33 / 568
【短編】 釣りの誘惑の話
第一話 誘い
しおりを挟む
王宮内では秘匿すべきと厳重に管理されている情報だが、どうやら王太子エドワードは、騎士団長バーナードに好意を抱いているらしい。
騎士団長バーナードといえば、若くして王立騎士団を率いる凛々しい男性で、そんな彼に憧れている女性や男性も多い。逞しい肢体を濃紺の騎士団の隊服に包み、灰色のマントを翻す長身の姿は、思わずため息をついてしまうほどカッコいい。
そんな彼も、先日結婚した。それは王都一の美貌を持つ副騎士団長のフィリップだった。女性との噂が多い二人が、男同士でくっついたことに、周囲は驚きでもって眺めていた。
王太子エドワードが、彼に好意を抱いているらしいと王宮で密かに噂になったのは、騎士団長が王宮へやってくると、なにかと会談の席を設けようとしていたからだ。
その都度、騎士団長の妻である副騎士団長のフィリップに「団長はこの後、予定が詰まっておりますので、失礼致します」と冷ややかに拒絶される。
がっかりとしているエドワードを見て、彼に仕える侍従達は、なんとかエドワードとバーナードが触れ合える時間を作ってあげたいと考えた。
そして、その結果思いついたのが、バーナードへの王宮の白鳥の森への誘いだった。
王太子エドワード付きの侍従、ロイは我ながら素晴らしいアイデアだと思っていた。
王宮の白鳥の森は王族以外の立ち入りが原則と禁止されている森であり、その名のとおり、白鳥がシーズンになると飛来する湖がある。人の立ち入りが禁止されているため、森や湖の自然は豊富で、特に湖には希少な魚が生息している。
ロイは封書をしたため、直接、王立騎士団の詰め所の、バーナードのいる団長室へ届けに向かった。
バーナードは封書を受け取り、その内容を見て非常に興味深そうな表情をした。
「これは、本当にいいのか」
乗ってきた
ロイの目が光った。
「はい。騎士団長は釣りがお好きだと伺っております。是非、ご一緒できれば殿下も嬉しく思います」
「エドワード殿下も釣りがお好きとは知らなかったな」
バーナード騎士団長の声に、傍らのフィリップ副騎士団長が不機嫌さを隠さず言った。
「……付け焼刃ですよ。きっと」
見抜かれているが、それは気にしないことにした。
「当日は船を出します。楽しみになさってください」
バーナードは小さく微笑んだ。
「わかった。是非うかがわせて頂こう」
思わずロイは、内心ガッツポーズをとっていた。
そのロイを見るフィリップの視線は、どこまでも冷たかった。
騎士団長バーナードといえば、若くして王立騎士団を率いる凛々しい男性で、そんな彼に憧れている女性や男性も多い。逞しい肢体を濃紺の騎士団の隊服に包み、灰色のマントを翻す長身の姿は、思わずため息をついてしまうほどカッコいい。
そんな彼も、先日結婚した。それは王都一の美貌を持つ副騎士団長のフィリップだった。女性との噂が多い二人が、男同士でくっついたことに、周囲は驚きでもって眺めていた。
王太子エドワードが、彼に好意を抱いているらしいと王宮で密かに噂になったのは、騎士団長が王宮へやってくると、なにかと会談の席を設けようとしていたからだ。
その都度、騎士団長の妻である副騎士団長のフィリップに「団長はこの後、予定が詰まっておりますので、失礼致します」と冷ややかに拒絶される。
がっかりとしているエドワードを見て、彼に仕える侍従達は、なんとかエドワードとバーナードが触れ合える時間を作ってあげたいと考えた。
そして、その結果思いついたのが、バーナードへの王宮の白鳥の森への誘いだった。
王太子エドワード付きの侍従、ロイは我ながら素晴らしいアイデアだと思っていた。
王宮の白鳥の森は王族以外の立ち入りが原則と禁止されている森であり、その名のとおり、白鳥がシーズンになると飛来する湖がある。人の立ち入りが禁止されているため、森や湖の自然は豊富で、特に湖には希少な魚が生息している。
ロイは封書をしたため、直接、王立騎士団の詰め所の、バーナードのいる団長室へ届けに向かった。
バーナードは封書を受け取り、その内容を見て非常に興味深そうな表情をした。
「これは、本当にいいのか」
乗ってきた
ロイの目が光った。
「はい。騎士団長は釣りがお好きだと伺っております。是非、ご一緒できれば殿下も嬉しく思います」
「エドワード殿下も釣りがお好きとは知らなかったな」
バーナード騎士団長の声に、傍らのフィリップ副騎士団長が不機嫌さを隠さず言った。
「……付け焼刃ですよ。きっと」
見抜かれているが、それは気にしないことにした。
「当日は船を出します。楽しみになさってください」
バーナードは小さく微笑んだ。
「わかった。是非うかがわせて頂こう」
思わずロイは、内心ガッツポーズをとっていた。
そのロイを見るフィリップの視線は、どこまでも冷たかった。
43
お気に入りに追加
1,152
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる