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【短編】
古代ダンジョン踏破と魔術師の恨みつらみ (2)
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第二話 階層の設問
二階にもまた、怪しげな壁画と淫らな体位をとる石像がいたるところに転がっていて、それを見たバーナードはひどく不愉快そうな様子だった。
彼は淫魔となった身ではあったけれど、こうした露骨でいかがわしいものを嫌っていた。
もうあんなことやこんなことを、団長とはいろいろとしているのにと、フィリップには内心思う気持ちもあった。
そんなフィリップではあったが、壁に描かれている春画や置かれている石像のアクロバティックな体位を見て、思わず「こんなことができるのですか」とバーナードに聞いてしまった。
「…………身体を痛めるからやめろ」と答えるバーナードの耳が赤く染まっているところが、どこか初々しくて、よかった。
そして再び、二階の突き当りの部屋に辿りつく。
一階と同じく、その部屋に入った途端に、入口の石扉が音を立てて閉められていった。
二階の中央の石板に、古代語で書かれていたのは次の内容だった。
『口淫をしないと出られない』
「団長、任せて下さい!!」
フィリップが笑顔で団長の方を振り向くと、彼は真っ赤な顔をしてブルブルと震えていた。
「この……この変態の部屋が」
激怒している。
「団長、私がします。大丈夫です。いつもして差し上げているようにすれば」
「うるさい、フィリップ。お前は黙れ!!」
バーナードはおもむろに、腰に佩いていた剣を抜刀した。
その剣の刀身が青く美しく輝くのを見て、フィリップは絶句する。
(竜剣ヴァンドライデン?)
国宝をまた、バーナードは王家から貸してもらっているのか?
いや、国王の依頼でもあるから、貸与して下さるのは大いに考えられたことだった。
(まさか……まさか団長)
バーナードはその剣で、反対側のぴったりと閉まっていた扉を叩き斬ったのであった。
ゴゴンと凄まじい轟音を立てて、石扉が倒れた。二階のその部屋の奥の扉を強引に開いたのだった。
「…………だ……団長」
「最初からこうすれば良かったんだ。さぁ、行くぞ、フィリップ」
バーナードは竜剣をチンと音を立てて鞘にしまうと、フィリップに振り向いて声をかけた。
内心、フィリップはガッカリとしていた。
そして彼らは二階を抜け、三階に行き、またまた淫靡な壁画や石像の間を足早に抜けて、行き止まりの三階の部屋へと辿り着く。
再び部屋の中に閉じ込められたフィリップとバーナード。部屋の中央にある石板を見て立ち尽くす。
キス→フェラチオとくれば、次は案の定。
『正常位のセックスをしないと出られない』
体位の指定までされている。
もうバーナードは無言で、竜剣を腰から抜いて、また石扉を叩き斬っていた。
足で石扉を蹴り、もうもうと粉の舞う中、フィリップに声をかける。
「急ぐぞ!!」
(……ああ……団長)
フィリップは心の中で、無念さに床を両手で叩いていた。
その後、四階、五階、六階とバーナードは全ての石扉を剣で斬り足で蹴り倒して駆け抜けていく。
この国の国宝で、竜剣ヴァンドライデンは、切れぬものはないと言われる魔剣であった。
十五階層の扉を抜ける。
その頃には、壁の壁画や石像も、人間ではないものも入り混じり、更に激しく交歓しているようなモチーフが多くなっていた。
「情報によれば、ここからはルートが重なるらしい」
今まで他の冒険者達と出会わないように、個別のルートに振り分けられていたが、この十五階層からは合流もあり得る。
行方不明になっているヴィッセル侯爵家シャウルも、この階から見つけられるだろう。
バーナードは人相書きを懐から取り出した。
これからは出会う人に話を聞きながら、先に進んでも良いだろうと考えていた。
そして実際、何人かのカップルに声をかけた結果、幸いにもシャウルを見かけたという冒険者を見つけたのだった。
「彼は、三十八階の奥の部屋で見た人に似ていると思う」
その証言に、バーナードとフィリップは顔を見合わせる。
そしてその横のパートナーである女性が、肩をすくめて言った。
