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第十六章 二人の姫君と黒の指輪
第六話 二人の夜
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そんな思惑を、東方の国からやって来た姫君達が抱いていることなど知らぬフィリップは、その晩はバーナードと共に自身の屋敷へ帰宅し、屋敷の中に入るなり、扉を背に、二人で口づけを長い間交わす。中庭の警備の時からすでに、互いの欲望に火が点いていたのだ。帰宅すればその流れになることは分かっていた。舌と舌を擦り合わせるような口づけに、身体の熱も上がってくる。フィリップの肩に手を回し、バーナードは茶色の瞳でフィリップを見つめる。
「フィリップ」
その名を呼ぶ声も、掠れている。それを聞いているだけで、腰にズキンとくるほど、フィリップは強い欲望を感じた。
互いの身に纏う黒い軍衣を脱がせていくが、これがまた脱がせにくく、バーナードはイライラとした声を上げた。
「糞、破ってしまいたい」
「……団長止めて下さい」
こんなことで乱暴に破るなどとんでもない。フィリップが丁寧にボタンを外していく。
途中でバーナードはフィリップの軍衣を脱がすことを諦めていた。
フィリップは、その黒い軍衣を纏う彼の姿を見ることも好きだったし、自らの手で脱がせていくことも勿論好きだった。バサリと重たげな音を立てて、軍衣が床に落ちる。
その若々しく、筋肉のよくついた肌に舌を這わせ、甘く噛んでいく。
すでにバーナードの欲望も固く天井を向いている。それを優しく扱きながら、腰を抱き上げる。
いつもの彼なら、「こんなところでするな」と怒るところであったが、もはや発情しきっている彼はそれどころではないようだった。
男の身でありながらも、後ろの蕾は十分に濡れている。だから、フィリップはゆっくりと固く張り詰めた自身の男根を突き刺していったのだった。
ゾクゾクとするような快感が身を走るのだろう。バーナードは身を震わせ、切なげに声を漏らす。
「あ………ああ」
何度となくその場所を散らしてきたはずなのに、そこはいつもよく締めて、フィリップを喜ばせていた。まるで別の生き物のように、フィリップの男根を締め上げて男の精を絞り取ろうとする。
「……団長、そんなに……締めないで下さい」
フィリップも荒く息をつき、もたらされる快感に耐えようと眉を寄せている。その様子が壮絶に色っぽかった。
そうは言われても、器用に制御できることではない。
何度となくその腰を掴んで打ち付け、彼もまたそれで感じ入ってしまったのだろう。白濁で前を濡らしている。
そしてフィリップもまた、彼の中に放っていた。
それから場所を変え、何度も何度も求め続ける。
それこそ、飽きることのないくらいに。
事が終わった後、身を寄せ合って眠りにつこうとしたその時、バーナードはうっすらと目を開けて、思い出したようにこう言った。
「そうだ……急だが、来週に隣国へ行くことになった」
「随分と急ですね」
「ああ」
ため息をついている彼の頬にそっと口づける。バーナードの首元には行為の最中にフィリップが噛みついた跡がついていた。最近になってようやく、バーナードはフィリップに噛まれることを諦めるようになった。
どんなに注意しても怒っても、時に蹴り飛ばしても、フィリップは聞かないのだ。油断していると、首筋にかぶりついている。
狼の姿に変化した時ならまだしも、人間の男がこうも首に噛みつきたがるのは変だ。どんなに変だ、おかしいと言い聞かせても、聞くことはない。
「バーナード」
その名を耳元で囁き、フィリップはバーナードをうつぶせに倒した。腰を抱き上げる。
「もう……眠い」
中庭の警備の疲れもあり、また先刻まで激しく求め合った行為の疲れもあって、急速に睡魔が襲ってきた。
トロトロとしたその眠たげな様子に、フィリップはうっすらと口元に笑みを浮かべて言った。
「調べたのですが、こう後ろから首筋を噛んで」
チロリとその彼の、未だ噛み跡の残るうなじを舐める。ゾクリと震える彼の感度の良さを見つめながら、抱き上げた腰の双丘の蕾に、また固くなりつつあるソレを押し付ける。
注ぎ続けていた白濁のぬめりを借りて、その亀頭からヌルリと入って行く。
「あっ……」
またそこを拓かれていく感覚に、彼の茶色の瞳が開かれた。
ズブズブとそれが奥深くまで挿入されていく。根本まで深々と入った後に、うつぶせになったその首筋を噛んだまま、腰を打ち付ける。
ピッタリと重なり合った体。ズチャズチャという粘膜を擦り上げるその淫らな音。蕾から溢れ出して太腿を流れ落ちる白くねっとりとした男の精。
「こうして、獣は雌の首筋を噛んで押さえつけて、孕むまで後ろから犯すのですよ」
「フィリップ……」
シーツを鷲掴み、彼は喘ぎ、身を拓かれるその感覚にたちまち昇りつめていた。そして最奥まで深々と挿入されると、彼は身を震わせて絶頂していた。
「だめだっ。もう」
彼の前の欲望も擦り上げて高ぶらせると、どこか苦し気な表情で精を放っていた。
行為が終わり、荒く息をついているバーナードはフィリップを睨みつける。
「首を噛みながら、するな」
フィリップは未だ挿入されているその接合部に指で触れる。
「隣国に行く前に、よく跡をつけていかないと」
「人の話を聞いているのか!!」
「聞いていますよ」
そして後ろを振り向かせて、ちゅっと音を立ててその唇に口づける。
「隣国へは、何をしに行かれるのですか」
「陛下から、隣国の魔術師長への依頼があり、その依頼にまつわる品を届けに行く。マグルも同行する」
王宮副魔術師長で、バーナードの親友であるマグルも同行を命ぜられていた。
