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第二十章 見失った称号と“夜の君”
第四話 妖精達の“取り換えっ子”
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淫魔である僕はセックスが好きだった。
でも、生まれつきそれが好きだったわけではない。
僕は二十歳になるまで、普通の人間だった。
妖精達の“取り換えっ子”という言葉を知っているだろうか。
悪戯好きな妖精は、人間の赤ん坊と、魔族の赤ん坊を取り換えて遊ぶのだ。
人間達が戸惑い混乱し、泣き喚く様を愉しむ、趣味の悪い遊びだった。
淫魔である僕は、とある国の貴族の赤ん坊と取り替えられ、妖精達に人間のように見える魔法をかけられ、二十歳までずっと自分のことを人間だと信じて疑わなかった。
貴族として、若き官僚として王に仕えていた僕は、ある日、ある時、突然、その魔法が解けたのだ。
それからが悲惨だった。
魔族は人間の世界では忌むべきものだとされている。
魔法が解けた僕は、綺麗だった容姿こそが幸いして、殺されることはなかった。
けれど、首には隷属の首輪をはめられ、僕は淫魔にふさわしい扱いをすると言われ、人間達に犯される。
笑ってしまうのが、今までの友人や家族にまで玩具にされ、抱かれるようになったことだった。
そして美しい僕にハマった彼らから、むしろ僕は精力を搾り取り、廃人にしてやろうと思った。
それが、突然手の平を返した彼らに対する復讐だったからだ。
でも、母として僕を育ててきた女から、刃物を向けられた時(僕は自分でもひどいとは思うけど、彼女の夫や息子の全て寝取っていた)、さすがにもうダメかなと思った。
自暴自棄になった気持ちもあったから、ここいらで死んでもいいかなとも一瞬思っていた。
その時にレブランが、僕を助けてくれたのだ。
顔色も変えず、僕の母親であった女性を殺した彼。
その時、あたりはシンと静まり返っていた。
ネリアやその仲間達が、レブランのそばにやって来て報告する。
「全員始末しました」
屋敷中の人間はネリア達によって一人残らず殺されていた。
それでもレブランは顔色一つ変えなかった。
僕の隷属の首輪を外す。
足元に落ちた首輪。
そして僕に手を差し伸べて言ったのだ。
「一緒に来るか」
僕は当然、頷いた。
僕を救いにやって来てくれたこの人に、この美しい吸血鬼についていかなければならない。
きっと彼は僕を大切にして守ってくれる。
そう、その時の僕は無条件に信じていた。
実際、彼は僕を大切にしてくれた。形だけは。
でも、愛してくれることはなかった。
彼は僕が必要だから、大切にしてくれる。
“淫魔の王女”位を宿らせる淫魔として、彼の駒として僕は大切なのだ。
それは間違いない。
でも、絶対に僕のことを愛してはくれないことも、僕はもう知っていた。
それがたまらなく辛くなる。
頭が空っぽの淫魔ならばよかった。
ただただ、快楽だけに浸りきり深く物事を考えることのない淫魔なら、きっとこんな想いに苦しむことはなかった。
“淫魔の王女”らは、レブランに唆されて、聖王国の神子を襲いにいってまんまと返り討ちに遭って死んでしまった。
だけど、何も考えることの無い、考えることをしない彼女達は、ある意味、苦しむこともなく死ぬことが出来て、幸福だったのじゃないかと思うくらいだ。
考えれば考えるほど、辛くなることはあるのだ。
でも、生まれつきそれが好きだったわけではない。
僕は二十歳になるまで、普通の人間だった。
妖精達の“取り換えっ子”という言葉を知っているだろうか。
悪戯好きな妖精は、人間の赤ん坊と、魔族の赤ん坊を取り換えて遊ぶのだ。
人間達が戸惑い混乱し、泣き喚く様を愉しむ、趣味の悪い遊びだった。
淫魔である僕は、とある国の貴族の赤ん坊と取り替えられ、妖精達に人間のように見える魔法をかけられ、二十歳までずっと自分のことを人間だと信じて疑わなかった。
貴族として、若き官僚として王に仕えていた僕は、ある日、ある時、突然、その魔法が解けたのだ。
それからが悲惨だった。
魔族は人間の世界では忌むべきものだとされている。
魔法が解けた僕は、綺麗だった容姿こそが幸いして、殺されることはなかった。
けれど、首には隷属の首輪をはめられ、僕は淫魔にふさわしい扱いをすると言われ、人間達に犯される。
笑ってしまうのが、今までの友人や家族にまで玩具にされ、抱かれるようになったことだった。
そして美しい僕にハマった彼らから、むしろ僕は精力を搾り取り、廃人にしてやろうと思った。
それが、突然手の平を返した彼らに対する復讐だったからだ。
でも、母として僕を育ててきた女から、刃物を向けられた時(僕は自分でもひどいとは思うけど、彼女の夫や息子の全て寝取っていた)、さすがにもうダメかなと思った。
自暴自棄になった気持ちもあったから、ここいらで死んでもいいかなとも一瞬思っていた。
その時にレブランが、僕を助けてくれたのだ。
顔色も変えず、僕の母親であった女性を殺した彼。
その時、あたりはシンと静まり返っていた。
ネリアやその仲間達が、レブランのそばにやって来て報告する。
「全員始末しました」
屋敷中の人間はネリア達によって一人残らず殺されていた。
それでもレブランは顔色一つ変えなかった。
僕の隷属の首輪を外す。
足元に落ちた首輪。
そして僕に手を差し伸べて言ったのだ。
「一緒に来るか」
僕は当然、頷いた。
僕を救いにやって来てくれたこの人に、この美しい吸血鬼についていかなければならない。
きっと彼は僕を大切にして守ってくれる。
そう、その時の僕は無条件に信じていた。
実際、彼は僕を大切にしてくれた。形だけは。
でも、愛してくれることはなかった。
彼は僕が必要だから、大切にしてくれる。
“淫魔の王女”位を宿らせる淫魔として、彼の駒として僕は大切なのだ。
それは間違いない。
でも、絶対に僕のことを愛してはくれないことも、僕はもう知っていた。
それがたまらなく辛くなる。
頭が空っぽの淫魔ならばよかった。
ただただ、快楽だけに浸りきり深く物事を考えることのない淫魔なら、きっとこんな想いに苦しむことはなかった。
“淫魔の王女”らは、レブランに唆されて、聖王国の神子を襲いにいってまんまと返り討ちに遭って死んでしまった。
だけど、何も考えることの無い、考えることをしない彼女達は、ある意味、苦しむこともなく死ぬことが出来て、幸福だったのじゃないかと思うくらいだ。
考えれば考えるほど、辛くなることはあるのだ。
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