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第十三章 満月
第三話 告白
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だから、バーナード騎士団長は、フィリップの名を恐々と金色狼に向かって呼びかけた。
「フィリップ……なのか?」
金色狼の尻尾が再び、バッサバッサと大きく揺れている。ハァハァ息をつきながら、バーナードの肩に前足をのせて、ペロペロと彼の顔を舐めまくる。
「うわ、よせ、フィリップ」
くすぐったさにバーナードは床に倒れると、その身の上に金色狼の体がのしかかり、狼はひっきりなしにバーナードの顔を舐めまわして愛情を見せつけていた。
「もう涎でべとべとじゃないか。よせ、フィリップ」
ついにバーナードは、金色狼をフィリップだと認めたようだった。
残された符号から読み取ると、狼がフィリップだとしか考えられない。
そしてこうも大きな狼が、自分にのしかかり、その大きな口を開け、鋭い牙を見せながら舐めてくるのに、バーナードは一切、その金色狼に対する恐怖を感じなかった。
むしろ……
「お前は狼になっても綺麗だな」
明るい金色の毛並みの肌触りも良い。その青い瞳も美しく澄んでいる。
「綺麗な狼だ。さすが、フィリップだな」
人間でいる時も、ひどく美しい男だと思っていた。狼になってなおも、美しいとは。
身を起き上がらせ、バーナードは金色狼に声をかけた。
「一緒に寝よう。朝になったら、話し合おうか。もし、朝になってもお前の姿が戻っていなかったら、マグルに相談すればいい」
金色狼は、その頭をバーナードの脚に擦りつけてくる。
「きっとなんとかなるさ」
そして客間の寝台の上に、金色狼を連れて、バーナードは眠りについたのだった。
朝になり、目を覚ました時、目の前にいたのは金色の髪に青い瞳の、人間のフィリップだった。
彼は眠りからバーナードが覚めたことを認めると、ちゅっと音を立てて彼の唇に口づけた。
「……おはようございます、バーナード」
フィリップは裸だった。
そして人間の姿に戻っていることに、バーナードは安堵する。
「よかった。戻れたんだな、フィリップ」
「……貴方がすぐ、私だとわかってくれて嬉しかったです」
「舐め癖がひどいからな」
苦笑しながら言うバーナードの額に口づけ、それからわざとペロリと彼の頬を舌を出して舐めた。
「……………お前………」
ジロリと見つめてくるバーナードを見つめながら、フィリップは話し始めた。
「“精力に満ち溢れる者”になるためには、人狼になるのが良いと言われ、その呪いを受けました」
「……呪いだと?」
「そうです。だから、私の身はもはや人間ではないのでしょう。バーナード」
その言葉に、少しばかりショックを受けたようなバーナードは、ぽつりと呟くように言った。
「人間をやめてまで、そうすることはなかったのだぞ」
「それしか方法が無かったのです。私は後悔していません。むしろ、貴方と釣り合う存在になれたことが嬉しい」
「フィリップ……」
フィリップは、バーナードの頬に手を添え、口づけた。
「そんな顔をしないで下さい。貴方も、喜んでください」
「素直に喜べないな。まさか、お前が人間をやめているなんて」
大妖精の老人に頼んだ時は、単純に精力を増大させる魔法か何かを掛けられるのではないかと思っていた。まさか、人の身であることをやめさせ、そして人狼という魔族にまで変える呪いを受けることになるなんて考えもしなかった。それもこれも、自分が彼と釣り合うことを望んだせいだった。
「お前を人間の身に戻せないか、その方法を探さないといけない」
「バーナード、私は今の状況に満足しています。貴方と釣り合い、貴方とこれからも共にいることができる身になったのです。どうしてそれを悔やむことがありましょう」
「……………」
「それに、貴方を思う存分愛することもできるようになった」
「……舐め癖と噛み癖がひどいが」
「それは、どうか我慢して下さい。バーナード」
