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第七章 加護を外れる
第三話 封印の指輪(下)
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「最初はセーラ妃のために作ったんだよね、それ。今後、セーラ妃は公務のために殿下のお側を離れることもあるだろうけれど、実質“サキュバスの加護”で殿下に性的に依存している。殿下も依存している状態で、ある意味“仲良し”でいいんだけどさ。でも離れないといけない時に離れられないのはマズイだろうということで、二人の性衝動を抑える何かを探していたんだ。サキュバスなどの魔物は“封印紙”でその活動を抑えられるから、封印紙を強力にした指輪を作ってそれで抑えられないかと思ったんだけど、セーラ妃も殿下もダメだった」
「そうなんですか」
フィリップは、バーナードの右手の中指にはめられた銀色のなんの意匠もないシンプルな指輪を見つめた。
「バーナードも試してみたいというから、一度セーラ妃のために作った指輪を貸して試してもらったら、奴には効果があったみたいなんだ。それで、バーナード用にサイズを変えて作り直したのが今、奴がはめている指輪だ」
「効果があったのは良かったですね」
淡々というフィリップに、何か感じたのか、マグルは「じゃあ」と片手を挙げてそそくさと部屋を出て行った。
マグルが部屋を後にしたのを見て、フィリップは入口の扉の鍵をガチャリと閉めた。
バーナードは眉間に皺を寄せた。
「何故、鍵をかける」
「……どうして私には教えて下さらなかったんですか」
フィリップが詰め寄るようにして言うと、バーナードは答えた。
「実験中で、効果がはっきりしていなかったからだ」
「でも、今はもう確認できているんですよね。どれくらいの効果があるんですか」
「厳密には計っていないが、おそらく一週間は大丈夫だ」
一週間は、致さなくても大丈夫になったということで、それを聞いたフィリップは小さくため息をついた。
「……私は寂しいです」
バーナードは長い足を組む。
「実際、討伐出兵の場合には困るだろう。お前と離れなければならないこともある」
以前の魔獣討伐出兵任務の時など、バーナードは飢えを感じないように、一週間の予定を四日間に短縮して出来得る限りの早さで王都に帰還したこともあった。
彼はその苦労を思い出して遠い目をしていた。
しかし、フィリップは不満だった。
彼の座る椅子に膝を乗せ、間近で詰め寄った。
「あなたの言うことはわかります。理性ではわかるんです。でも、寂しい」
その胸元に手を這わせるフィリップに、何かよからぬものを感じたバーナードは眉間の皺を更に深めて言った。
「…………ここではするな」
フィリップはため息をついた。
「わかっていますよ、バーナード」
神聖な仕事場でそういう行為はしてはならないと、いつもバーナードは厳しく言う。お堅いのだ。
でも、この重厚なデスクの上に軍装姿の彼を一度でもいいから、押し倒してみたいとフィリップは思っていた。
きっと彼は激怒するだろうから、そういうことをしたことはない。
「……お前と一緒にいられないことは俺も寂しい。だが、軍属だ。いつ、何があるかわからない」
「そうですね」
そういう彼の唇に自分の唇を触れさせようとすると、バーナードは厳しい声で言った。
「ここではだめだ、フィリップ副騎士団長」
固い……
内心がっくりきて、フィリップは渋々その身を彼から離すのだった。
「そうなんですか」
フィリップは、バーナードの右手の中指にはめられた銀色のなんの意匠もないシンプルな指輪を見つめた。
「バーナードも試してみたいというから、一度セーラ妃のために作った指輪を貸して試してもらったら、奴には効果があったみたいなんだ。それで、バーナード用にサイズを変えて作り直したのが今、奴がはめている指輪だ」
「効果があったのは良かったですね」
淡々というフィリップに、何か感じたのか、マグルは「じゃあ」と片手を挙げてそそくさと部屋を出て行った。
マグルが部屋を後にしたのを見て、フィリップは入口の扉の鍵をガチャリと閉めた。
バーナードは眉間に皺を寄せた。
「何故、鍵をかける」
「……どうして私には教えて下さらなかったんですか」
フィリップが詰め寄るようにして言うと、バーナードは答えた。
「実験中で、効果がはっきりしていなかったからだ」
「でも、今はもう確認できているんですよね。どれくらいの効果があるんですか」
「厳密には計っていないが、おそらく一週間は大丈夫だ」
一週間は、致さなくても大丈夫になったということで、それを聞いたフィリップは小さくため息をついた。
「……私は寂しいです」
バーナードは長い足を組む。
「実際、討伐出兵の場合には困るだろう。お前と離れなければならないこともある」
以前の魔獣討伐出兵任務の時など、バーナードは飢えを感じないように、一週間の予定を四日間に短縮して出来得る限りの早さで王都に帰還したこともあった。
彼はその苦労を思い出して遠い目をしていた。
しかし、フィリップは不満だった。
彼の座る椅子に膝を乗せ、間近で詰め寄った。
「あなたの言うことはわかります。理性ではわかるんです。でも、寂しい」
その胸元に手を這わせるフィリップに、何かよからぬものを感じたバーナードは眉間の皺を更に深めて言った。
「…………ここではするな」
フィリップはため息をついた。
「わかっていますよ、バーナード」
神聖な仕事場でそういう行為はしてはならないと、いつもバーナードは厳しく言う。お堅いのだ。
でも、この重厚なデスクの上に軍装姿の彼を一度でもいいから、押し倒してみたいとフィリップは思っていた。
きっと彼は激怒するだろうから、そういうことをしたことはない。
「……お前と一緒にいられないことは俺も寂しい。だが、軍属だ。いつ、何があるかわからない」
「そうですね」
そういう彼の唇に自分の唇を触れさせようとすると、バーナードは厳しい声で言った。
「ここではだめだ、フィリップ副騎士団長」
固い……
内心がっくりきて、フィリップは渋々その身を彼から離すのだった。
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