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【短編】
騎士団長と南の島 (1)
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第一話 休暇の申請
王立騎士団騎士団長バーナードは、決裁箱の中の書類をめくった時、フィリップの“休暇申請書”を認めて、小さく苦笑していた。
先日、ザッハトリア王国へ行った時、フィリップから消化できなかった結婚休暇を取りたい旨を聞いていたからだ。
確かに、結婚休暇は申請していた四日間のところ、わずか二日間で終わってしまっていた。
その後の様々な騒動の中、その休暇のことをすっかり忘れていたバーナードであったが、フィリップは違ったようだ。
あの時、なんとか休暇をもぎ取りたいと一生懸命言葉を重ねてきたフィリップが、かわいく思えた。
『南の諸島に行きましょう。マグルのコネを使って転移魔法の申請をして』
『団長は南の諸島で、釣りをしてもいいですから。あちらには珍しい綺麗な魚がいっぱいいるようですよ』
思い出しても、微笑みが零れる。
バーナードよりも年下の美貌の副騎士団長が、そう言い募る姿は嫌いではない。
またしても最大七日間の休暇申請を出してきたフィリップ副騎士団長であったが、バーナードは赤線で訂正を入れて“四日間”と書き直した。
どんなに楽しい休暇といえども、王立騎士団の騎士団長と副騎士団長のトップ二人の長期の不在は許されない。
最大で四日間が限度であろうとバーナードは考えていた。
その四日間で南の諸島に行くためには、親友で王宮魔術師のマグルの力を借りるしかない。
バーナードは早速、マグルのいる王宮へと足を運んだ。
マグルはバーナードの話を聞くと、目を細めて言った。
「いーなー、いーなー、バーナードは休みが取れるのか。羨ましいぃぃ」
子供か。
ばたばたと手足を動かし、癇癪を起こしたようなマグルの姿を呆れてバーナードは見つめる。
こんな態度をしていながら、マグルは王宮副魔術師長の要職にある。おかしかった。
いや、魔術師というのは、どこかネジが外れている変人が多いようにも思えた。
「僕も休みが欲しい」
「お前も申請すればいいじゃないか」
「………………申請しても、一緒に出掛けてくれる人がいない。糞、バーナード、弾け飛べ。新婚野郎が。絶対に僕はお前を許さないからな」
「…………」
マグルの視線が一瞬、恐ろしいと思ったバーナードだった。
「お前も付き合っていた娘がいたじゃないか」
「しばらく仕事が忙しい間に、結婚しちゃってたんだよぉぉぉぉぉ。糞ったれがぁぁぁぁぁ」
バンバンとテーブルを叩くマグル。テーブルの上から魔法書の山が雪崩落ちる。涙を零しているマグル。ひどい惨状だった。
「わかった。わかった、マグル。お前じゃない魔術師に頼む……」
そう言いかけるバーナードのマントの裾をぎゅっと掴んで、マグルは言った。
「それは嫌だ。バーナード、お前らを南の島に飛ばすのは僕の仕事だ!!」
絶対に変なところに飛ばされそうな気がして、剣豪にして騎士の中の騎士と称されるバーナード騎士団長は、一瞬恐怖を感じた。
王立騎士団騎士団長バーナードは、決裁箱の中の書類をめくった時、フィリップの“休暇申請書”を認めて、小さく苦笑していた。
先日、ザッハトリア王国へ行った時、フィリップから消化できなかった結婚休暇を取りたい旨を聞いていたからだ。
確かに、結婚休暇は申請していた四日間のところ、わずか二日間で終わってしまっていた。
その後の様々な騒動の中、その休暇のことをすっかり忘れていたバーナードであったが、フィリップは違ったようだ。
あの時、なんとか休暇をもぎ取りたいと一生懸命言葉を重ねてきたフィリップが、かわいく思えた。
『南の諸島に行きましょう。マグルのコネを使って転移魔法の申請をして』
『団長は南の諸島で、釣りをしてもいいですから。あちらには珍しい綺麗な魚がいっぱいいるようですよ』
思い出しても、微笑みが零れる。
バーナードよりも年下の美貌の副騎士団長が、そう言い募る姿は嫌いではない。
またしても最大七日間の休暇申請を出してきたフィリップ副騎士団長であったが、バーナードは赤線で訂正を入れて“四日間”と書き直した。
どんなに楽しい休暇といえども、王立騎士団の騎士団長と副騎士団長のトップ二人の長期の不在は許されない。
最大で四日間が限度であろうとバーナードは考えていた。
その四日間で南の諸島に行くためには、親友で王宮魔術師のマグルの力を借りるしかない。
バーナードは早速、マグルのいる王宮へと足を運んだ。
マグルはバーナードの話を聞くと、目を細めて言った。
「いーなー、いーなー、バーナードは休みが取れるのか。羨ましいぃぃ」
子供か。
ばたばたと手足を動かし、癇癪を起こしたようなマグルの姿を呆れてバーナードは見つめる。
こんな態度をしていながら、マグルは王宮副魔術師長の要職にある。おかしかった。
いや、魔術師というのは、どこかネジが外れている変人が多いようにも思えた。
「僕も休みが欲しい」
「お前も申請すればいいじゃないか」
「………………申請しても、一緒に出掛けてくれる人がいない。糞、バーナード、弾け飛べ。新婚野郎が。絶対に僕はお前を許さないからな」
「…………」
マグルの視線が一瞬、恐ろしいと思ったバーナードだった。
「お前も付き合っていた娘がいたじゃないか」
「しばらく仕事が忙しい間に、結婚しちゃってたんだよぉぉぉぉぉ。糞ったれがぁぁぁぁぁ」
バンバンとテーブルを叩くマグル。テーブルの上から魔法書の山が雪崩落ちる。涙を零しているマグル。ひどい惨状だった。
「わかった。わかった、マグル。お前じゃない魔術師に頼む……」
そう言いかけるバーナードのマントの裾をぎゅっと掴んで、マグルは言った。
「それは嫌だ。バーナード、お前らを南の島に飛ばすのは僕の仕事だ!!」
絶対に変なところに飛ばされそうな気がして、剣豪にして騎士の中の騎士と称されるバーナード騎士団長は、一瞬恐怖を感じた。
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