「三十八階層は、スライム部屋だから。あそこでハマっちゃう人が多いのよね」
二階にもまた、怪しげな壁画と淫らな体位をとる石像がいたるところに転がっていて、それを見たバーナードはひどく不愉快そうな様子だった。
彼は淫魔となった身ではあったけれど、こうした露骨でいかがわしいものを嫌っていた。
もうあんなことやこんなことを、団長とはいろいろとしているのにと、フィリップには内心思う気持ちもあった。
そんなフィリップではあったが、壁に描かれている春画や置かれている石像のアクロバティックな体位を見て、思わず「こんなことができるのですか」とバーナードに聞いてしまった。
「…………身体を痛めるからやめろ」と答えるバーナードの耳が赤く染まっているところが、どこか初々しくて、よかった。
そして再び、二階の突き当りの部屋に辿りつく。
一階と同じく、その部屋に入った途端に、入口の石扉が音を立てて閉められていった。
二階の中央の石板に、古代語で書かれていたのは次の内容だった。
『口淫をしないと出られない』
「団長、任せて下さい!!」
フィリップが笑顔で団長の方を振り向くと、彼は真っ赤な顔をしてブルブルと震えていた。
「この……この変態の部屋が」
激怒している。
「団長、私がします。大丈夫です。いつもして差し上げているようにすれば」
「うるさい、フィリップ。お前は黙れ!!」
バーナードはおもむろに、腰に佩いていた剣を抜刀した。
その剣の刀身が青く美しく輝くのを見て、フィリップは絶句する。
(竜剣ヴァンドライデン?)
国宝をまた、バーナードは王家から貸してもらっているのか?
いや、国王の依頼でもあるから、貸与して下さるのは大いに考えられたことだった。
(まさか……まさか団長)
バーナードはその剣で、反対側のぴったりと閉まっていた扉を叩き斬ったのであった。
ゴゴンと凄まじい轟音を立てて、石扉が倒れた。二階のその部屋の奥の扉を強引に開いたのだった。
「…………だ……団長」
「最初からこうすれば良かったんだ。さぁ、行くぞ、フィリップ」
バーナードは竜剣をチンと音を立てて鞘にしまうと、フィリップに振り向いて声をかけた。
内心、フィリップはガッカリとしていた。
そして彼らは二階を抜け、三階に行き、またまた淫靡な壁画や石像の間を足早に抜けて、行き止まりの三階の部屋へと辿り着く。
再び部屋の中に閉じ込められたフィリップとバーナード。部屋の中央にある石板を見て立ち尽くす。
キス→フェラチオとくれば、次は案の定。
『正常位のセックスをしないと出られない』
体位の指定までされている。
もうバーナードは無言で、竜剣を腰から抜いて、また石扉を叩き斬っていた。
足で石扉を蹴り、もうもうと粉の舞う中、フィリップに声をかける。
「急ぐぞ!!」
(……ああ……団長)
フィリップは心の中で、無念さに床を両手で叩いていた。
その後、四階、五階、六階とバーナードは全ての石扉を剣で斬り足で蹴り倒して駆け抜けていく。
この国の国宝で、竜剣ヴァンドライデンは、切れぬものはないと言われる魔剣であった。
十五階層の扉を抜ける。
その頃には、壁の壁画や石像も、人間ではないものも入り混じり、更に激しく交歓しているようなモチーフが多くなっていた。
「情報によれば、ここからはルートが重なるらしい」
今まで他の冒険者達と出会わないように、個別のルートに振り分けられていたが、この十五階層からは合流もあり得る。
行方不明になっているヴィッセル侯爵家シャウルも、この階から見つけられるだろう。
バーナードは人相書きを懐から取り出した。
これからは出会う人に話を聞きながら、先に進んでも良いだろうと考えていた。
そして実際、何人かのカップルに声をかけた結果、幸いにもシャウルを見かけたという冒険者を見つけたのだった。
「彼は、三十八階の奥の部屋で見た人に似ていると思う」
その証言に、バーナードとフィリップは顔を見合わせる。
そしてその横のパートナーである女性が、肩をすくめて言った。
「三十八階層は、スライム部屋だから。あそこでハマっちゃう人が多いのよね」
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