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【短編】 釣りの誘惑の話
第三話 釣り
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そして、いつものことながら、目を覚ますとバーナードの姿はすでに屋敷の中にはなかった。
“淫魔の王女の加護”には、男の精を身に受け入れることによる体力増強の効果がある。
彼を犯せば犯すほど、彼は力に漲るという、誠におかしな加護だった。
手酷く抱いた翌日でも、なんとも平気な様子で街を走っている姿を見た時には、呆れたものだった。
きっと、今日も仕事場に行けば、平然とした彼がいて、いつもと同じような受け答えをされるだろう。
どんなに手酷く抱いたとしても、へっちゃらにしている彼が時々憎く思う。
自分が彼に何か影響を与えたいのだ。時に思い知らせたいとひどいことを思うこともある。
だけど、即回復体質のバーナードには無駄だった。
それから数日後、バーナードは仕事を早めに終えると、いそいそと自慢の釣り竿を迎えの馬車に乗せ、王宮へ向かってしまった。
王宮に着くと、彼は用意していた私服に着替える。シャツにズボン姿のラフなものだった。
(任務外の時間帯に、隊服を着ているのはふさわしくないと思っている)
エドワード殿下と共に、王宮から少し離れている白鳥の森へ向かった。
それは馬車で半刻ほどの距離にあった。
馬車から降りると、すでに用意が進められており、桟橋には大きめの布がかけられた船が付けられていた。観覧船というものだろう。船の中に四方の柱が建てられ、屋根がつき、その屋根のへりから布が下ろされている。
正直、貧相な釣り船を想像していたバーナードは驚いた。
「……立派な船ですね」
船に乗り込みながら、釣りをするときには屋根のへりから下ろされている布を引き上げるのだろうかと思った。
詰め所に手紙を運んできた侍従のロイが立っており、バーナードを船の席に案内する。
席にはすでに、エドワード王太子が座っていた。
「殿下、この度は御招待ありがとうございます」
バーナードの礼の言葉を、頬を緩めながらエドワードはうなずいた。
「ああ、是非楽しんでくれ」
それから二人は釣りにいそしんだ。
バーナードは、どうやら釣りが初心者であるらしいエドワードに、なにくれと教えながら、自分も魚を釣っていた。
人が足を踏み入れることのない白鳥の森の湖は、手付かずの自然の宝庫で、面白いほど魚が釣れた。
初心者のエドワードも、十分釣りが楽しめるほど、魚を釣っていた。
日頃、冷静沈着、クールな態度で知られるバーナード騎士団長が、子供のように目を輝かせて釣りをしている様子を見て、エドワードは嬉しそうだった。
そんな二人を物陰から見て、侍従のロイはぐっと拳を握り締めて、任務の成功を祝っていた。
陽も落ちて暗くなってきた中、エドワードは下心を持ちながらバーナードに言った。
「もう遅いが、今日は宮殿に泊まっていかぬか?」
「いえ、帰ります」
バーナードはあっさりと断った。内心がっかりしている王太子には気づかず、バーナードは、たくさんの釣れた魚の入ったバケツを見て言った。
「妻に、とれたての魚を食べさせてやりたいので」
“淫魔の王女の加護”には、男の精を身に受け入れることによる体力増強の効果がある。
彼を犯せば犯すほど、彼は力に漲るという、誠におかしな加護だった。
手酷く抱いた翌日でも、なんとも平気な様子で街を走っている姿を見た時には、呆れたものだった。
きっと、今日も仕事場に行けば、平然とした彼がいて、いつもと同じような受け答えをされるだろう。
どんなに手酷く抱いたとしても、へっちゃらにしている彼が時々憎く思う。
自分が彼に何か影響を与えたいのだ。時に思い知らせたいとひどいことを思うこともある。
だけど、即回復体質のバーナードには無駄だった。
それから数日後、バーナードは仕事を早めに終えると、いそいそと自慢の釣り竿を迎えの馬車に乗せ、王宮へ向かってしまった。
王宮に着くと、彼は用意していた私服に着替える。シャツにズボン姿のラフなものだった。
(任務外の時間帯に、隊服を着ているのはふさわしくないと思っている)
エドワード殿下と共に、王宮から少し離れている白鳥の森へ向かった。
それは馬車で半刻ほどの距離にあった。
馬車から降りると、すでに用意が進められており、桟橋には大きめの布がかけられた船が付けられていた。観覧船というものだろう。船の中に四方の柱が建てられ、屋根がつき、その屋根のへりから布が下ろされている。
正直、貧相な釣り船を想像していたバーナードは驚いた。
「……立派な船ですね」
船に乗り込みながら、釣りをするときには屋根のへりから下ろされている布を引き上げるのだろうかと思った。
詰め所に手紙を運んできた侍従のロイが立っており、バーナードを船の席に案内する。
席にはすでに、エドワード王太子が座っていた。
「殿下、この度は御招待ありがとうございます」
バーナードの礼の言葉を、頬を緩めながらエドワードはうなずいた。
「ああ、是非楽しんでくれ」
それから二人は釣りにいそしんだ。
バーナードは、どうやら釣りが初心者であるらしいエドワードに、なにくれと教えながら、自分も魚を釣っていた。
人が足を踏み入れることのない白鳥の森の湖は、手付かずの自然の宝庫で、面白いほど魚が釣れた。
初心者のエドワードも、十分釣りが楽しめるほど、魚を釣っていた。
日頃、冷静沈着、クールな態度で知られるバーナード騎士団長が、子供のように目を輝かせて釣りをしている様子を見て、エドワードは嬉しそうだった。
そんな二人を物陰から見て、侍従のロイはぐっと拳を握り締めて、任務の成功を祝っていた。
陽も落ちて暗くなってきた中、エドワードは下心を持ちながらバーナードに言った。
「もう遅いが、今日は宮殿に泊まっていかぬか?」
「いえ、帰ります」
バーナードはあっさりと断った。内心がっかりしている王太子には気づかず、バーナードは、たくさんの釣れた魚の入ったバケツを見て言った。
「妻に、とれたての魚を食べさせてやりたいので」
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