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第十五章 王立魔術学園の特別講師
第五話 魔剣の収集家
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王立魔術学園に行った時、バートの前でアーゼンとアンドレは隣国のオークションで落札されたという魔剣の話を持ち出した。
飛び抜けて高額な金額で落札されたものだから、新聞記事にもなったのだ。
そしてバートが魔剣に興味があることを知っていたため、わざわざ彼の前で話題にしていた。
よもや彼らは、バートが騎士団長として入札し、その高額な入札金争いに加わり、負けたことなど知る由もなかった。
「最終的には七億クランで落札されたという話だね」
「前回の二倍を超える金額になるとは思わなかった。魔剣の落札金額としては史上最高値らしいよ」
アーゼンとアンドレがそう話していると、バートはなぜか元気の無さそうな様子でうなずいた。
「……魔剣の収集家が……落札したという話だ。そんな収集家なんているのだな」
「収集家というのは、何にたいしてもいるからね。だいたいとんでもない金持ちじゃないと収集はできないだろうし」
そのアーゼンの言葉に、セオドリック=モンテスキューも会話に加わった。
「落札した魔剣の収集家は、レブラン=リヒテンシュタイン教授だよ。魔法学で名の知れた教授だ」
オークションの開催地である隣国の貴族の息子だけあって、セオドリックは詳しいようだ。
「時々、この王立魔術学園にも特別講師として呼ばれることがある」
レブラン教授の名を耳にしたルーシーがまた上擦った声を上げている。
「レブラン教授、また学園に教えに来てくれないかしら!! あの門の前の騎士様と同じくらいの美形なのよ!!」
ルーシーは美形に目がないらしい。
アーゼン、アンドレ、そしてセオドリックも微妙な視線を彼女に向けている。
「教授ということで、年こそいっていらっしゃるけれど、渋くて本当に紳士という感じで素敵なのよ。銀髪のナイスミドルで、私達女子生徒の憧れの教授なの」
彼女の力説に、アーゼンもアンドレ、セオドリック、そしてバートも「はぁ」と力なく相槌を打つしかなかった。
その銀髪のナイスミドルだという教授に、バーナードは入札で負けたのだ。
「教授というのはそんなに儲かる仕事なのか。七億クランも出せ、他にも魔剣を集めるというのは相当な資金力が無いと無理だろう」
そのバートの疑問の言葉に、レブランは頷いた。
「レブラン教授は我が国の貴族で伯爵位にあり、かつ手広く商売もされている」
ナイスミドルで有名な教授で、商売上手で金持ちとなると最強ではないかと、内心バートは呟いていた。
「おまけに独身だ。我が国の女性たちの憧れの人でもある」
「我が国の女性も教授に憧れているわ!!」
ルーシーが力強く言うのを、少年達は聞き流していた。
「教授が魔剣の収集家ということは、何本もすでに魔剣を持っているのか」
バートの問いかけに、セオドリックは頷く。
「すでに何十本も魔剣を持っている噂はあるね。誰にもそのコレクションは見せてくれないけど。教授は冒険者ギルドを通じて魔剣の高値買い取りをする旨の告知を出しているらしい。だから、普通ならオークションに魔剣が出る前に彼の元へと流れることが多い。そのせいもあって、魔剣をたくさん持っている話は聞く」
「……そいつのせいなのか」
バートは小さく呟いた。
市場に魔剣が流れて来ないわけだった。
教授が買い占めているせいで、市場に流れて来ない。
高額で買い取りをするとはなんだと、バートは内心憤っていた。
「何でそんなに魔剣を買い取ったりしているんだ」
「さぁ、何でだろうね。大抵の魔剣はひどく美しいから、そのせいじゃないかという話を聞く。きっと教授にも理由があるのだろうけれど、さすがにその理由も知らないな」
そうセオドリックは答えていた。
大抵の魔剣はひどく美しいから。
そのセオドリックの答えに、バートも内心頷いていた。
確かに魔剣はひどく美しい。
竜剣ヴァンドライデンは、青く輝く刀身を持つ。
エルドランド王国の“白虹の剣”は白く虹のような輝きを放ち、美しい精霊達が刀身にまとわりつく。
聖王国の神剣は、鏡のような銀色の輝きを持つ、悪しき者を払う剣だった。
いずれの剣も、見る者の心を奪うほどに美しい。
そうした美しい魔剣を収集する教授。
その教授自身も、ルーシーに言わせると相当な美形らしいという。
だが、剣を競り負けたバーナードとしては、会ったこともないその教授に対して不満しかなかった。
