騎士団長が大変です

曙なつき

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第九章 夢を渡る

第一話 夢についての話し合い

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 先日、王宮副魔術師長マグルと話し合った内容をバーナードにも伝えるため、彼を自宅の屋敷に呼んだ。夕食をとった後、居間のソファに並んで座りながらマグルとの話を伝えると、彼はとても興味深そうな様子だった。

「サキュバスが、相手との距離を関係なく相手の夢の中へ渡れるとは、一度試してみたいな」

「バーナード、私は今、言いましたよね。夢を渡るのはやめて欲しいと。危険です」

 彼はフィリップに向き合うと、じっとフィリップの青い目を見つめて言った。

「どこが危険なんだ。夢の中だぞ?」

「相手の夢の中なんです。この現実の世界とは違います」

「でも試す価値はあるだろう。どうやって夢を渡るのだろう」

 彼の茶色の瞳が、好奇心で輝いて見える。
 それを見た時、彼には“夢を渡る”サキュバスの能力について、話さない方が良かったのではないかと後悔が湧き上がった。
 こうなれば、彼は好奇心が抑えきれない。

「ダメだと言ったでしょう。貴方は夢の中で相手を犯す……いや、貴方が犯される可能性があるんですよ」

「普通、サキュバスが相手を犯すのだろう。犯されるという表現はおかしいな」

「そんな細かいことはいいんです!!」

「いや、結構大きな違いがあるぞ。フィリップ」

 彼は手を伸ばして、フィリップの金髪を撫でた。

「心配してくれているのか。フィリップ、お前はかわいいな」

「…………当たり前です。貴方は私の大切な人なんです。知っているでしょう」

「ああ」

 バーナードの茶色の瞳がどこか甘くフィリップを見つめ、フィリップは胸をときめかせた。彼が好きだった。彼のことが大好きで、そんな彼と相思相愛になれたことを常に神に感謝している。
 
 バーナードの手がフィリップの頬に落ちて、そしてそのまま自然に彼の唇がそっとフィリップの唇に触れた。角度を変えて啄むような優しい口づけの後、互いの舌を絡めるような濃厚なソレに変わっていく。

 フィリップはソファの上にバーナードを押し倒す。
 そうされながらも、バーナードが頭の中で(どうやって相手の夢の中へ渡るのだろう)と考え続けていたことを、知らなかった。




 相手の夢の中へと渡る力があれば、様々なことができるとバーナードは考えていた。
 それも距離が関係なく渡れるのである。

 話を聞きたい相手がいれば、夢の中に入って話を聞ける(それが遠方であろうが、敵に捕らえられた状態であろうが関係なくできる。敵国の要人だって問い詰めることができる)。相手の許諾が関係なく相手の夢の中に入れることも素晴らしい。何かしら証拠を集めたい時だって、相手の夢からヒントを得ることができるかも知れない。逃亡している敵の夢の中に入って詰問することもできるのではないか。
 考えれば考えるほど、素晴らしい能力にしか思えなかった。

 フィリップは、自分が夢の中で犯される可能性があると言っていた。
 
 いや、夢の中に入った時と同じように、出ることも可能だろう。危険な状況になれば、すぐに逃げだせばいい。

 是非、試してみたい能力だった。
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