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【短編】
騎士団長と会議は踊る (8)
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第八話 決闘(下)
その場に凄まじい悲鳴が響き渡った。
斬られた右腕から血潮が吹き上がる。
「ひぃぃぃ、あっ……ああ」
斬り落とされたルーサーの右腕に握り締められている“白虹の剣”をバーナードは取り上げ、彼はその剣を一瞥すると放り投げた。
カランと音を立てて転がるザッハトリア王国の国宝を慌てて近くの騎士達が拾いにかかる。
バーナードは、未だ悲鳴を上げ、泣きながら膝まづいて腕を押さえるルーサーの身体を蹴った。
地面にあおむけに倒れるルーサーの胸の上に、膝を乗せ、彼の顔を間近で見つめながら言った。
「いいか。覚えていろ。今度、俺達に近づいたら、その左腕を斬ってやろう。そしてまた近づいたら、右足だ。それでも近づいたら、そうだな、左足を斬ってやろう。更に近づいたら、最後になるだろうが、首を斬ってやる。その覚悟を持って、近づいてくるんだな」
茶色の瞳のその凄みに、ルーサーは怯え切って震えが止まらないようだった。
涙が滂沱と流れ、口が開いたまま恐怖にわななき続けている。
「もう、もう近づかない」
「それがいい。正解だ、ルーサー。最初からそうすればよかったのに」
ひどく優しくバーナードは彼に言った。
そして、ルーサーの斬られた右腕を彼の胸の上にのせた。
「我が国のヴァンドライデンで斬った腕だ。聖女でなくても、つけることはできるだろう。急いだ方がいいぞ」
大量の血を失い、顔色を白く変え始めている様子を見て、慌てて立会人のエルドランド王国騎士団長ハロルドは声を上げた。
その声はひきつっていた。
「バーナード騎士団長の勝利」
ルーサー騎士団長は、他の騎士達に抱えられるように連れ出される。
その場は静寂に包まれていた。
そこには畏怖と恐怖があった。
あの人間離れしたスピードで襲いかかられたのならば、誰も避けることはできまい。
彼は余裕で勝利していた。
容赦なく精霊達を斬り殺し、容赦くルーサー騎士団長の腕を切り落とした。
恐ろしい男だった。
バーナードは竜剣を鞘に納める。
そして、副騎士団長に、いつものように声をかけた。
「帰るか」
「はい」
フィリップはうなずいて、彼の傍らに向かって駆けていった。
その年の冬になる前に現れた大型魔獣シンディアは、エルドランド王国に現れると同時に即、バーナード騎士団長に討伐された。
あの、ルーサー騎士団長との決闘以来、バーナードは面倒でやらないという選択肢をとらないようになっていた。
むしろ、面倒なことはさっさと片付けるに限ると考えるようになっていた。
おかげで、バーナード達の住む王国内の魔獣討伐は王立騎士団によってかつてないほど活発に行われ、王国は滅多に魔獣の出ない年がその後続くようになった。
内心フィリップは(“淫魔の王女”の加護を受けて強化されているバーナードがいるから、魔獣も恐れて王国に近づかないのでは)と思い始めていたが、それを口に出すことはなかった。
彼がどんな人間であろうと、たとえどんな呪いを受けていようと、彼は自分の愛する伴侶であり、誰よりも敬愛する騎士団長であった。
そして、後に風の噂で聞いたが、ザッハトリア王国ルーサー騎士団長は、騎士団を引退し、屋敷に引きこもるようになったという。彼は、一歩もザッハトリア王国から出ることなくその生涯を終えたという。
その場に凄まじい悲鳴が響き渡った。
斬られた右腕から血潮が吹き上がる。
「ひぃぃぃ、あっ……ああ」
斬り落とされたルーサーの右腕に握り締められている“白虹の剣”をバーナードは取り上げ、彼はその剣を一瞥すると放り投げた。
カランと音を立てて転がるザッハトリア王国の国宝を慌てて近くの騎士達が拾いにかかる。
バーナードは、未だ悲鳴を上げ、泣きながら膝まづいて腕を押さえるルーサーの身体を蹴った。
地面にあおむけに倒れるルーサーの胸の上に、膝を乗せ、彼の顔を間近で見つめながら言った。
「いいか。覚えていろ。今度、俺達に近づいたら、その左腕を斬ってやろう。そしてまた近づいたら、右足だ。それでも近づいたら、そうだな、左足を斬ってやろう。更に近づいたら、最後になるだろうが、首を斬ってやる。その覚悟を持って、近づいてくるんだな」
茶色の瞳のその凄みに、ルーサーは怯え切って震えが止まらないようだった。
涙が滂沱と流れ、口が開いたまま恐怖にわななき続けている。
「もう、もう近づかない」
「それがいい。正解だ、ルーサー。最初からそうすればよかったのに」
ひどく優しくバーナードは彼に言った。
そして、ルーサーの斬られた右腕を彼の胸の上にのせた。
「我が国のヴァンドライデンで斬った腕だ。聖女でなくても、つけることはできるだろう。急いだ方がいいぞ」
大量の血を失い、顔色を白く変え始めている様子を見て、慌てて立会人のエルドランド王国騎士団長ハロルドは声を上げた。
その声はひきつっていた。
「バーナード騎士団長の勝利」
ルーサー騎士団長は、他の騎士達に抱えられるように連れ出される。
その場は静寂に包まれていた。
そこには畏怖と恐怖があった。
あの人間離れしたスピードで襲いかかられたのならば、誰も避けることはできまい。
彼は余裕で勝利していた。
容赦なく精霊達を斬り殺し、容赦くルーサー騎士団長の腕を切り落とした。
恐ろしい男だった。
バーナードは竜剣を鞘に納める。
そして、副騎士団長に、いつものように声をかけた。
「帰るか」
「はい」
フィリップはうなずいて、彼の傍らに向かって駆けていった。
その年の冬になる前に現れた大型魔獣シンディアは、エルドランド王国に現れると同時に即、バーナード騎士団長に討伐された。
あの、ルーサー騎士団長との決闘以来、バーナードは面倒でやらないという選択肢をとらないようになっていた。
むしろ、面倒なことはさっさと片付けるに限ると考えるようになっていた。
おかげで、バーナード達の住む王国内の魔獣討伐は王立騎士団によってかつてないほど活発に行われ、王国は滅多に魔獣の出ない年がその後続くようになった。
内心フィリップは(“淫魔の王女”の加護を受けて強化されているバーナードがいるから、魔獣も恐れて王国に近づかないのでは)と思い始めていたが、それを口に出すことはなかった。
彼がどんな人間であろうと、たとえどんな呪いを受けていようと、彼は自分の愛する伴侶であり、誰よりも敬愛する騎士団長であった。
そして、後に風の噂で聞いたが、ザッハトリア王国ルーサー騎士団長は、騎士団を引退し、屋敷に引きこもるようになったという。彼は、一歩もザッハトリア王国から出ることなくその生涯を終えたという。
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