フィリップがそう愛し気にその名を呼ぶと、バーナードは手を伸ばして、フィリップの身をきつく抱きしめた。
「わかった」
「フィリップ……なのか?」
金色狼の尻尾が再び、バッサバッサと大きく揺れている。ハァハァ息をつきながら、バーナードの肩に前足をのせて、ペロペロと彼の顔を舐めまくる。
「うわ、よせ、フィリップ」
くすぐったさにバーナードは床に倒れると、その身の上に金色狼の体がのしかかり、狼はひっきりなしにバーナードの顔を舐めまわして愛情を見せつけていた。
「もう涎でべとべとじゃないか。よせ、フィリップ」
ついにバーナードは、金色狼をフィリップだと認めたようだった。
残された符号から読み取ると、狼がフィリップだとしか考えられない。
そしてこうも大きな狼が、自分にのしかかり、その大きな口を開け、鋭い牙を見せながら舐めてくるのに、バーナードは一切、その金色狼に対する恐怖を感じなかった。
むしろ……
「お前は狼になっても綺麗だな」
明るい金色の毛並みの肌触りも良い。その青い瞳も美しく澄んでいる。
「綺麗な狼だ。さすが、フィリップだな」
人間でいる時も、ひどく美しい男だと思っていた。狼になってなおも、美しいとは。
身を起き上がらせ、バーナードは金色狼に声をかけた。
「一緒に寝よう。朝になったら、話し合おうか。もし、朝になってもお前の姿が戻っていなかったら、マグルに相談すればいい」
金色狼は、その頭をバーナードの脚に擦りつけてくる。
「きっとなんとかなるさ」
そして客間の寝台の上に、金色狼を連れて、バーナードは眠りについたのだった。
朝になり、目を覚ました時、目の前にいたのは金色の髪に青い瞳の、人間のフィリップだった。
彼は眠りからバーナードが覚めたことを認めると、ちゅっと音を立てて彼の唇に口づけた。
「……おはようございます、バーナード」
フィリップは裸だった。
そして人間の姿に戻っていることに、バーナードは安堵する。
「よかった。戻れたんだな、フィリップ」
「……貴方がすぐ、私だとわかってくれて嬉しかったです」
「舐め癖がひどいからな」
苦笑しながら言うバーナードの額に口づけ、それからわざとペロリと彼の頬を舌を出して舐めた。
「……………お前………」
ジロリと見つめてくるバーナードを見つめながら、フィリップは話し始めた。
「“精力に満ち溢れる者”になるためには、人狼になるのが良いと言われ、その呪いを受けました」
「……呪いだと?」
「そうです。だから、私の身はもはや人間ではないのでしょう。バーナード」
その言葉に、少しばかりショックを受けたようなバーナードは、ぽつりと呟くように言った。
「人間をやめてまで、そうすることはなかったのだぞ」
「それしか方法が無かったのです。私は後悔していません。むしろ、貴方と釣り合う存在になれたことが嬉しい」
「フィリップ……」
フィリップは、バーナードの頬に手を添え、口づけた。
「そんな顔をしないで下さい。貴方も、喜んでください」
「素直に喜べないな。まさか、お前が人間をやめているなんて」
大妖精の老人に頼んだ時は、単純に精力を増大させる魔法か何かを掛けられるのではないかと思っていた。まさか、人の身であることをやめさせ、そして人狼という魔族にまで変える呪いを受けることになるなんて考えもしなかった。それもこれも、自分が彼と釣り合うことを望んだせいだった。
「お前を人間の身に戻せないか、その方法を探さないといけない」
「バーナード、私は今の状況に満足しています。貴方と釣り合い、貴方とこれからも共にいることができる身になったのです。どうしてそれを悔やむことがありましょう」
「……………」
「それに、貴方を思う存分愛することもできるようになった」
「……舐め癖と噛み癖がひどいが」
「それは、どうか我慢して下さい。バーナード」
フィリップがそう愛し気にその名を呼ぶと、バーナードは手を伸ばして、フィリップの身をきつく抱きしめた。
「わかった」
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