騎士団長が大変です

曙なつき

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【短編】

王太子の見る夢

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 夢を見た。

 これはいつも、バーナードが見せてくれる夢だろうとすぐにわかった。
 淫魔であるバーナードは、他人に望む夢を見せてくれる。
 彼に対して、私は夢を見せるように願い、そして彼はそれを叶えると言った。

 だからここ最近、毎夜の如く夢を見ていた。
 夢を見るようになって良かったことは、欲のコントロールが利くようになり、同時に魔力のコントロールの不安定さが無くなったことだった。
 妃のセーラが妊娠、出産しており、彼女が私の相手をすることも難しい。
 そんな中、バーナードが私に夢を見せ、欲を発散させてくれるようになったことは正直助かっていた。

 今日見た夢は、先日、彼を霊樹に連れていった出来事の再現であった。

 あの日、彼のために、純白の衣装を用意した。
 その衣装の色合いと豪華さに、彼は戸惑いを抱いているようだったが、それを口にすることはなかった。
 内心ではおかしいと思う気持ちもあったはずだ。
 まるで、婚礼の衣装のような純白の衣装を用意されたことに。

 彼は知らない。
 “王統譜”に密かに自分の名が書き込まれていることを知らない。
 
 少年の姿の時に名乗るその名を刻み、婚礼の白の衣装をまとわせ、王家の庭へ連れていく。

 王家の人間以外立ち入りを許されないその庭に、彼は入ることを許された。

 つまりは、彼は私の妃の一人として認められ、王家の一員と見なされたのだ。
 そのことを彼は知らない。




 現実での彼は、私のことを変態だと罵ったこともある。
 王太子の自分をこうも変態呼ばわりするのは彼だけだった(普通ならば不敬罪でひっ捕らえられるだろう)。
 その心意気は嫌いではないが、変態と呼ばれるのは頂けなかった。

 霊樹のたもと、純白の衣装を着た彼は凛として綺麗だった。
 口づけをすると、夢の中の彼は素直に唇を開いて、応えてくれる。
 散々その唇を貪った後、上気した彼の耳元で囁く。

「お前は私の妃になったのだ」

 現実では告げることの出来ない言葉を、夢の中で教え込む。

「バート、お前は私の妃だ」

 そこに妖精達が現れ、合唱するように声を揃えていう。

「お妃様になった」
「お妃様になった」
「霊樹のたもとで」
「選ばれたお妃様になった」

 飛び回る妖精達をバートは見つめ続ける。
 その身を抱きしめ、下の衣をまくり上げようとすると、彼は言う。

「こんな場所でいけません」

 現実の彼ならば絶対にこれ以上先の行為を許さないだろう。
 だが、ここは私の夢の中だった。
 

 衣の下の、彼の下肢はあの紐パンと彼が嫌悪して呼んだ淫らな下着をつけていた。
 前のふくらみを手で触れて擦り上げると、私にすがりついてくる。

「殿下……」

 現実の彼は、「あんな紐パン、履けるわけがないだろう!!!!」と激怒していたのに。今はそのたよりない下着を下肢に履いている。その下着をずらして指を後孔に一本入れると、彼は大きく身を震わせた。

「だめです、こんなところで」

「その方が興奮するだろう」

「殿下」

 目元を朱に染めて見返す彼を見ていると高ぶりが抑え切れなくなる。
 飛び回る妖精達は、霊樹のそばに布を運んで来て、そこで彼を抱くための準備をしてくれる。
 白い布の上に彼を横たえ、サイドを止める下着の紐を解いた。
 今や固く張り詰めている彼の欲望をためらうことなく口に含んだ。同時に、彼の後ろに指を追加で入れる。二本の指で襞を擦り上げるように擦りつつ、彼の前を舌で舐め、口で吸うように奉仕すると、彼は耐えられないように身をひくつかせる。

「あっ、あああ」

 快楽に弱い彼はたちまち堕ちていく。ビクビクと四肢を大きく震わせ、私の口内に白濁を吐き出す。その細い腰は震え、後孔もぎゅっと咥え込んだ指を熱く締め付けたのだった。ぬるぬるとした感触が指に伝わる。淫魔である彼が男を欲している反応だった。自ら淫らに濡れていく。
 彼に私の上に乗るように促すと、夢の中では従順な彼は、望むままに私の上に跨った。
 まだ興奮が続いているのだろう。その前の欲望も芯を持ったように固くなっている。そして後ろは太腿に滴るほど濡れていた。

 私の欲望を手で掴み、そっと自身の後孔に触れさせる。
 自らを散らすため、彼はゆっくりと腰を下ろしていった。



   *



 バーナード騎士団長が王宮へ、業務の報告のためにやって来た。
 王宮の会議室で、最近の王都の森の魔獣について報告をしている彼の凛々しい顔を見つめ、そして昨夜の夢の中の淫らな少年の姿を思い出す。

 あのように夢の中で彼を抱いていることを、彼は薄々気付いている。
 気付いていながらもなお、彼はそこから目を逸らしている。
 
 傍らのフィリップ副騎士団長は、常に警戒するように私を見る。

 だけど副騎士団長も、すでに少年の彼の名が、王統譜に刻まれていることを知らない。
 そのことに仄暗い喜びを覚えていた。
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