33 / 560
【短編】 釣りの誘惑の話
第一話 誘い
しおりを挟む
王宮内では秘匿すべきと厳重に管理されている情報だが、どうやら王太子エドワードは、騎士団長バーナードに好意を抱いているらしい。
騎士団長バーナードといえば、若くして王立騎士団を率いる凛々しい男性で、そんな彼に憧れている女性や男性も多い。逞しい肢体を濃紺の騎士団の隊服に包み、灰色のマントを翻す長身の姿は、思わずため息をついてしまうほどカッコいい。
そんな彼も、先日結婚した。それは王都一の美貌を持つ副騎士団長のフィリップだった。女性との噂が多い二人が、男同士でくっついたことに、周囲は驚きでもって眺めていた。
王太子エドワードが、彼に好意を抱いているらしいと王宮で密かに噂になったのは、騎士団長が王宮へやってくると、なにかと会談の席を設けようとしていたからだ。
その都度、騎士団長の妻である副騎士団長のフィリップに「団長はこの後、予定が詰まっておりますので、失礼致します」と冷ややかに拒絶される。
がっかりとしているエドワードを見て、彼に仕える侍従達は、なんとかエドワードとバーナードが触れ合える時間を作ってあげたいと考えた。
そして、その結果思いついたのが、バーナードへの王宮の白鳥の森への誘いだった。
王太子エドワード付きの侍従、ロイは我ながら素晴らしいアイデアだと思っていた。
王宮の白鳥の森は王族以外の立ち入りが原則と禁止されている森であり、その名のとおり、白鳥がシーズンになると飛来する湖がある。人の立ち入りが禁止されているため、森や湖の自然は豊富で、特に湖には希少な魚が生息している。
ロイは封書をしたため、直接、王立騎士団の詰め所の、バーナードのいる団長室へ届けに向かった。
バーナードは封書を受け取り、その内容を見て非常に興味深そうな表情をした。
「これは、本当にいいのか」
乗ってきた
ロイの目が光った。
「はい。騎士団長は釣りがお好きだと伺っております。是非、ご一緒できれば殿下も嬉しく思います」
「エドワード殿下も釣りがお好きとは知らなかったな」
バーナード騎士団長の声に、傍らのフィリップ副騎士団長が不機嫌さを隠さず言った。
「……付け焼刃ですよ。きっと」
見抜かれているが、それは気にしないことにした。
「当日は船を出します。楽しみになさってください」
バーナードは小さく微笑んだ。
「わかった。是非うかがわせて頂こう」
思わずロイは、内心ガッツポーズをとっていた。
そのロイを見るフィリップの視線は、どこまでも冷たかった。
騎士団長バーナードといえば、若くして王立騎士団を率いる凛々しい男性で、そんな彼に憧れている女性や男性も多い。逞しい肢体を濃紺の騎士団の隊服に包み、灰色のマントを翻す長身の姿は、思わずため息をついてしまうほどカッコいい。
そんな彼も、先日結婚した。それは王都一の美貌を持つ副騎士団長のフィリップだった。女性との噂が多い二人が、男同士でくっついたことに、周囲は驚きでもって眺めていた。
王太子エドワードが、彼に好意を抱いているらしいと王宮で密かに噂になったのは、騎士団長が王宮へやってくると、なにかと会談の席を設けようとしていたからだ。
その都度、騎士団長の妻である副騎士団長のフィリップに「団長はこの後、予定が詰まっておりますので、失礼致します」と冷ややかに拒絶される。
がっかりとしているエドワードを見て、彼に仕える侍従達は、なんとかエドワードとバーナードが触れ合える時間を作ってあげたいと考えた。
そして、その結果思いついたのが、バーナードへの王宮の白鳥の森への誘いだった。
王太子エドワード付きの侍従、ロイは我ながら素晴らしいアイデアだと思っていた。
王宮の白鳥の森は王族以外の立ち入りが原則と禁止されている森であり、その名のとおり、白鳥がシーズンになると飛来する湖がある。人の立ち入りが禁止されているため、森や湖の自然は豊富で、特に湖には希少な魚が生息している。
