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第十四章 王家の庭の霊樹
第五話 霊樹のたもとで叫ぶ騎士団長
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「お前と肉体関係があるからだろう」
殿下のストレートな答えに、バートは動揺した。
「…………………」
「今、私と肉体的にきちんと最後まで交わることができるのは、セーラとバート、お前だけだ。だから、お前はこの“王家の庭”に入る資格がある」
エドワード王太子はぎゅっとバートの細身を抱きしめた。
実際にはそれだけではない。
“王統譜”にその名を刻むことで、彼は正式な妃の身分を手に入れていたのだ。
だが、その“王統譜”に彼の名を刻んでいることを知っているのは、国王とエドワード王太子、そして侍従長の三人だけであった。
侍従長は、バーナード騎士団長の知らぬ間にその名を刻んだことを、騎士団長が知れば烈火の如く怒るであろうと怯えを見せていたが、その“王統譜”を今後も見せるつもりはない。王家所蔵のその“王統譜”は外部秘であるからして、バーナード騎士団長が望んだとしても見ることは叶わない。
だから、彼に対して、その事実を隠し通す自信が、エドワードにはあった。
「バート」
エドワードは抱きしめたバートの耳元で囁き、とろけるような甘い微笑みを浮かべる。
「殿下……」
抱きしめたバートの頬に、額に口づけの雨を降らせていく。
その様子を見て、妖精達は騒めいていた。
「王子が妃にチューしてるよ」
「チューしてるよ」
「ヤバいよ」
「王子の手がやらしいよ」
王子の手がやらしいよとはなんだと思ったバートは、エドワードの手が長いバートの衣を下からまくり上げようとしていることに気が付くと、激しく動揺した。
「なっ」
めくりあげてその手を下肢に差し込んだエドワード王太子も同様に、驚いていた。
「……バート、お前、下着を付けていないのか」
バートは真っ赤に顔を染め、口をぱくぱくと開けては閉じていた。
「そ、それは……あんな破廉恥な下着を付けろと言うのか」
「破廉恥?」
とぼけるのかと、バートは目を釣り上げた。
「あんな紐パン、履けるわけがないだろう!!!!」
怒りの余り叫んでいた。
王国を守る霊樹のたもとで。
王国の誇る騎士団長は叫んでいた。
妖精達は歌うように口々にこう言った。
「紐パンって何?」
「紐パンって何?」
「教えてお妃様」
「教えて王子様」
「紐パンて何?」
大合唱状態である。
バートはぶるぶると屈辱に震えた。
相変わらずな壮大な恥辱責めに、もうバートは王宮から飛び出して屋敷に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
「……その礼服は用意させたが、紐パンとやらは私も知らぬ」
どうやら、あの下着は侍従達が気を回して用意したものらしく、エドワード王太子はそう答えていた。
バートの顔は真っ赤に染まったままだった。
新しく彼に付けられたあの若い侍従達は変に気を回していた。
浴槽にはバラの花を散らし、下着はあんな破廉恥なものまで用意するとは、何を考えているのだ。
即刻、侍従長に言って、自分の側付きから外してもらわないといけない。
「だが、興味はある。部屋に戻ったら、バート、身に付けて見せてくれ」
真剣な表情で言うエドワード王太子。
「身に付けるわけがないだろう!!!!」
バートは激怒していた。
怒り狂ったバートを宥めるのは時間がかかった。
「もう屋敷に帰る」と口走りそうになる彼。彼に、貸し借りの清算のことを思い出させると、ようやくその怒りを鎮めようと自身も努力していた。
今日から一週間、彼は王宮に留まることになる。
彼を一週間の間、自由に愛せることを思うと、エドワード王太子の気持ちはこの上なく高ぶった。
日頃は王立騎士団の騎士団長として忙しく勤務し、そして家庭ではフィリップ副騎士団長と共に過ごす彼には、つけ入る隙がほとんどなかった。
(バーナードのスケジュール管理を担うフィリップが、可能な限りエドワード王太子の接触をシャットアウトしていた)
竜剣ヴァンドライデンを何度か貸し与えることで、ようやく彼を捕まえられた。
彼が本心から望んで、この王宮に来ているわけではないことを知っている。
それでも、短い間、その身だけでも手に入れることができるのは嬉しい。
そして、彼の身に精力を満ち溢れるほど注いだ時には、あの“王家の庭”の“霊樹”に、彼の子が実る日がやって来るのだろうと思った。
バーナードの伴侶のフィリップは、“王家の庭”に入る資格はない。
だから、その実を摘み取るのは、自分になるだろう。
それを思うと、喜びが胸に溢れる。
実る果実の子は、おそらく彼によく似た子が生まれるはずだ。
その子を真っ先に胸に抱くのは、自分になるのだ。
殿下のストレートな答えに、バートは動揺した。
「…………………」
「今、私と肉体的にきちんと最後まで交わることができるのは、セーラとバート、お前だけだ。だから、お前はこの“王家の庭”に入る資格がある」
エドワード王太子はぎゅっとバートの細身を抱きしめた。
実際にはそれだけではない。
“王統譜”にその名を刻むことで、彼は正式な妃の身分を手に入れていたのだ。
だが、その“王統譜”に彼の名を刻んでいることを知っているのは、国王とエドワード王太子、そして侍従長の三人だけであった。
侍従長は、バーナード騎士団長の知らぬ間にその名を刻んだことを、騎士団長が知れば烈火の如く怒るであろうと怯えを見せていたが、その“王統譜”を今後も見せるつもりはない。王家所蔵のその“王統譜”は外部秘であるからして、バーナード騎士団長が望んだとしても見ることは叶わない。
だから、彼に対して、その事実を隠し通す自信が、エドワードにはあった。
「バート」
エドワードは抱きしめたバートの耳元で囁き、とろけるような甘い微笑みを浮かべる。
「殿下……」
抱きしめたバートの頬に、額に口づけの雨を降らせていく。
その様子を見て、妖精達は騒めいていた。
「王子が妃にチューしてるよ」
「チューしてるよ」
「ヤバいよ」
「王子の手がやらしいよ」
王子の手がやらしいよとはなんだと思ったバートは、エドワードの手が長いバートの衣を下からまくり上げようとしていることに気が付くと、激しく動揺した。
「なっ」
めくりあげてその手を下肢に差し込んだエドワード王太子も同様に、驚いていた。
「……バート、お前、下着を付けていないのか」
バートは真っ赤に顔を染め、口をぱくぱくと開けては閉じていた。
「そ、それは……あんな破廉恥な下着を付けろと言うのか」
「破廉恥?」
とぼけるのかと、バートは目を釣り上げた。
「あんな紐パン、履けるわけがないだろう!!!!」
怒りの余り叫んでいた。
王国を守る霊樹のたもとで。
王国の誇る騎士団長は叫んでいた。
妖精達は歌うように口々にこう言った。
「紐パンって何?」
「紐パンって何?」
「教えてお妃様」
「教えて王子様」
「紐パンて何?」
大合唱状態である。
バートはぶるぶると屈辱に震えた。
相変わらずな壮大な恥辱責めに、もうバートは王宮から飛び出して屋敷に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
「……その礼服は用意させたが、紐パンとやらは私も知らぬ」
どうやら、あの下着は侍従達が気を回して用意したものらしく、エドワード王太子はそう答えていた。
バートの顔は真っ赤に染まったままだった。
新しく彼に付けられたあの若い侍従達は変に気を回していた。
浴槽にはバラの花を散らし、下着はあんな破廉恥なものまで用意するとは、何を考えているのだ。
即刻、侍従長に言って、自分の側付きから外してもらわないといけない。
「だが、興味はある。部屋に戻ったら、バート、身に付けて見せてくれ」
真剣な表情で言うエドワード王太子。
「身に付けるわけがないだろう!!!!」
バートは激怒していた。
怒り狂ったバートを宥めるのは時間がかかった。
「もう屋敷に帰る」と口走りそうになる彼。彼に、貸し借りの清算のことを思い出させると、ようやくその怒りを鎮めようと自身も努力していた。
今日から一週間、彼は王宮に留まることになる。
彼を一週間の間、自由に愛せることを思うと、エドワード王太子の気持ちはこの上なく高ぶった。
日頃は王立騎士団の騎士団長として忙しく勤務し、そして家庭ではフィリップ副騎士団長と共に過ごす彼には、つけ入る隙がほとんどなかった。
(バーナードのスケジュール管理を担うフィリップが、可能な限りエドワード王太子の接触をシャットアウトしていた)
竜剣ヴァンドライデンを何度か貸し与えることで、ようやく彼を捕まえられた。
彼が本心から望んで、この王宮に来ているわけではないことを知っている。
それでも、短い間、その身だけでも手に入れることができるのは嬉しい。
そして、彼の身に精力を満ち溢れるほど注いだ時には、あの“王家の庭”の“霊樹”に、彼の子が実る日がやって来るのだろうと思った。
バーナードの伴侶のフィリップは、“王家の庭”に入る資格はない。
だから、その実を摘み取るのは、自分になるだろう。
それを思うと、喜びが胸に溢れる。
実る果実の子は、おそらく彼によく似た子が生まれるはずだ。
その子を真っ先に胸に抱くのは、自分になるのだ。
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