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第十七章 金色の仔犬と最愛の番
第十六話 王家のメダル
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「先日から、近衛に黒い仔犬が紛れ込んできて、近衛の者達が非常に可愛がっていると聞いている。お前のところの金色の仔犬の時のようにな」
「………………」
「私も先ほどのぞいたが、かわいい仔犬であった。勝手に許しなく連れ出されないように、メダルを下賜した」
その言葉に、バートは目を見開いた。
メダルを下賜?
勝手に許しなく連れ出されないように?
あれは、人狼の長の息子で……
バートは目をすがめ、王太子を見つめた。
絞り出すような声で言う。
「左様でございますか。ただあの仔犬は、王家に縛られることは望まないと思います」
ゼイハだけではなく、ディーターも連れだせば良かった。
その後悔が心の中を横切る。
強張っているバートの顔を見つめながら、少し取りなすようにエドワードは続けた。
「縛るつもりはない。今まで通りだ。近衛の騎士達に世話は基本任せる。だが、近衛の手が回らない時は、あの二人の侍従らが面倒を見るだけだ」
「……………」
バートは答えず、一礼して部屋を退出したのだった。
そしてその足で、すぐに近衛騎士団の建物をのぞいてみる。
近衛騎士ジェラルドの足元で、緑色の目を輝かせてじゃれている黒い仔犬のディーター。その茶色の首輪にやや大きめの金色のメダルが下げられていた。
そこには王家の紋章が刻まれていた。
ディーターはその意味を知らない。
そしてただただ無邪気に、恋する近衛騎士に甘えているだけだった。
なお、この日いなくなったもう一匹の黒い仔犬を探して、近衛騎士団長の指揮のもと、近衛騎士達は総動員されていた。
王宮の隅から隅まで探されたが、もう一匹の黒い仔犬ゼイハは見つかることがなく、近衛騎士達を涙に暮れさせたのであった。
「………………」
「私も先ほどのぞいたが、かわいい仔犬であった。勝手に許しなく連れ出されないように、メダルを下賜した」
その言葉に、バートは目を見開いた。
メダルを下賜?
勝手に許しなく連れ出されないように?
あれは、人狼の長の息子で……
バートは目をすがめ、王太子を見つめた。
絞り出すような声で言う。
「左様でございますか。ただあの仔犬は、王家に縛られることは望まないと思います」
ゼイハだけではなく、ディーターも連れだせば良かった。
その後悔が心の中を横切る。
強張っているバートの顔を見つめながら、少し取りなすようにエドワードは続けた。
「縛るつもりはない。今まで通りだ。近衛の騎士達に世話は基本任せる。だが、近衛の手が回らない時は、あの二人の侍従らが面倒を見るだけだ」
「……………」
バートは答えず、一礼して部屋を退出したのだった。
そしてその足で、すぐに近衛騎士団の建物をのぞいてみる。
近衛騎士ジェラルドの足元で、緑色の目を輝かせてじゃれている黒い仔犬のディーター。その茶色の首輪にやや大きめの金色のメダルが下げられていた。
そこには王家の紋章が刻まれていた。
ディーターはその意味を知らない。
そしてただただ無邪気に、恋する近衛騎士に甘えているだけだった。
なお、この日いなくなったもう一匹の黒い仔犬を探して、近衛騎士団長の指揮のもと、近衛騎士達は総動員されていた。
王宮の隅から隅まで探されたが、もう一匹の黒い仔犬ゼイハは見つかることがなく、近衛騎士達を涙に暮れさせたのであった。
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