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第六章 王家の剣
第三話 妃の懐妊(下)
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フィリップの屋敷へ帰った後も、バーナードはとても嬉しそうで、バーナード自身馬を走らせて自分の実家に報せに行こうとしているのを、慌ててフィリップは止めていた。
もう夜も遅い時間帯である。
報せるのは明日でも十分良い話であった。
「そんなに嬉しいんですか」
フィリップが聞くと、バーナードはうなずいた。
「俺はエドワード殿下がお小さい頃からよく存じ上げていた。剣の指導もつけて差し上げた。もし御子が男児なら、二代続けてお相手できることになる」
「…………そうですか」
「どうした、浮かない顔をしているな」
フィリップはバーナードの身体を寝台の上に倒して、彼を抱きしめる。
フィリップを見上げるバーナードの瞳が、疑問を浮かべていた。
そして問いかける。
「……お前は嬉しくないのか?」
「複雑です」
「……赤ん坊が生まれることは嬉しいことだと思うが」
「……あなたがそんなに赤ん坊が好きだとは思いませんでした」
フィリップは苦しそうな表情でバーナードを見つめ、言った。
「男の私は、あなたのために子供を産んであげることができない」
「…………」
バーナードはフィリップの髪を撫でた。
「そんなこと気にするな。元から、俺は養子を迎えるつもりだった」
「…………」
「結婚だってするはずもなかったんだ。俺の子なんて考えてもみなかった。フィリップ」
バーナードは啄むようにフィリップの唇に軽く口づけして、悪戯っぽい表情で言った。
「それに、お前の“妻”は俺だろう。お前の子を産んでやれないのは、俺の方だ」
それに、フィリップは笑い声を上げた。
「そうですね。あなたが私の“妻”でした。愛していますよ、バーナード」
「俺もだ」
そしてバーナードはフィリップの肩に手を回し、再度口づけを求めたのだった。
寝台の上で愛し合った後、フィリップは傍らで横になるバーナードに尋ねた。
「あなたから、養子の話は初めて聞きました。前々から考えていたんですか?」
バーナードはうなずいた。
「俺の弟のところに、男の子が何人かいるんだ。一人こちらによこしてもらって、俺の爵位を継がせようという話がある。だが、まだ先のことだ」
彼の首筋に舌を這わせ、胸に突起に吸い付くと、くすぐったそうにバーナードは声を上げた。
「おい、フィリップ」
彼の手が際どいところに触れて愛撫し始めると、バーナードは熱く息を吐く。
「ん…………ああ、フィリップ」
「先のこともいろいろと考えているのですね」
「見直したか」
「ええ」
もう一度愛そうと、のしかかると、彼は手をフィリップの肩にまわす。
バーナードは代々騎士を輩出する家柄で、彼の祖父も父も騎士だ。いずれも騎士団長や剣術指南役という要職についていた。そしてバーナード自身も王立騎士団長という要職にある。
彼は若い頃からモテたし、見合いの話だって相当あったという(彼の屋敷の執事達が握り潰していたらしいが……)。
今まで誰の手にも落ちていなかったことが、奇跡のようなものだった。
そして、今は自分の腕の中にある。
その幸運を、フィリップは噛み締めていた。
もう夜も遅い時間帯である。
報せるのは明日でも十分良い話であった。
「そんなに嬉しいんですか」
フィリップが聞くと、バーナードはうなずいた。
「俺はエドワード殿下がお小さい頃からよく存じ上げていた。剣の指導もつけて差し上げた。もし御子が男児なら、二代続けてお相手できることになる」
「…………そうですか」
「どうした、浮かない顔をしているな」
フィリップはバーナードの身体を寝台の上に倒して、彼を抱きしめる。
フィリップを見上げるバーナードの瞳が、疑問を浮かべていた。
そして問いかける。
「……お前は嬉しくないのか?」
「複雑です」
「……赤ん坊が生まれることは嬉しいことだと思うが」
「……あなたがそんなに赤ん坊が好きだとは思いませんでした」
フィリップは苦しそうな表情でバーナードを見つめ、言った。
「男の私は、あなたのために子供を産んであげることができない」
「…………」
バーナードはフィリップの髪を撫でた。
「そんなこと気にするな。元から、俺は養子を迎えるつもりだった」
「…………」
「結婚だってするはずもなかったんだ。俺の子なんて考えてもみなかった。フィリップ」
バーナードは啄むようにフィリップの唇に軽く口づけして、悪戯っぽい表情で言った。
「それに、お前の“妻”は俺だろう。お前の子を産んでやれないのは、俺の方だ」
それに、フィリップは笑い声を上げた。
「そうですね。あなたが私の“妻”でした。愛していますよ、バーナード」
「俺もだ」
そしてバーナードはフィリップの肩に手を回し、再度口づけを求めたのだった。
寝台の上で愛し合った後、フィリップは傍らで横になるバーナードに尋ねた。
「あなたから、養子の話は初めて聞きました。前々から考えていたんですか?」
バーナードはうなずいた。
「俺の弟のところに、男の子が何人かいるんだ。一人こちらによこしてもらって、俺の爵位を継がせようという話がある。だが、まだ先のことだ」
彼の首筋に舌を這わせ、胸に突起に吸い付くと、くすぐったそうにバーナードは声を上げた。
「おい、フィリップ」
彼の手が際どいところに触れて愛撫し始めると、バーナードは熱く息を吐く。
「ん…………ああ、フィリップ」
「先のこともいろいろと考えているのですね」
「見直したか」
「ええ」
もう一度愛そうと、のしかかると、彼は手をフィリップの肩にまわす。
バーナードは代々騎士を輩出する家柄で、彼の祖父も父も騎士だ。いずれも騎士団長や剣術指南役という要職についていた。そしてバーナード自身も王立騎士団長という要職にある。
彼は若い頃からモテたし、見合いの話だって相当あったという(彼の屋敷の執事達が握り潰していたらしいが……)。
今まで誰の手にも落ちていなかったことが、奇跡のようなものだった。
そして、今は自分の腕の中にある。
その幸運を、フィリップは噛み締めていた。
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