎士達と一緒にそのエビの大型魔獣の前に立った。
大きな鋏を掲げるそのエビは、馬鹿みたいに大きく、バーナード騎士団長は(確かに、こういう生き物が街で暴れてしまえば、大変な被害を被るだろう)と感じた。
前回までのタコやイカの魔獣と違って、凶悪な鋏が両手にある。
攻撃力がありそうだった。その鋏で人間など挟まれては真っ二つだろう。
とりあえず、アルセウスの騎士達はランディアのハデス騎士団長の攻撃を待ってから、大型魔獣に攻撃を加えることを決めていた。
ハデス騎士団長は、二つの剣をスラリと鞘から抜き、両手に構えた。
事前に魔石で魔力は込めているので、双剣の雷撃を使ったとしても魔力不足に陥ることはない。
どこか湾曲したその刃は、今は青白い光に包まれている。それを騎士達は畏れるような眼差しで見つめていた。
(これがランディア王国の王家に伝わる“双剣”か)
二つの剣の刃を触れ合わせると、雷が発生し、それで敵を撃滅するという魔剣であった。
(この魔剣は、剣で戦うものではなく、雷撃を発する“魔道具”といっても良いものだな)
バーナード騎士団長は、その双剣を興味津々と見つめている。
いつの間にかそばまでやって来ていたレブラン教授が、彼に説明するように言った。
「あの二つの刃が触れ合うと同時に、雷が生じます。ただの人間では、一回か、二回程度しかあの剣を振るうことはできないでしょうね。魔力を相当消費するものです」
「…………」
バーナードは黙って、教授の言葉を傾聴する。
「ただ、雷撃としては絶大な威力を持っています。魔術師達のふるう雷撃の魔術の数十倍の威力があるでしょう。耐性がない限りは、一撃で倒されるはずです」
ハデス騎士団長は、二つの剣の刃を触れ合わせる。途端、白い雷撃が凄まじい轟音と共に、その大型魔獣の頭上に落とされた。
空気がビリビリと震えて、地面は黒く焦げてシュウシュウと煙を上げている。
だが、そのエビの大型魔獣は雷撃を受けてなお、動いていたのだった。
10
お気に入りに追加
1,152
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる