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【短編】
騎士団長とケモミミ事件その二 (下)
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目が覚めた時、珍しく彼がそばにいて自分を心配そうに見下ろしていた。
彼の手が頬を撫でる。その感触が気持ちよくて目を伏せた。
「フィリップ、大丈夫か?」
「……ええ、大丈夫ですよ」
「……」
少しだけ眉を寄せて、彼はフィリップを見下ろしていた。
彼の手が、フィリップの頬を撫でた。
「少し、痩せたように思える」
「……そうですか」
「きちんと食べているのか」
「食べていますよ」
起き上がり、バーナードの唇に口づけた。
やはり、昨夜のことは夢だったようだ。ケモミミの彼と激しく求め合ったあの夜は、うっとりするほど愉しく淫らだった。
フィリップの顔が、どこか陶然としているのを見て、バーナードはため息をついた。
「……仕事に行くなら、早く起きた方がいい」
「行きますよ」
彼はやはり心配そうな様子だった。
「今日は休んでもいいぞ。なんだかお前はやつれているように見えて心配だ」
「……そうですか」
フィリップは起き上がると、壁に設置されている姿見にその姿を映した。確かに、少し頬もこけているように見える。
対して、すでに軍装姿のバーナードは、肌も艶やかで黒髪もどこかしっとりしており、茶色の瞳も炯々と輝き、相変わらずの男ぶりだった。
(こんなやつれた男……団長に捨てられてしまうかも知れない)
別の意味で危惧を覚えたフィリップは焦った。
バーナードが用意してくれていた食事を慌てて取ると、すぐに着替えた。
馬車に乗って、騎士団の拠点に向かった。
馬車の中でも、バーナードはフィリップの頬に手をやり、心配している様子だった。
「一度、病院に行った方がいいのではないか」
「大丈夫です、団長」
「…………」
バーナードは気に入らないように眉を寄せている。
彼の心配をひしひしと感じたフィリップは、早く体調を戻さないといけないと思った。
騎士団の拠点に行った後、他の騎士達からもフィリップは心配された。
やはり、少し頬がこけて元気がないように見えるのだろう。
そして騎士達は、囃し立てるようにフィリップにこう言った。
「お前、団長とヤリ過ぎなんじゃないか」
「団長にもう少し手加減お願いしろよ」 (注)同僚達は、妻役はフィリップだと思っています。
ヤリ過ぎ?
でも、昨日は一緒に寝台で寝ただけで、自分はケモミミ団長と致しているとても愉しい夢を見ただけだった。
それなのに、ヤリ過ぎってなんだ。
フィリップは戸惑った。
だが、騎士の一人が「精力増量剤だ」と冗談まじりで手渡してきた瓶入りの薬を口にした時、自身の力が漲り、そして頬のこけも少し収まったのを認めて愕然とした。
今まで、こんなことはなかった。
だが、明らかに精力増量剤という薬で精力が増量している。
ということは、昨日の夢のケモミミ団長との交わりで、自分はごっそりと精力を失っていたということだった。
フィリップは考え込んでいた。
バーナード騎士団長は、“淫魔の王女の加護”を持つ、それは淫乱、名器、精力を注がれることによる体力の増強だった。
相手の精力をごっそりと奪う力はない(その素晴らしい肉体に夢中になりすぎて、我を忘れて精力を失うことはある。実際、セーラ妃の元夫がそうであった)。
けれど、今、フィリップはケモミミ団長とのめくるめく快楽の夜の夢を見て、ごっそりと精力を失っていた。
これは一体、どういうことなのだろう。
彼はしばらくそのことを考えていた。
だが、考えても考えても、その原因がわからなかった。
彼の手が頬を撫でる。その感触が気持ちよくて目を伏せた。
「フィリップ、大丈夫か?」
「……ええ、大丈夫ですよ」
「……」
少しだけ眉を寄せて、彼はフィリップを見下ろしていた。
彼の手が、フィリップの頬を撫でた。
「少し、痩せたように思える」
「……そうですか」
「きちんと食べているのか」
「食べていますよ」
起き上がり、バーナードの唇に口づけた。
やはり、昨夜のことは夢だったようだ。ケモミミの彼と激しく求め合ったあの夜は、うっとりするほど愉しく淫らだった。
フィリップの顔が、どこか陶然としているのを見て、バーナードはため息をついた。
「……仕事に行くなら、早く起きた方がいい」
「行きますよ」
彼はやはり心配そうな様子だった。
「今日は休んでもいいぞ。なんだかお前はやつれているように見えて心配だ」
「……そうですか」
フィリップは起き上がると、壁に設置されている姿見にその姿を映した。確かに、少し頬もこけているように見える。
対して、すでに軍装姿のバーナードは、肌も艶やかで黒髪もどこかしっとりしており、茶色の瞳も炯々と輝き、相変わらずの男ぶりだった。
(こんなやつれた男……団長に捨てられてしまうかも知れない)
別の意味で危惧を覚えたフィリップは焦った。
バーナードが用意してくれていた食事を慌てて取ると、すぐに着替えた。
馬車に乗って、騎士団の拠点に向かった。
馬車の中でも、バーナードはフィリップの頬に手をやり、心配している様子だった。
「一度、病院に行った方がいいのではないか」
「大丈夫です、団長」
「…………」
バーナードは気に入らないように眉を寄せている。
彼の心配をひしひしと感じたフィリップは、早く体調を戻さないといけないと思った。
騎士団の拠点に行った後、他の騎士達からもフィリップは心配された。
やはり、少し頬がこけて元気がないように見えるのだろう。
そして騎士達は、囃し立てるようにフィリップにこう言った。
「お前、団長とヤリ過ぎなんじゃないか」
「団長にもう少し手加減お願いしろよ」 (注)同僚達は、妻役はフィリップだと思っています。
ヤリ過ぎ?
でも、昨日は一緒に寝台で寝ただけで、自分はケモミミ団長と致しているとても愉しい夢を見ただけだった。
それなのに、ヤリ過ぎってなんだ。
フィリップは戸惑った。
だが、騎士の一人が「精力増量剤だ」と冗談まじりで手渡してきた瓶入りの薬を口にした時、自身の力が漲り、そして頬のこけも少し収まったのを認めて愕然とした。
今まで、こんなことはなかった。
だが、明らかに精力増量剤という薬で精力が増量している。
ということは、昨日の夢のケモミミ団長との交わりで、自分はごっそりと精力を失っていたということだった。
フィリップは考え込んでいた。
バーナード騎士団長は、“淫魔の王女の加護”を持つ、それは淫乱、名器、精力を注がれることによる体力の増強だった。
相手の精力をごっそりと奪う力はない(その素晴らしい肉体に夢中になりすぎて、我を忘れて精力を失うことはある。実際、セーラ妃の元夫がそうであった)。
けれど、今、フィリップはケモミミ団長とのめくるめく快楽の夜の夢を見て、ごっそりと精力を失っていた。
これは一体、どういうことなのだろう。
彼はしばらくそのことを考えていた。
だが、考えても考えても、その原因がわからなかった。
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