「王立騎士団長、王宮副魔術師長まで同行するとは。よほどの品なのですね」
「国宝品の修理の依頼らしい」
国宝品と聞いて驚くフィリップに、続けてバーナードは告げた。
「“黒の指輪”の修理だという」
その品の名を聞いた時、さすがのフィリップも言葉を失っていた。
「フィリップ」
その名を呼ぶ声も、掠れている。それを聞いているだけで、腰にズキンとくるほど、フィリップは強い欲望を感じた。
互いの身に纏う黒い軍衣を脱がせていくが、これがまた脱がせにくく、バーナードはイライラとした声を上げた。
「糞、破ってしまいたい」
「……団長止めて下さい」
こんなことで乱暴に破るなどとんでもない。フィリップが丁寧にボタンを外していく。
途中でバーナードはフィリップの軍衣を脱がすことを諦めていた。
フィリップは、その黒い軍衣を纏う彼の姿を見ることも好きだったし、自らの手で脱がせていくことも勿論好きだった。バサリと重たげな音を立てて、軍衣が床に落ちる。
その若々しく、筋肉のよくついた肌に舌を這わせ、甘く噛んでいく。
すでにバーナードの欲望も固く天井を向いている。それを優しく扱きながら、腰を抱き上げる。
いつもの彼なら、「こんなところでするな」と怒るところであったが、もはや発情しきっている彼はそれどころではないようだった。
男の身でありながらも、後ろの蕾は十分に濡れている。だから、フィリップはゆっくりと固く張り詰めた自身の男根を突き刺していったのだった。
ゾクゾクとするような快感が身を走るのだろう。バーナードは身を震わせ、切なげに声を漏らす。
「あ………ああ」
何度となくその場所を散らしてきたはずなのに、そこはいつもよく締めて、フィリップを喜ばせていた。まるで別の生き物のように、フィリップの男根を締め上げて男の精を絞り取ろうとする。
「……団長、そんなに……締めないで下さい」
フィリップも荒く息をつき、もたらされる快感に耐えようと眉を寄せている。その様子が壮絶に色っぽかった。
そうは言われても、器用に制御できることではない。
何度となくその腰を掴んで打ち付け、彼もまたそれで感じ入ってしまったのだろう。白濁で前を濡らしている。
そしてフィリップもまた、彼の中に放っていた。
それから場所を変え、何度も何度も求め続ける。
それこそ、飽きることのないくらいに。
事が終わった後、身を寄せ合って眠りにつこうとしたその時、バーナードはうっすらと目を開けて、思い出したようにこう言った。
「そうだ……急だが、来週に隣国へ行くことになった」
「随分と急ですね」
「ああ」
ため息をついている彼の頬にそっと口づける。バーナードの首元には行為の最中にフィリップが噛みついた跡がついていた。最近になってようやく、バーナードはフィリップに噛まれることを諦めるようになった。
どんなに注意しても怒っても、時に蹴り飛ばしても、フィリップは聞かないのだ。油断していると、首筋にかぶりついている。
狼の姿に変化した時ならまだしも、人間の男がこうも首に噛みつきたがるのは変だ。どんなに変だ、おかしいと言い聞かせても、聞くことはない。
「バーナード」
その名を耳元で囁き、フィリップはバーナードをうつぶせに倒した。腰を抱き上げる。
「もう……眠い」
中庭の警備の疲れもあり、また先刻まで激しく求め合った行為の疲れもあって、急速に睡魔が襲ってきた。
トロトロとしたその眠たげな様子に、フィリップはうっすらと口元に笑みを浮かべて言った。
「調べたのですが、こう後ろから首筋を噛んで」
チロリとその彼の、未だ噛み跡の残るうなじを舐める。ゾクリと震える彼の感度の良さを見つめながら、抱き上げた腰の双丘の蕾に、また固くなりつつあるソレを押し付ける。
注ぎ続けていた白濁のぬめりを借りて、その亀頭からヌルリと入って行く。
「あっ……」
またそこを拓かれていく感覚に、彼の茶色の瞳が開かれた。
ズブズブとそれが奥深くまで挿入されていく。根本まで深々と入った後に、うつぶせになったその首筋を噛んだまま、腰を打ち付ける。
ピッタリと重なり合った体。ズチャズチャという粘膜を擦り上げるその淫らな音。蕾から溢れ出して太腿を流れ落ちる白くねっとりとした男の精。
「こうして、獣は雌の首筋を噛んで押さえつけて、孕むまで後ろから犯すのですよ」
「フィリップ……」
シーツを鷲掴み、彼は喘ぎ、身を拓かれるその感覚にたちまち昇りつめていた。そして最奥まで深々と挿入されると、彼は身を震わせて絶頂していた。
「だめだっ。もう」
彼の前の欲望も擦り上げて高ぶらせると、どこか苦し気な表情で精を放っていた。
行為が終わり、荒く息をついているバーナードはフィリップを睨みつける。
「首を噛みながら、するな」
フィリップは未だ挿入されているその接合部に指で触れる。
「隣国に行く前に、よく跡をつけていかないと」
「人の話を聞いているのか!!」
「聞いていますよ」
そして後ろを振り向かせて、ちゅっと音を立ててその唇に口づける。
「隣国へは、何をしに行かれるのですか」
「陛下から、隣国の魔術師長への依頼があり、その依頼にまつわる品を届けに行く。マグルも同行する」
王宮副魔術師長で、バーナードの親友であるマグルも同行を命ぜられていた。
「王立騎士団長、王宮副魔術師長まで同行するとは。よほどの品なのですね」
「国宝品の修理の依頼らしい」
国宝品と聞いて驚くフィリップに、続けてバーナードは告げた。
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その品の名を聞いた時、さすがのフィリップも言葉を失っていた。
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