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第九章 夢を渡る
第二話 説得する
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その翌日の夜。
夕食をとった後、バーナードはフィリップに切り出した。
「お前の夢に渡るため、協力して欲しい」
フィリップは額に手を当て、ため息をついた。
「バーナード、私は言いましたよね。危険だからダメですって。貴方が犯す……いや犯される可能性があるんですよ」
相変わらずどうなるのかよくわかっていないフィリップの回答がおかしかった。
「むしろ、その能力のことが分かっていない状況の方が、俺はマズイと思うぞ。もし仮に、俺が突然その能力に目覚めて、わからないまま使い出したらどうするんだ」
「…………」
「その夢を渡る能力がどういうものなのか、知っておく必要がある」
その言葉には一理あった。
そもそも“淫夢”を相手に見せることも、彼は意識せずに突然、始めてしまっていたのだから。
フィリップは両手で自身の顔を覆い、しばらくの間じっと動くのを止めた後に、やがて言った。非常に渋々といった口調だった。
「わかりました。…………………………協力しますよ」
「ありがとう、フィリップ」
そして二人は寝室に移動した。
二人で寝台の上に横たわり、じっと天井を眺めている。
「どうやって夢の中に入るのだろう」
バーナードがぽつりと言う。
「……入りたい夢の相手のことを思うんじゃないでしょうかね」
「……いつもお前のことは思っているぞ」
「バーナード、眠れなくなるので今、そういうことは言わないでください」
珍しくもバーナードが甘い言葉を口にしてくるのを、フィリップは嬉しく思いながらも、こんな時に興奮させないで欲しいと思った。夢を見るどころではなくなる。
結婚してから、少しずつ彼が自分に歩み寄ってきていることを感じる。
さまざまな困難があった。でも、それを乗り越えてようやく互いを互いの伴侶と思えるようになっていた。
そっと彼の手を握ると、彼も手を握り返してくれた。
目を閉じる彼。
寝つきの良い彼は、しばらくすると寝息を立て始めていた。
その顔をフィリップは、(団長は寝顔がかわいいな)と眺め続けていたのだが、途中で自分が眠らないとバーナードが自分の夢の中へ入ることができないことに気が付くと、慌てて眠ろうと目をぎゅっと瞑るのだった。
夕食をとった後、バーナードはフィリップに切り出した。
「お前の夢に渡るため、協力して欲しい」
フィリップは額に手を当て、ため息をついた。
「バーナード、私は言いましたよね。危険だからダメですって。貴方が犯す……いや犯される可能性があるんですよ」
相変わらずどうなるのかよくわかっていないフィリップの回答がおかしかった。
「むしろ、その能力のことが分かっていない状況の方が、俺はマズイと思うぞ。もし仮に、俺が突然その能力に目覚めて、わからないまま使い出したらどうするんだ」
「…………」
「その夢を渡る能力がどういうものなのか、知っておく必要がある」
その言葉には一理あった。
そもそも“淫夢”を相手に見せることも、彼は意識せずに突然、始めてしまっていたのだから。
フィリップは両手で自身の顔を覆い、しばらくの間じっと動くのを止めた後に、やがて言った。非常に渋々といった口調だった。
「わかりました。…………………………協力しますよ」
「ありがとう、フィリップ」
そして二人は寝室に移動した。
二人で寝台の上に横たわり、じっと天井を眺めている。
「どうやって夢の中に入るのだろう」
バーナードがぽつりと言う。
「……入りたい夢の相手のことを思うんじゃないでしょうかね」
「……いつもお前のことは思っているぞ」
「バーナード、眠れなくなるので今、そういうことは言わないでください」
珍しくもバーナードが甘い言葉を口にしてくるのを、フィリップは嬉しく思いながらも、こんな時に興奮させないで欲しいと思った。夢を見るどころではなくなる。
結婚してから、少しずつ彼が自分に歩み寄ってきていることを感じる。
さまざまな困難があった。でも、それを乗り越えてようやく互いを互いの伴侶と思えるようになっていた。
そっと彼の手を握ると、彼も手を握り返してくれた。
目を閉じる彼。
寝つきの良い彼は、しばらくすると寝息を立て始めていた。
その顔をフィリップは、(団長は寝顔がかわいいな)と眺め続けていたのだが、途中で自分が眠らないとバーナードが自分の夢の中へ入ることができないことに気が付くと、慌てて眠ろうと目をぎゅっと瞑るのだった。
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