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第十三章 満月
序
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バーナード騎士団長が好きだ。
誰よりも強くて優しいあの人は、その昔から私の憧れの人だった。
彼と結ばれた後も、彼のことを知れば知るほど、心惹かれる。
未だに、朝起きた時に、隣に眠っている彼の横顔を眺めていると、胸がドキドキとしてしまう。
その幸運さにキュンと胸は高まり、凛々しい彼の様子を見ていると、ガブリとその首筋を噛みつきたくなる。
そう、噛みつきたくなるのだ。
その後は舐めまわしたくなって……
フィリップは思考を止めた。
(あれ……)
額に手をやり、金の髪を掻き上げる。
(私は何を思っているんだ)
先日、フィリップは伴侶である騎士団長バーナードから「お前はおかしい」「お前も変態に……」とひどいことを言われ、自分は強くそれを否定した。大好きな伴侶を舐めまわしたくなったり、噛みつきたくなるのは当然のことだった。そう、それを当然のことだと強く主張するもう一人の自分がフィリップの中にはいる。
その一方で、小さく「ちょっとおかしいかも知れない」と呟くもう一人の自分がいるのだ。その小さく呟くもう一人の自分は、日に日に隅へ追いやられて、肩身の狭い日々を送るようになっている。
最近、バーナード騎士団長の首筋に噛みついたら、反射的に戦闘態勢に入るあの人に思い切り蹴り飛ばされた。
首に穴が空いたと怒っているあの人。
少しくらい穴が空いても我慢して欲しい。それに、コツはわかっている。傷にならないように、甘く噛んでいるから大丈夫。伴侶なんだから、傷つけることはないのだ。
でも怒ったあの人が、自分の屋敷に帰る日が続いている。
心の中の小さく呟く自分が「団長が怒るのも仕方ない」と言っている。もう一人の自分は「大好きなんだから噛んでも仕方ない」と言い張っている。その二人の仲はとても悪い。片方が立てば、片方は並び立たないというそんな間柄だ。
いつかその二人は、一緒になって一つにまとまるだろう。その一つにまとまった時に、団長は自分のことをどう見るだろう。
嫌われたくない。
そんな気持ちもある。
大好きだから、彼に好かれたい。
変わっていってしまう自分を、彼に認めて欲しかった。
誰よりも強くて優しいあの人は、その昔から私の憧れの人だった。
彼と結ばれた後も、彼のことを知れば知るほど、心惹かれる。
未だに、朝起きた時に、隣に眠っている彼の横顔を眺めていると、胸がドキドキとしてしまう。
その幸運さにキュンと胸は高まり、凛々しい彼の様子を見ていると、ガブリとその首筋を噛みつきたくなる。
そう、噛みつきたくなるのだ。
その後は舐めまわしたくなって……
フィリップは思考を止めた。
(あれ……)
額に手をやり、金の髪を掻き上げる。
(私は何を思っているんだ)
先日、フィリップは伴侶である騎士団長バーナードから「お前はおかしい」「お前も変態に……」とひどいことを言われ、自分は強くそれを否定した。大好きな伴侶を舐めまわしたくなったり、噛みつきたくなるのは当然のことだった。そう、それを当然のことだと強く主張するもう一人の自分がフィリップの中にはいる。
その一方で、小さく「ちょっとおかしいかも知れない」と呟くもう一人の自分がいるのだ。その小さく呟くもう一人の自分は、日に日に隅へ追いやられて、肩身の狭い日々を送るようになっている。
最近、バーナード騎士団長の首筋に噛みついたら、反射的に戦闘態勢に入るあの人に思い切り蹴り飛ばされた。
首に穴が空いたと怒っているあの人。
少しくらい穴が空いても我慢して欲しい。それに、コツはわかっている。傷にならないように、甘く噛んでいるから大丈夫。伴侶なんだから、傷つけることはないのだ。
でも怒ったあの人が、自分の屋敷に帰る日が続いている。
心の中の小さく呟く自分が「団長が怒るのも仕方ない」と言っている。もう一人の自分は「大好きなんだから噛んでも仕方ない」と言い張っている。その二人の仲はとても悪い。片方が立てば、片方は並び立たないというそんな間柄だ。
いつかその二人は、一緒になって一つにまとまるだろう。その一つにまとまった時に、団長は自分のことをどう見るだろう。
嫌われたくない。
そんな気持ちもある。
大好きだから、彼に好かれたい。
変わっていってしまう自分を、彼に認めて欲しかった。
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