騎士団長が大変です

曙なつき

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【短編】

騎士団の夏の野外訓練 (3)

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 休暇が四日間しかないのであれば、移動は王宮副魔術師マグルに転移魔法で飛ばしてもらうのが良いだろうと、フィリップはその手配もすることになった。
 マグルは快く依頼を引き受けてくれる。

 バーナードは鼻歌まじりで楽しそうに旅行の準備を進めている。
 相変わらず、伸縮式の釣り竿などを詰め込もうとしていたので、フィリップはそっとそれらを荷物から外していた。
 四日間しかないのである。釣りなどしている時間はない。
 
 とはいえ、四日間のうち、討伐をするのは前半二日間であり、後半二日間はまったり観光予定であった。
 二人きりで四日間、休暇を過ごすことが楽しみである。
 北方地方はかつて、遠征討伐で何度か行ったことがあった。

 宿泊予定の宿も少しいい宿を手配した。
 いよいよ、北方地方旅行の始まりである。



 王国の北は、王都の中央部とはガラリと気候が異なり、冬は極寒であり、夏は涼しい。避暑をする者達も多く、白樺の樹木の並ぶ中、貴族や豪商の別荘が立ち並ぶ地域もある。
 マグルの転移魔法で飛んだ先は、北方騎士団の拠点の建物の転移魔法陣であった。
 事前に連絡がされていたため、バーナードとフィリップの二人が魔法の力で拠点に現れたと同時に、北方騎士団の騎士団長ヘンドリックと副騎士団長イライザの出迎えを受けた。
 北方騎士団長と副騎士団長の二人に会うのはおよそ二年ぶりになる。熊のような大男のヘンドリック騎士団長は、バーナードらが現れると同時に「久しぶりだな、バーナード、フィリップ!!」とガシリと抱きついてきた。

「ああ、久しぶりだな」

 相変わらずの暑苦しい歓迎ぶりに、若干バーナードは苦笑いをしている。傍らの赤毛の美女の副騎士団長イライザはため息まじりで「そんな抱き着いてもお二方はいなくなりませんよ」と言っていた。
 
「四日間しかおらぬという話ではないか。もっと長く逗留すべきだぞ」

「騎士団長と副騎士団長の二人が同時に取れる夏季休暇は最大で四日間が限度です」

 なおもイライザが注意するように言うと、ヘンドリック北方騎士団長は「十日間くらいとっても構わんだろう!! 戦時じゃないのだから」と我儘を言っていた。
 それにイライザとフィリップは顔を見合わせていた。

「バーナードが男と結婚するとはな!!」

 フィリップと結婚後、このヘンドリック北方騎士団長に会うのは初めてである。
 バーナードはジロリとヘンドリックを睨んだ。

「何が言いたい」

「いやいや、お前ならよりどりみどりだったろうに。よほど花嫁のフィリップが素晴らしかったのだろうということだ。確かに、お前の副騎士団長はとびきりの美人だ!!」

 大声で笑いながら、バシバシとバーナードの肩を叩くヘンドリック北方騎士団長。

「ああ、美人で素晴らしい花嫁だ。否定しない」

 そう言うバーナードに、イライザは「あらあら」と言った様子で口元に手を当て、ヘンドリックも率直な彼の言葉に少しばかり毒気を抜かれていた。
 そんな北方騎士団の二人に、バーナードは言った。

「手紙でも知らせていたが、北ガンガルドの森で魔獣討伐を行いたい。俺とフィリップ二人でやるつもりだ。構わないだろう?」

「ああ、有難いくらいだ。ドンドンやってくれ!!」

 その言葉に、バーナードはまたニヤリと笑っていた。

「大いにやらせてもらうつもりだ」

「それで、夜は空いているんだろう? いい店を押さえてある。酒も揃っているぞ!!」

 酒の席の誘いに、バーナードは頷いていた。
 
「それは楽しみだ。この地方の酒はうまいからな」

「そう言うと思った!! 俺はバーナードに久しぶりに会えて嬉しいぞ!! 今宵は一緒に飲み明かそう!!」

 再び熊のような大男に抱きしめられるバーナード。ヘンドリックの身体は並外れて大きいため、体格の良いバーナードでさえ大柄な母熊に抱かれる小熊のような有様である。その暑苦しい抱擁に苦笑いしている一方、ひんやりとした冷気がフィリップから漂ってくるような気がした。
 少しばかり後ずさっているイライザ北方副騎士団長を見て、どうやらその冷気は気のせいではないようだ。

「……宿に荷物を置きに行きましょう。団長」

「ああ」

 バーナードはヘンドリックらに別れを告げると、今日から宿泊予定の宿に荷物を置きに行った。
 道中、当然のことながらフィリップは不機嫌であった。

「以前から思っていましたが、ヘンドリック北方騎士団長は貴方に馴れ馴れしいです」

「あいつとは、騎士学校で同期だ。仕方ないだろう。久しぶりに会えてお互い嬉しいのだから」

 およそ十年間同じ学校に通うのである。同期の仲は非常に良い。 
 今でもよく連絡を取り合っている。

「それに、俺は本当にお前は素晴らしい花嫁だと思っているぞ」

 バーナードが笑ってフィリップの金の髪を掻き混ぜるようにすると、フィリップは吹き出した。

「私もそう思っていますよ、バーナード騎士団長」
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