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【短編】
騎士団の夏の野外訓練 (1)
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王都の森で野外訓練を行う時期になった。
野外訓練は年に数回行っているが、夏の終わりの時期の野外訓練は毎年行っている。
王立騎士団の主な任務は、王都周辺の魔獣討伐である。王都の治安維持は警備隊が担っており、王家の警護は近衛騎士団が担っている。なお、他国の侵攻があった場合、王立騎士団、近衛騎士団や副都などの周辺都市の騎士団が再編成されて対応するが、主力は王立騎士団と近衛騎士団になることは間違いない。国境警備を行っている辺境の騎士団もあり、王国は半島の中でも相応の軍事力を備えていた。
今回の王都の森での野外訓練は、魔獣を敵と想定して行うものである。
騎士団内を小部隊に分け、森の中の魔獣を討伐させる。
従来、副騎士団長以下の騎士達が参加するものであったが、今年の訓練に、バーナード騎士団長はフィリップ副騎士団長を参加させることを止めさせた。
「……どうしてですか」
団長室で二人きりになった時、問いかけるフィリップ副騎士団長に、バーナード騎士団長はハッキリと告げた。
「お前を参加させると、公平性が無くなるからだ」
「……………」
「目がよく、鼻が利き、耳も聡いお前がいる部隊が圧勝するだろう。間違いない。それが部隊全体で良いのかというと、良くはない。これから毎年、お前のいる部隊だけが圧勝し続けることになる」
フィリップはぐっと拳を握り締めた。
否定できない。
人狼の呪いを受けたフィリップは、人間離れした力を手に入れていた。
「俺は、騎士団全体の向上を目指している。個人プレイを見たいわけではない。……まぁ、全く見たくないというわけではないのだぞ」
バーナードは少し落ち込んでいるフィリップの手を取った。彼の青い目を見つめて言う。
「お前の活躍だってみたいと思っている。それを我慢しているんだ。わかってくれ」
それにフィリップは頬を紅潮させ、バーナードの茶色の瞳を見つめ返して呟くように言った。
「ずるい。団長はずるいです。そんな風に言われたら、私も……私も我慢するしかないじゃないですか」
「参加を我慢してくれるな」
「……参加しません。我慢します」
正直にいえば、森の野外訓練に参加することをフィリップは楽しみにしていた。
自然に溢れた環境の中、活動することについて、恐らく人狼の呪いを受けたせいだろう、非常に心が躍るのだ。きっと自分は誰よりも早く走ることができて、敵も察知し、倒すことができたはずだ。
そんな勇姿を、団長にも見て欲しかった気持ちもあった。
でも、バーナードは参加をやめろという。
彼の言葉も理解できる。もはや人の身であることをやめたフィリップに、他の人間の騎士達の実力ではとても敵わない。そして、そうした人離れした力を持つことを、他の人間達の前で明らかにすることは良いことではない。
そもそも魔族は忌むべき存在だ。もし二人が人間ではない、魔族であると知られたら、たとえこれまでどんなに素晴らしい功績があろうとも、排斥される。疑問を抱かれないように、目立たない方が良いのだ。
「訓練期間は三日間だ。お前は俺と一緒に、本部席を温めることになる。いい機会だ。溜まっていた書類仕事を全部終わらせよう」
ぽんとバーナードが肩を叩いてくる。
確かに書類仕事も溜まっている。フィリップは苦笑しながらうなずいた。
「わかりました、団長。持てる限りたくさんの書類を持ち込みます。覚悟してくださいね」
それにバーナード騎士団長は若干、嫌そうな顔をしていた。
野外訓練は年に数回行っているが、夏の終わりの時期の野外訓練は毎年行っている。
王立騎士団の主な任務は、王都周辺の魔獣討伐である。王都の治安維持は警備隊が担っており、王家の警護は近衛騎士団が担っている。なお、他国の侵攻があった場合、王立騎士団、近衛騎士団や副都などの周辺都市の騎士団が再編成されて対応するが、主力は王立騎士団と近衛騎士団になることは間違いない。国境警備を行っている辺境の騎士団もあり、王国は半島の中でも相応の軍事力を備えていた。
今回の王都の森での野外訓練は、魔獣を敵と想定して行うものである。
騎士団内を小部隊に分け、森の中の魔獣を討伐させる。
従来、副騎士団長以下の騎士達が参加するものであったが、今年の訓練に、バーナード騎士団長はフィリップ副騎士団長を参加させることを止めさせた。
「……どうしてですか」
団長室で二人きりになった時、問いかけるフィリップ副騎士団長に、バーナード騎士団長はハッキリと告げた。
「お前を参加させると、公平性が無くなるからだ」
「……………」
「目がよく、鼻が利き、耳も聡いお前がいる部隊が圧勝するだろう。間違いない。それが部隊全体で良いのかというと、良くはない。これから毎年、お前のいる部隊だけが圧勝し続けることになる」
フィリップはぐっと拳を握り締めた。
否定できない。
人狼の呪いを受けたフィリップは、人間離れした力を手に入れていた。
「俺は、騎士団全体の向上を目指している。個人プレイを見たいわけではない。……まぁ、全く見たくないというわけではないのだぞ」
バーナードは少し落ち込んでいるフィリップの手を取った。彼の青い目を見つめて言う。
「お前の活躍だってみたいと思っている。それを我慢しているんだ。わかってくれ」
それにフィリップは頬を紅潮させ、バーナードの茶色の瞳を見つめ返して呟くように言った。
「ずるい。団長はずるいです。そんな風に言われたら、私も……私も我慢するしかないじゃないですか」
「参加を我慢してくれるな」
「……参加しません。我慢します」
正直にいえば、森の野外訓練に参加することをフィリップは楽しみにしていた。
自然に溢れた環境の中、活動することについて、恐らく人狼の呪いを受けたせいだろう、非常に心が躍るのだ。きっと自分は誰よりも早く走ることができて、敵も察知し、倒すことができたはずだ。
そんな勇姿を、団長にも見て欲しかった気持ちもあった。
でも、バーナードは参加をやめろという。
彼の言葉も理解できる。もはや人の身であることをやめたフィリップに、他の人間の騎士達の実力ではとても敵わない。そして、そうした人離れした力を持つことを、他の人間達の前で明らかにすることは良いことではない。
そもそも魔族は忌むべき存在だ。もし二人が人間ではない、魔族であると知られたら、たとえこれまでどんなに素晴らしい功績があろうとも、排斥される。疑問を抱かれないように、目立たない方が良いのだ。
「訓練期間は三日間だ。お前は俺と一緒に、本部席を温めることになる。いい機会だ。溜まっていた書類仕事を全部終わらせよう」
ぽんとバーナードが肩を叩いてくる。
確かに書類仕事も溜まっている。フィリップは苦笑しながらうなずいた。
「わかりました、団長。持てる限りたくさんの書類を持ち込みます。覚悟してくださいね」
それにバーナード騎士団長は若干、嫌そうな顔をしていた。
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