たとえルーシーをはじめとした娘達が褒め称え、その学識の高さも賞賛されるような素晴らしい教授だとしても、バーナードとしては認める気も起きなかった。
大人気ないと自分でもわかっていた。
飛び抜けて高額な金額で落札されたものだから、新聞記事にもなったのだ。
そしてバートが魔剣に興味があることを知っていたため、わざわざ彼の前で話題にしていた。
よもや彼らは、バートが騎士団長として入札し、その高額な入札金争いに加わり、負けたことなど知る由もなかった。
「最終的には七億クランで落札されたという話だね」
「前回の二倍を超える金額になるとは思わなかった。魔剣の落札金額としては史上最高値らしいよ」
アーゼンとアンドレがそう話していると、バートはなぜか元気の無さそうな様子でうなずいた。
「……魔剣の収集家が……落札したという話だ。そんな収集家なんているのだな」
「収集家というのは、何にたいしてもいるからね。だいたいとんでもない金持ちじゃないと収集はできないだろうし」
そのアーゼンの言葉に、セオドリック=モンテスキューも会話に加わった。
「落札した魔剣の収集家は、レブラン=リヒテンシュタイン教授だよ。魔法学で名の知れた教授だ」
オークションの開催地である隣国の貴族の息子だけあって、セオドリックは詳しいようだ。
「時々、この王立魔術学園にも特別講師として呼ばれることがある」
レブラン教授の名を耳にしたルーシーがまた上擦った声を上げている。
「レブラン教授、また学園に教えに来てくれないかしら!! あの門の前の騎士様と同じくらいの美形なのよ!!」
ルーシーは美形に目がないらしい。
アーゼン、アンドレ、そしてセオドリックも微妙な視線を彼女に向けている。
「教授ということで、年こそいっていらっしゃるけれど、渋くて本当に紳士という感じで素敵なのよ。銀髪のナイスミドルで、私達女子生徒の憧れの教授なの」
彼女の力説に、アーゼンもアンドレ、セオドリック、そしてバートも「はぁ」と力なく相槌を打つしかなかった。
その銀髪のナイスミドルだという教授に、バーナードは入札で負けたのだ。
「教授というのはそんなに儲かる仕事なのか。七億クランも出せ、他にも魔剣を集めるというのは相当な資金力が無いと無理だろう」
そのバートの疑問の言葉に、レブランは頷いた。
「レブラン教授は我が国の貴族で伯爵位にあり、かつ手広く商売もされている」
ナイスミドルで有名な教授で、商売上手で金持ちとなると最強ではないかと、内心バートは呟いていた。
「おまけに独身だ。我が国の女性たちの憧れの人でもある」
「我が国の女性も教授に憧れているわ!!」
ルーシーが力強く言うのを、少年達は聞き流していた。
「教授が魔剣の収集家ということは、何本もすでに魔剣を持っているのか」
バートの問いかけに、セオドリックは頷く。
「すでに何十本も魔剣を持っている噂はあるね。誰にもそのコレクションは見せてくれないけど。教授は冒険者ギルドを通じて魔剣の高値買い取りをする旨の告知を出しているらしい。だから、普通ならオークションに魔剣が出る前に彼の元へと流れることが多い。そのせいもあって、魔剣をたくさん持っている話は聞く」
「……そいつのせいなのか」
バートは小さく呟いた。
市場に魔剣が流れて来ないわけだった。
教授が買い占めているせいで、市場に流れて来ない。
高額で買い取りをするとはなんだと、バートは内心憤っていた。
「何でそんなに魔剣を買い取ったりしているんだ」
「さぁ、何でだろうね。大抵の魔剣はひどく美しいから、そのせいじゃないかという話を聞く。きっと教授にも理由があるのだろうけれど、さすがにその理由も知らないな」
そうセオドリックは答えていた。
大抵の魔剣はひどく美しいから。
そのセオドリックの答えに、バートも内心頷いていた。
確かに魔剣はひどく美しい。
竜剣ヴァンドライデンは、青く輝く刀身を持つ。
エルドランド王国の“白虹の剣”は白く虹のような輝きを放ち、美しい精霊達が刀身にまとわりつく。
聖王国の神剣は、鏡のような銀色の輝きを持つ、悪しき者を払う剣だった。
いずれの剣も、見る者の心を奪うほどに美しい。
そうした美しい魔剣を収集する教授。
その教授自身も、ルーシーに言わせると相当な美形らしいという。
だが、剣を競り負けたバーナードとしては、会ったこともないその教授に対して不満しかなかった。
たとえルーシーをはじめとした娘達が褒め称え、その学識の高さも賞賛されるような素晴らしい教授だとしても、バーナードとしては認める気も起きなかった。
大人気ないと自分でもわかっていた。
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