ロイは封書をしたため、直接、王立騎士団の詰め所の、バーナードのいる団長室へ届けに向かった。
バーナードは封書を受け取り、その内容を見て非常に興味深そうな表情をした。
「これは、本当にいいのか」
乗ってきた
ロイの目が光った。
「はい。騎士団長は釣りがお好きだと伺っております。是非、ご一緒できれば殿下も嬉しく思います」
「エドワード殿下も釣りがお好きとは知らなかったな」
バーナード騎士団長の声に、傍らのフィリップ副騎士団長が不機嫌さを隠さず言った。
「……付け焼刃ですよ。きっと」
見抜かれているが、それは気にしないことにした。
「当日は船を出します。楽しみになさってください」
バーナードは小さく微笑んだ。
「わかった。是非うかがわせて頂こう」
思わずロイは、内心ガッツポーズをとっていた。
そのロイを見るフィリップの視線は、どこまでも冷たかった。
33
お気に入りに追加
1,131
あなたにおすすめの小説
LV1魔王に転生したおっさん絵師の異世界スローライフ~世界征服は完了してたので二次嫁そっくりの女騎士さんと平和な世界を満喫します~
東雲飛鶴
ファンタジー
●実は「魔王のひ孫」だった初心者魔王が本物魔王を目指す、まったりストーリー●
►30才、フリーター兼同人作家の俺は、いきなり魔王に殺されて、異世界に魔王の身代わりとして転生。
俺の愛する二次嫁そっくりな女騎士さんを拉致って、魔王城で繰り広げられるラブコメ展開。
しかし、俺の嫁はそんな女じゃねえよ!!
理想と現実に揺れる俺と、軟禁生活でなげやりな女騎士さん、二人の気持ちはどこに向かうのか――。『一巻お茶の間編あらすじ』
►長い大戦のために枯渇した国庫を元に戻すため、金策をしにダンジョンに潜った魔王一行。
魔王は全ての魔法が使えるけど、全てLV1未満でPTのお荷物に。
下へ下へと進むPTだったが、ダンジョン最深部では未知の生物が大量発生していた。このままでは魔王国に危害が及ぶ。
魔王たちが原因を究明すべく更に進むと、そこは別の異世界に通じていた。
謎の生物、崩壊寸前な別の異世界、一巻から一転、アクションありドラマありの本格ファンタジー。『二巻ダンジョン編あらすじ』
(この世界の魔族はまるマ的なものです)
※ただいま第二巻、ダンジョン編連載中!※
※第一巻、お茶の間編完結しました!※
舞台……魔族の国。主に城内お茶の間。もしくはダンジョン。
登場人物……元同人作家の初心者魔王、あやうく悪役令嬢になるところだった女騎士、マッドな兎耳薬師、城に住み着いている古竜神、女賞金稼ぎと魔族の黒騎士カップル、アラサークールメイド&ティーン中二メイド、ガチムチ親衛隊長、ダンジョンに出会いを求める剣士、料理好きなドワーフ、からくり人形、エロエロ女吸血鬼、幽霊執事、親衛隊一行、宰相等々。
HJ大賞2020後期一次通過・カクヨム併載
【HOTランキング二位ありがとうございます!:11/21】
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
騎士団長の俺が若返ってからみんながおかしい
雫谷 美月
BL
騎士団長である大柄のロイク・ゲッドは、王子の影武者「身代わり」として、魔術により若返り外見が少年に戻る。ロイクはいまでこそ男らしさあふれる大男だが、少年の頃は美少年だった。若返ったことにより、部下達にからかわれるが、副団長で幼馴染のテランス・イヴェールの態度もなんとなく余所余所しかった。
賊たちを返り討ちにした夜、野営地で酒に酔った部下達に裸にされる。そこに酒に酔ったテランスが助けに来たが様子がおかしい……
一途な副団長☓外見だけ少年に若返った団長
※ご都合主義です
※無理矢理な描写があります。
※他サイトからの転載dす
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる